正しい地球の侵略の仕方
はた
第1話 あの…い、樹さん…!?
俺の名は藍原拓真(あいはら たくま)どこにでもいる高校二年生男子だ。…だがあの日、俺は見てはいけないものを見てしまった。あれは夏休みのある日の夜。
両親を亡くした俺の家は、俺と姉で食堂を切り盛りしている。客もまばらになり、店は姉貴にまかせ、愛犬のチャップスの散歩に出かけた。散歩はいつも近所の三佐公園を通ることになっている。
そこで、クラスの女子の夏河樹(なつかわ いつき)さんが、不良たちに絡まれているのを見かけた。
ここだけの話、俺は樹さんが大好きだ。ホント、可愛い。正直、腕っぷしに自信はないが、助けるのに、これ以上の理由は要らない。
「へへっ、いいだろ、おい?」
「可愛いなぁ、俺たちと遊ぼうぜぇ?」
「なーに、お兄さんたちは優しいからよ?」
『お友達になろうぜぇ~?』
馴れ馴れしく声かけやがって…。俺だってまともに話したことないのに…!!うらやま…いやいや、けしからん!!
「おい、やめろよお前ら…」
俺が声をかけようとしたその瞬間。
「ギイッヤアァアゥウウウウ!!」
い、樹さん?の顔が半分に割れ、中から巨大な頭で、口が2メートルは裂けている化け物が出てきた。
「う…うわあぁっうぎゃあああ!!」
そして、不良の頭を丸飲みし、頭蓋骨ごとぼりぼりと嚙み砕いて食っていた。
…え、映画の撮影か?俺はこの愛しの人が、実は化け物でした状況が理解できない。
「は、ハマオ…。何だ、このバケモン!?」
「に、逃げるぞ、カズやん!!食い殺され…う、うわっ!?」
その言葉を言い切る間も無く、ハマオとやらの頭を噛み砕く。そして、ぼーりぼーりと咀嚼する。人間の頭蓋骨がまるで鳥の軟骨の様だ。
カズやんとやらも、腰が抜けて足が動かず、哀れ無抵抗のまま喰われてしまった。
に…逃げないと…。幸い奴は俺に気付いていない。足音を立てず、その場を去ろうとした。が。
「ワン!!ワワン!!ワン!!」
「うおぉぉい!!チャップス!?」
愛犬チャップスは、化け物めがけて威勢良く吠える。日頃のしつけが裏目に出たことが、これほど恨めしいとは…!!やめて、お願いだから!!
すると化け物は当然、こちらに気付いた。巨大な頭と人間の胴体のその謎の生物は、頭をぐりんっとこちらに向け、
「ミイィィギギギタタタッタアァッ!!」
「うわあああぁぁっぁあっッツッッ!!」
逃げなきゃダメだ…。
逃げなきゃダメだ…!!
逃げなきゃダメだ…ッ!!
俺の脚は勝手にどこへともわからず、駆けだしていた。しかし化け物は、人知を超えたスピードで飛び跳ね追ってくる。
ついに俺は、袋小路に追い込まれた。樹さんだったものは、口を開け向かってくる。
「ああ…あああ…アアーッ!?」
俺の意識はそこで途絶えた。
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