第5話 カメレオン公爵
———
『
「うああああああああああ…ヴァルド兄さん…もうやめてくれ…ヴァルド兄さん」
「出来ない…俺を恨んでくれ…弟よ…」
白い白い大理石の大広間に兄弟同士の鮮血が序曲を奏でるそれの様に飛び跳ね、弾み、勇んで他が全てを赤く染めようと息巻いている。
「弟よ…ペルシーナのヴァルハラで私を待ち受けていろ…愛してるぞ。ヴァルファーよ」
「あああああああああああ——」
肋骨の一部が見える程の深手を負っているにも関わらず、兄は弟の骸を抱き上げた。焦げた黒い黒い骸を抱き上げた。なんと素晴らしき兄弟愛!!
「…約束通りだ公爵!! 早く私達の家族を解放しろッッッ」
「あら」
——ディミデイュ様が麗しい細く白い指を鳴らした刹那、巨大な赤い雷の柱が生き残った兄共々卑き者たちを消し炭にし、そして芥にした。
(杖も無しの
「『
「いえ! 行動即猛省という君主の鑑そのものでございました。デュミデイュ様こそ至高の為政者です」
「貴女の美辞麗句は愚直が過ぎるわ」
「恐悦至極の限りで御座います」
「…メイド達にも高等教育の機会を与えた方が良いのかしらね〜。まあ、構わないか」
一糸纏わず
「デュミデイュ様…これはどういう」
「お見通しなのよ? 私の耳の美しいのに見惚れているのが。何をしても構わないわ」
「!? そ、そのような…」
「さあ、好きになさい」
ケエィラの音が良く聞こえる。舌舐めずり、息を呑み、口を開いては閉じ、躊躇い、また開いて、閉じる。鼻息だけが早く早くなっていく。
「好きにしていいと言ったでしょうに」
「いえ…幸福の絶頂に十分到達したと申しますか…ええ」
「過ぎた忠節も考えものね。ケエィラ、耳を貸しなさい」
「はい?」
私の舌は少し他の者よりも長いの。これは自他共に持っている共通認識。政敵(少しくらい楽しませてくれないと困り物だわ)達はどうやら
『
「あ、あ…デュミデイュ…様の…入ってるッッッ…♡♡」
「手本を示してあげているのよ? …存分に愉しみながらも一挙手一投足普く記憶に刻みなさい」
「ンアッ…アァ…♡♡」
人間の耳という器官は脳に非常に近い。だからこそ、私は耳に対する刺激への反応こそがその人間の本性だと考えます。顔色も声音も、ただそのままでは偽る事は大変に容易。
「………♡♡」
「貴女の愚直は本当に好きよ、ケエィラ? しかし魔法も使えない賎民奴婢を扱う場所の床であっても、…
全身を弛緩させ余韻に浸る淫らなメイドを置いて他所行きのコートを羽織る。
「さてさて。
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