第4話 優勝の行方…。

 応援する会場は熱気に包まれるが、すぐに度肝を抜かれ、どよめいていた。それはケルト以外の三人の用意した食材にあった。


 今や生産者がいない伝説の生ハム、Kコマーズ。非常に深みのある味わいのチーズ、パパスゴーダ。これを食べると二度と他は食べられないという究極のトマト、エンデルロッソ。


 他にもありとあらゆる最高級食材が、三人の手元に見て取れた。これも最大手企業のバックアップがあってこそである。当然、観客からは非難があがる。


「ちょっ…いくらなんでも、これはおかしいでしょ!?」

「食材は持参可能というルールだったからな…」

「どうするの!?これじゃケルト君が…」


「いや、大丈夫でしょう」


 不安の声を上げる審査員席の騎士団の面々。彼らは皆、ニッキー派。というか、ケルトの人徳に惚れていた。しかし、それを落ち着かせたのは誰あろう、審査委員長のネスだった。


「え?」

「すぐにわかります。彼らは…」


 頬杖をついてネスは続けた。


「自ら墓穴を掘ったんですよ」


 そうして、4種のピザが焼き上がり審査に入る。恐る恐る、口に入れる審査員たち。しかし、すぐにネスの言葉の意味を文字通り、味わうこととなった。


 そして、満場一致で優勝者が選ばれた。ネスが拡声器を取り、優勝者の名を宣言する。


「優勝者は…」


 会場中の全員が固唾を飲む。


「ニッキーハウス・ケルトのマルゲリータ!!」


 その一声に会場中が完成で湧き上がる。


 ラプラス、ハニービーたちはじめ、騎士団も歓喜に沸いた。


「そんな馬鹿な!!納得いかん!!」

「忖度してるんじゃないか!?おお!?」


 慌てて詰め寄る三人の刺客。しかし、ネスの審査は公平に行われた。


「じゃあ、食べ比べてみるといい。職人の君らならわかるだろう?」


 そう言われ、お互いのピザを食べ比べ、絶句した。そう、高級食材とはその癖や味を殺さないよう、神経を最大限に研ぎ澄まさねばならない。


 三人のピザは慣れない食材を扱うことで、その僅かなズレが不協和音を生み出していた。どれだけ良い食材を用意しても、これでは宝の持ち腐れである。


「ケルト君のピザ。これを正に至高って言うんだよ」


 かえってケルトのマルゲリータはシンプルながら、手になじみ熟知した食材、生地、塩梅、窯の温度、その日の湿度など全てにおいてパーフェクト。


 普通の食材が相乗効果で素晴らしい美味を生み出していた。


「くあ~ッ!!あの役立たずどもがーッ!!」


 会場にいたサンドルマンは慌てて、その場を後にしようとする。しかし、


「お待ちください。Mr.サンドルマン」


 そう呼び止めたのは、衛生管理局のエージェントたちだ。


「貴方の店舗ジョルジュリータピザの衛生管理違反、及び食品偽装の証拠を見つけました」


「お話をお聞かせ願えますか?」

「サンドルマンさん、ご同行を」


「なっ…にぃ…!?」


 連行されるサンドルマン。今回の暗躍も露呈し、信用を失った彼の店は後に全て閉店することになる。

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