野辺送り

 やまのなかに先祖代々せんぞだいだいの、うちの親族しんぞくだけの墓地ぼちがある。


 じいちゃんのおこつとうさんがつつむようにしてむねかかえ、葬列そうれつはしめやかにすすむ。


 山にはいる。


 そこここからだれかにられているようながした。


 ひとつやふたつじゃない。

 たくさんのひとじゃないものの気配けはいかこまれている。

 やぶこうからしくしくとごえこえてくる。

 気付きづいたひとたちがささやきい、ざわめきはひろがり、パニック寸前すんぜん


「ああ、みんな、にいさんをしたっていたんだね。しあわものだ、こんなにたくさんにまた泣いてもらって、兄さんは」


 ぽつりともらした大叔母おおおばさんの言葉ことばで、ぎゃくにしんみりとした空気くうきながれた。


 竹藪たけやぶ隙間すきまからたぬきかおをのぞかせている。


 父さんがおもむろにくちひらいた。


「父さんな、こっちにかえってこようとおもう。以前いぜんから組合くみあいの人にもさそわれていたしな。かあさんは定年ていねんになってからでもいいじゃないとかいってたけどな」


 母さんは先頭せんとうあるぼくらからはなれて、ばあちゃんの介添かいぞえでうしろを歩いている。山道やまみちれていなくてあぶなっかしい。むしろばあちゃんに気遣きづかわれている。


 ぼくはふとわらいそうになったけど、父さんは真剣しんけんだった。決意けついかたそうだ。

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