第17話 友人とカラオケと告白
翌日のお昼休み。いつものように4人集まってお昼を食べることに。美月は椅子に座ると2つのうち1つのお弁当箱を俺に渡した。
「約束通り作ってきたよ」
「ありがとう、美月」
実を言うと彼女のお弁当が楽しみすぎて授業中時々、どんなお弁当だろうかと想像していた。女子にお弁当を作ってもらったのはこれが初めてだ。
お弁当箱を美月から受け取るとそれを見ていた陽菜が驚いていた。
「みーちゃん。今日から奏翔にお弁当作ってあげることにしたの?」
「今日から……ううん、今日だけ。けど、奏翔が私の作ったお弁当気に入ってくれたら毎日作る」
「うんうん、いいね。奏翔、みーちゃんからのお弁当、羨ましいなぁー」
陽菜はそう言って俺ではなく隣に座る大智を見て言う。
「そんな目で見られても俺、料理はあんまりだからなぁ。俺は陽菜の作ったお弁当が食べてみたいけど」
「私もムリムリ。みーちゃんみたいに料理じゃないもん」
どうやら陽菜と大智は恋人にお弁当を作ってもらうことは憧れだが、どちらも料理があまり得意ではないため今のところ叶わない夢らしい。
「けど、大智に作ってみたいしみーちゃんに料理教えてもらおうかなぁ」
「いいよ、教えるなら任せて」
胸をトンと軽く叩き、美月はなぜか俺の方を見てくる。これは多分、早くお弁当箱を開いて食べて、感想を言って欲しいのかな。
お弁当箱を開けると実際には輝いていないがキラキラした美味しそうなものばかり入っていた。
(凄いうまそう……)
「いただきます」
手を合わせて、最初に食べたのはもちろん楽しみにしていた鶏胸肉のねぎ炒め。口の中に入れて味わって食べていると美月が顔を覗き込んできた。
「どう?」
「とっても美味しいよ」
「ふふっ、良かったぁ」
鶏胸肉のねぎ炒めはまだあるが片寄った食べ方はあまりしたくないなで卵焼きを食べる。
一口サイズで食べやすく食べた瞬間甘いと感じた。卵焼きの他にもおかずはたくさんお弁当に詰まっており、どれも美味しかった。
「ごちそうさま。とっても美味しかったよ、神楽さん」
「お粗末様です。リクエストあれば今度はそれをお弁当に入れるからね」
また作ってくれるんだ……大変なのはわかっているが、また食べれるのなら食べたい。
お弁当箱は洗って返すことにし、そして話しているうちに明日もまた作ってもらうことになった。
「そうだ。今日の放課後はカラオケだからね?」
「ちょー楽しみだった。陽菜、デュオしよ?」
「うん、しよしよ」
その後、お昼休みが終わるまでカラオケで何を歌うのか話した。
***
放課後。最初は4人で行く予定だったカラオケだが、廊下で出会った心愛も一緒に行くことになった。
学校を出ると俺はふと何かが足りない気がした。ここ最近美月と一緒に帰るとき、腕にぎゅっと抱きついてくるが今日は友達もいるため俺のところには来ない。
別に腕にぎゅーとされたいわけではないが、何だか寂しい気持ちになる。
目の前を歩く美月の後ろ姿を見ていると大智に体当たりされた。
「奏翔。神楽さん見すぎ」
「! みっ、見てないし……」
「いや、見てたよ。お弁当作ってもらって昨日、何かあったのか?」
「何もないよ」
特別なことは何も起きていない。美月が作りたいと言って、俺がお願いしただけだ。
「ふーん。俺は応援してるからな」
「何がだよ」
「恋だよ。神楽さんと距離近いし、仲いいし、友達っていうのはねぇ……」
「………………なぁ、大智」
「ん?」
「一緒にいて楽しくて、一緒にいるとたまにドキドキする相手って友達……なのかな」
中学生の時から一緒にいて楽しくて、居心地が良く気が許せる神楽さんのことは友達だと思っていた。
クラスが違った時、電話で話せると嬉しくて、次はいつ会えるのだろうかと思っていた。
「んー友達かどうかは自分が判断しないとな。けど、ドキドキするっていうならもしかしたらその相手のことが好きっていう可能性は高いと思う」
彼女がいる大智なら異性としての好きか、友達としての好きかの違いがわかるかと思ったが、話を聞く限り自分にしかわからないみたいだ。
「奏翔。もしその相手が他の男子と仲良くし始めたらどう思う? もう奏翔とは話すことはなくなり、彼女の隣には他の男子がいたら……」
大智に言われたことを想像してみる。美月の隣に俺ではない男がいるところを。
(何だろう……凄いモヤモヤする)
いつも会うたびに名前を呼んで抱きつき、俺は恥ずかしいからここではやめた方がいいと言うが、嫌ではなかった。
「嫌だなと思った……」
「ん、そっか。ならもう答えは出てるな」
「答え……」
***
カラオケルームに入ると歌う前にポテトやポッキーとみんなで分けられるものを頼んだ。
「私、パフェ食べたい。奏翔、半分個する?」
「俺はいいかな」
「じゃあ、心愛。一緒に食べよ?」
「いいよ。私も食べたかったし」
美月は心愛の隣に座り、メニュー表を一緒に見て何にするか選ぶ。そしてドリンクバーで飲み物を入れ終えるとすぐに皆、歌いたい曲を入れていく。
「じゃ、最初は一緒に歌おっか。みーちゃん!」
「うん!」
舞台みたいなステージに陽菜と美月は立ち、マイクを手に持つ。俺は盛り上げ隊としてカゴからタンバリンを手に取った。
すると、俺の隣に心愛は座り、カゴからもう1つのタンバリンを手に取った。
「私も盛り上げ隊になろうかな」
「心愛は歌わないのか?」
「次歌うよ。奏翔くん、一緒に歌ってくれる? 1人だとちょっと寂しいから……」
「知ってる曲だったらいいけど……」
曲を入れる機械を手に取り、心愛がどんな曲を入れたのか見ようとする。すると、心愛が近寄ってきて画面を指差せた。
「これこれ」
(ち、近くないですかね、心愛さん……)
甘い香りがして俺は曲名を見るよりも匂いの方が気になってしまっていた。
「知ってるでしょ? 中学の時に私がオススメした……奏翔くん、聞いてる?」
名前を呼ばれて俺はハッする。危ない。匂いが気になる変態と思われるところだった。
「ごめん、ぼっーとしてた。この曲、覚えてるよ。よく一緒に聞いたっけ」
「うんうん、聞いたね。懐かしいなぁ」
そう言って心愛は俺の手の甲に重ねてきた。驚きつつ顔を上げるとニコリと笑う心愛がいた。
「美月ちゃんには嘘ついちゃうけど、気付いた気持ちは抑えられない……。私────」
言葉はそこで一度止まり、心愛は俺の耳元で言葉の続きを囁いた。
「奏翔くんのこと好きみたい」
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