ケサランパサラン

 ぼく小学校しょうがっこう入学にゅうがくまえから田舎いなかのじいちゃんちでごしていた。

 

 ぜんそくがひどかったんだ。


 それで空気くうきのいい、のどかな田舎のじいちゃんちにお世話せわになることになった。


 小学校にはいるか入らないかのころだったかな? ある部屋へやにタンポポの綿毛わたげのようなものがふわふわとんだ。


 そっとつかまえようとしたけど、のなかでつぶれてしまった。

 しばらくしたらまた、どこからか、ふわふわといくつかいてくる。

 手ではまたつぶしてしまう。

 いそいで台所だいどころって、タッパーをってきて、それでつかまえようとした。


 うまくいった。


 じいちゃんにせたら、


「おい、ばあさん。ちょっと白粉おしろいってきてくれ」


 と、そのタッパーのなかに白粉をれた。


 すると、えて増えて小さなタッパーいっぱいに。もう窮屈きゅうくつそうに見えた。


 どうしようって、またじいちゃんに訊いたら、


「広いところへはなってやるのがいいんじゃないか?」


 じいちゃんと一緒いっしょにわでタッパーのふたをけた。

 綿毛たちはふわふわとがっていった。

 なんだかうれしそうにもえた。


 空の彼方かなたに消えるのをいつまでも見ていた。


 それからさき、ぜんそくでくるしむことはなくなった。それでも田舎らしにすっかり馴染なじんで、大学だいがくでひとり暮らしをはじめるまで、じいちゃんたちと旧家きゅうかでのんびりごしたんだ。


 ▼▼▼


「ケサランパサラン」


 植物しょくぶつのそれではなく、妖怪ようかい? としてのそれを解説かいせつ


 ぬし幸運こううんをもたらすという、たんぽぽの綿毛わたげのようなもの。

 白粉をあたえるとえる。

 1970年代ねんだい後半こうはんにブームとなったが、江戸時代えどじだいにはすでにそれはかたられていたようだ。(参考さんこう日本現代怪異事典にほんげんだいかいいじてん笠間書院かさましょいん朝里あさざといつきちょ

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