第2話 樹さんの秘密の答え

 …どれくらい、眠っていただろう。


 ようやく意識を取り戻し、目を開けると、そこは簡素で綺麗。だが窓は無く、広さはそれほどでもない、無機質な部屋だった。


 だが、何故か明らかに、地球上の文化のレベルのそれを、超えている空間ということは分かる。


「俺は死んだんじゃ…ない…のか?」


 俺は現状を確認した。怪我はして…いない。意識も正常だ。ゆっくり先ほどまでの出来事を思い出した。


「そうだ!!樹さん…!!」


「え?何?」


「うわああああっ!!」


「…いる!!」


「うん、そうだね。いるね」


 突如、声を掛けられ慌てふためく俺。横には人間…に見える樹さんの姿があった。


「樹さ…いやいや、な…夏河?」

「藍原君!!よかった…生きてたのね…」


「な…夏河。えーと、君は人間…で、いいんだよな?怪物になったり…しない…よね?」


 とにかく現状がさっぱりだ。この樹さんと、さっきの樹さんが、同じ人物なのかすらわからない。彼女も自信なさ気に、


「うん。私も気が付いたらここにいて…何が何だか…」


 やはり樹さんも、あの化け物にここまで連れてこられたようだ。


「目が覚めたようじゃな」


 そう声がすると、壁だったところに空間が現れ、もう一人の樹さんが入ってきた。


「わ…私が!!」

「夏河が二人!!」


 一応、驚きはした俺と樹さん。漫画やアニメのような展開なので、意外と順応してきたのが、やはり日本人という証拠なのだろうか。


 恐るべし…ジャパンカルチャー。


 そして、もう一人の樹さんが語りだした。


「わけがわからんか?よぅし、説明してやろう」


 意気揚々ともう一人の樹さんが、しゃべるしゃべる。


「まず、我々はエボン星人、お主らから見るとエイリアンということになる」


『エイリアン!?』


 呆気にとられる俺だったが、樹さんはちょっと反応が違う。


「すごい…お父さんが聞いたら、飛んで喜ぶかも…」

「な…夏河…さん?」


 この状況を、少し喜んでいるようにも見える樹さんだった。好きな人の存外意外な一面を見て、嬉しいやら、恐いやら、悲しいやら…。


「なぁに。はじめは用が済めば始末しようとも思ったが」


 何、コエーことサラリと言ってんだコイツ。


「二人の脳のデータを見た限り、メスの方の親の会社は、面白いことをやっておるのう」


 樹さんの稼業。大企業とだけは聞いているが…。


「オーバーサイエンス社。現代科学を超えた宇宙規模の技術開発をしており、公では言えん、国際レベルの産業を担っておるか…ほー…」


「…夏河、お前、すごい家庭環境なんだな」


「…ごめん、何も言わないで。結構苦労してるの」


 顔を見ると暗い影が。それ以上は聞かないことにした。きっと聞いちゃ駄目なやつだ。


「二人の脳は隅々まで調べさせてもらったぞ?オスはこのメスのことがす…」


「わーわーわー!!」


「ん?なんじゃ?」


 アブねぇ…。コイツ、好きって言おうとしなかったか?こんなとこでフラれたらどうすんだ!!生きるか死ぬかの瀬戸際だってのに、何てこと暴露しようと…!!


「とにかくメスの方は、親御さんの会社との交渉材料とさせてもらう」


 とりあえず、樹さんは当面、無事か…。あれ?でも俺は?普通の高校生男子だぞ?


…まさか喰われ…。


「そして、オスの方は…」

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