ちいさいおっさん

 中学ちゅうがく体育たいいく授業じゅぎょうだった。


 ソフトボールで、外野がいやくさむらにんだボールをさがしにった友人ゆうじんが、すごく微妙びみょうかおもどってきた。


「どうした?」


「あ、いや、な……」


 しんじられないかもしれないけどさ……、といいつつ、はなしてしまわないとまないようで、はなしてくれた。


 ボールを捜して草むらをかきけていると、ガサガサっとなにかがてきた。


 むしかなとおもったら、ちいさなおっさんだった。


 人差ひとさゆびくらいしかないそのおっさんは、うとびっくりしていた。おどろいたのはこちらこそだ。唖然あぜんとして、しばらく見詰みつめあっていたら、やんのか? やんのか! とばかりに、ファイティングポーズ。ふっとわらったら、あーれーと、そのいきうしろにころがって草むらのなかにまぎれた。


 へんなもんた。

 なんとなくいや気分きぶんだ。

 さっさとボール見付みつけてもどろう。


 ところがまたガサガサ……、と。


 正直しょうじきうんざりだ。


 てきたのはしかし、こわ用務員ようむいんさん。


 コラッ!


 と、理不尽りふじんおこられた。


「ちいさいおっさんが用務員さんだったのか、それとも何の関係かんけいもないのか、でもいきなりてくるのもおかしいしなあ。だいたい、なんでおこられなきゃいけないんだ?!」


 どこに何をいっていいのかからないといきどおる友人に、ぼく微妙びみょうみをかえすしかなかった。


 ▼▼▼


小人こびと伝説でんせつ


 北海道ほっかいどうアイヌのコロボックル(ふきしたひと)、鹿児島かごしま奄美あまみのケンムン(ガジュマルのひそむ)、沖縄おきなわ琉球りゅうきゅうのキジムナー(ガジュマルの木のせい)、家鳴やなり(家鳴りの原因げんいん小鬼こおに仕業しわざとするもの)など、古来こらいより小人こびと、またはそれに類似るいじするものの伝承でんしょうおおい。


 ヨーロッパでは、キリストきょう以前いぜんふるかみ信仰しんこううしなって小さくなったものが妖精ようせいになったともいわれる。


 小人伝説はこのように世界せかい各地かくちに見られる。ちいさいおっさんは一時いちじ流行はやった都市伝説としでんせつだが、現代げんだいによみがえった小人がちいさいおっさんだろうか。

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