すねこすり

 大学だいがくまり、まち一人暮ひとりぐらしすることになった。

 あたらしいことへのチャレンジには期待きたい不安ふあん半々はんはんだったとおもう。


 荷物にもつこうへさきおくった。

 とうさんがくるまむかえにた。

 小雨こさめがしとしととだった。


「あれ?」


「どうした?」


「なんか、あしに……」


 なにかがまとわりついてくる。

 ねこのシロは……、向こうにいるのに。

 なんにもえないけれど、何かがまとわりついてくる。

 くな、行くなといっているようで。


 自分じぶんではからないどこかでうしがみかれるおもいがあるんだろうか。

 それにしてもこれはのせいじゃないと思うんだけど。


 戸惑とまどっていると、じいちゃんがぼくあしもとからひょいと小犬こいぬげるようなしぐさをする。するとあやしい気配けはいはなくなった。じいちゃんを見ると、見えないイヤイヤする子犬をあやしているようだ。


元気げんきでやってい。何も心配しんぱいすることはない、こっちのことはな。心配はこっちがするもんだからな」


 じいちゃんはカラカラとおおきくわらった。


 車にり、後ろをかえれば、雨のなか、じいちゃんとばあちゃんはずっと見送みおくってくれていた。


 おわかれじゃない。


 新しい門出かどでだからって、実家じっかわすれることはない。

 何かがすっとむねちる思いがした。


 ▼▼▼


脛擦すねこすり」


 すねかじりじゃありません。


 通行つうこうさまたげる妖怪ようかいひとつ。岡山県おかやまけん小田郡おだぐんつたわる。

 姿すがたは見えないが、まるで小犬が足にまとわりついているようなかんじがするという。

 雨降あめふりのばんいそいでいるのに通行の邪魔じゃまをする。

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