河童

 むら神社じんじゃには「河童かっぱ」とつたわるからびたものが奉納ほうのうされている。


「河童なんていないよね」


 と、じいちゃんにいったら、「いるぞ」とあっさりかえされこんなはなしをしてくれた。


 じいちゃんがばあちゃんと結婚けっこんしてもないころ、村の田畑たはたらされる事件じけんがあったそうだ。


 じいちゃんは血気盛けっきさかんに「犯人はんにんつかまえる」と夜通よどおしのばんをかってた。


 すると、出てきた。


 月明つきあかりにえる、かわからちいさなどものようなものがぞろぞろと。


 それがんぼをあらし、はたけごろのきゅうりをもいではさわいでいた。


「おまえら! むかし約束やくそくわすれたか! ご先祖せんぞさまのようにわるい手はおととしてやる!」


 小さなどものなかにんで、ばったばったとばして川にほうりこんだ。


 三日三晩みっかみばんつづいたけど、全部ぜんぶじいちゃんはった。


 四日目よっかめよるには一匹いっぴきだけ出てきてペコリとあたまげるとすぐ川にもどった。


 それ以来いらい、田畑が荒らされることはなくなった。


「というて、やつらも川のまもがみ本分ほんぶんは忘れないようにいまでも収穫時期しゅうかくじきには毎日まいにちきゅうりをそなえるのがならわしだ」


 カッカッカッと、じいちゃんはほこらしげにわらった。


 ▼▼▼


河童かっぱ


 日本各地にほんかくち類似るいじ化物ばけもの伝承でんしょうおおい。

 河童の証文しょうもんなど、その存在そんざい証明しょうめいともいえるものものこされている。


 一部いちぶ地域ちいき九州きゅうしゅう)では、はるなつは川に出て河童に、あきにはやまに戻って山童やまわろになるともいわれる。民俗学的みんぞくがくてきには田の神と山の神が季節きせつごとに変化へんかしたともかんがえられる。


 おおむね江戸時代えどじだいに河童の伝承、目撃談もくげきだんがまとめられ現在げんざい一般的いっぱんてきな河童の姿になったといわれている。


 河童がきゅうりをこのむことについては、河童を水神すいじんとしてまつっていたためとも。相撲すもう神事しんじであり、それを好むとされることも河童イコール水神の根拠こんきょとされている。

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