第17話 佳穂理の慰労会
次の日、私は早速アクセサリーの店へ行き、ショーケースを見ていると店員さんが近寄って来て、プレゼントですかと聞いてきた。
私は気恥ずかしかったが、ピアスを贈りたいと言うと、どんな方ですか?写真があれば選びやすいのですが。と言ったのでいつか佳穂理と行った公園で撮った携帯電話の写真を見てもらった。
あら、綺麗な方ですね。と言って私を見てにっこり微笑んだ。
何だ、俺とは不釣り合いだとでも言いたいのか。と私は内心で思った。
ショーケースの上に丸い鏡が置いてある。
鏡を見ると私の顔が映っている。それを見て私は納得したのだった。
私は、佳穂理が店を閉じる日、落ち着かない気持ちで仕事を終え、約束の時間を待った。
アパートを出る時、私は玄関に向かい一礼をした。
一抹の寂しさもあったが優しく、孤独な私を包んでくれた感謝の気持ちを込めて。
ありがとう・・・
佳穂理の店に着くと、もうネオンは消えていた。
私はドアーを開けて中へ入ると佳穂理は振り向きニッコリ微笑み
「ごめんね。少し片づけ物があるから、そこに掛けて待っていてくれる」と言った。カウンターには豪華な花束が置かれていた。
「あゝ、それね。常連さんが相談して準備してくれたみたいなの」と言った。
私は少し嫉妬したがグッとこらえて
「そうか、良いお客さんに恵まれてよかったじゃないか」と言っていた。
佳穂理は片づけ物が終わり帰り支度をしている。
「佳穂理、ちょっと寄り道してもイイかな」
「私は構わないわよ。まだ時間も早いし」
二人は店の戸締りをして、佳穂理は花束を持って私が運転する車で女将さんの店へ向かった。
女将さんの店はすでに暖簾を外してあった。
「佳穂理、この店で佳穂理の慰労会をする事にしてあるんだ」
と言うと佳穂理は一瞬驚いた表情をして
「でも、もうこのお店閉まってるよ」と言った。
「大丈夫だよ。女将さんにはお願いしてあるから。」と言って、二人は店の中に入ると女将さんは笑顔で迎えてくれた。
「どうぞ、ごゆっくりしていって下さいね。今日はお目出度い日なのでしょ」と言って早速料理を二人の前に準備をしてくれた。
「それでは、早速だけどビールで乾杯しようか。女将さんも一緒にお願いしますよ。」
「あら、嬉しいね。こんなお目出度い席にご一緒出来るなんて」
「それと紹介が遅れたけど俺の彼女、佳穂理です。」
「佳穂理と言います。今日は遅くにごめんなさいね。よろしくお願いします」と言って佳穂理はぺこりとお辞儀をした。
女将さんも優しい笑顔で佳穂理を見つめて
「佳穂理さんの事はこの人からいっぱい聞いていますからね。それと、佳穂理さんのお店にも一回ですけど行きましたよ」
「そうだったんですか。覚えてなくてごめんなさい」
「覚えてなくて当然ですよ。謝らなくていいんですよ」
そう言う女将さんの笑顔は本当に優しい笑顔に見えた。
「女将さん、佳穂理はアルコールがダメなんです。佳穂理、何にする?」
「私は、ウーロン茶を頂きます。」
「あら、お酒はダメなんですか。それではビールとウーロン茶で乾杯しましょうか」
「佳穂理、長い間よく頑張ったね。お疲れ様でした。それと俺の事、よく決心してくれたね。ありがとう、これは俺からのお祝いのプレゼントだ、受け取ってほしい。」
と言ってピアスの入ったケースを佳穂理に差し出した。
そして三人はグラスを掲げ乾杯をした。
これまでの色々なことが蘇り、私も佳穂理も女将さんも話は尽きなかったが、夜も更けてきたので女将さんに、お礼を言って帰ることにした。
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