第11話 えっちな女魔法使い2

 部屋でわたしがベッドに腰掛けて、正面でユナが仁王立ちしている。


 どうしてこうなったのか。


「ユナさん本当に宜しいんですか?」


「今更どうして敬語に戻るんですか?塩らしくなってしまって、リンさんらしくないですよ。やっぱり嘘だったんですね。男性であると嘘をついてパーティを組むのは契約違反です。ギルドに報告して、真実を白日の元に晒して言って回ります。『あのメイドは女だ』って。それでもいいんですか?」


 全く問題ないね、女装しているし。わたしが男であると思っている人はいないだろうし。それよりユナさん、声が震えていますよ。


「わたしが男だろうが女だろうが、ユナは同室しても良いって言ってるんだよね?」


「いえ、わたしは女性だと信じて疑っていないです。リンさんが嘘を認めれば良いだけです」


「男だったら同室は嫌なの?」


「……リンさんなら構いません」


「じゃあもう女でいいよ、ギルドにも報告してくれて構わないからやめようよ。同室オーケーはい終わり」


「そうですか、であれば女性であることを確認しなければなりませんね、脱いでください」


 もうそれってわたしの裸が見たいだけじゃない?


「ユナがやろうとしていることはね、道ゆく男性に『あなたは本当に男ですか?』ってあらぬ疑いをかけて、路地裏に連れ込んで服を剥ぎ取っているのと対して変わらないんだよ。痴女だよ、襲われても文句は言えない。わたしが言いたいこと、分かるよね?」


「……分かってる、つもりです」


 本当に分かってるの?襲うぞって言ったんだよわたし。


「ね、やめようよ」


「……今後もリンさんと付き合っていきたいと私は考えています」


「そうだね、わたしもそうでありたいと思うよ」


「冒険者として一緒に活動していく中で、絶対に性別の問題は出てくるでしょう。その時に毎回、男か女か疑心暗鬼になるのは嫌なんです」


 確かに、ユナからすれば言葉だけじゃ信じられないのかもしれないね。


 やむを得ず2人で野営する時とか、初めから男って確信を持てるのと、疑心暗鬼な状態とじゃ、隣で眠るわたしへの警戒の仕方も変わってくるだろうし。


 ユナの言い分は分かった。


「いいよ、分かった」


 恥ずかしいけど仕方がない。


 今わたしは性欲をコントロールするスキルが欲しい。あ、勝手に取得はしないでね、実際にSP消費するのは嫌だから。


「わたしはどうすればいいの?」


 脱げばいいのかな。


「昨日私はリンさんに好き放題触られて恥ずかしかったんです」


 言われのない汚名を着せられているような気がする。触診のことかな?


「今度は私の番です。下着になってください」


 ヴェニー式判別法を使うつもりか!あれは相手が男だから耐えられたのであって、ユナがやってくれるってなると耐えられる自信がないよ!絶対に反応するに決まっている!このシチュエーションだけで既に危ういのに!


 わたしは頭の中でユナをホブゴブリンに変換する。目の前にいるのは可愛い女の子じゃなくてホブゴブリンだ。ホブゴブリンホブゴブリン……。


「脱いでください」


 ホブゴブリンに命令されてエプロンドレスに手をかける。脱いだ。ワンピースも脱ぎ脱ぎする。ついでだからブーツも脱いで楽になる。ブラとドロワーズだけの姿になって、ホブゴブリンからの命令を待つ。


「……本当に女物の下着を着ているんですね」


 ホブゴブリンがおかしなことを言う。『女だと信じてる』ってどの口が言ったんだっけ?


 ていうかなんでこのホブゴブリンは顔真っ赤なの?顔だけガーゴイルなの?


「昨日私はリンさんが満足するまで触らせてあげたので、今度は私が満足するまで触らせてくださいね」


 左手が伸びてきて、わたしのおなかに触れる。ホブゴブリンとは思えない優しい手つきと細い指先で、わたしのおなかを撫で回す。


「やっ、め」


 くすぐったい、変な気分になってしまう。


「細いのに、腹筋もちゃんとあって、すごく綺麗です……やっぱり信じられないです」


 五指で揉むようにして、感触を確かめられる。


「私より女の子らしい体です。羨ましいです」


 少しずつ手が下へと伸びて、腰の形を確認するように強く揉まれる。


 ホブゴブリンは右腕のない隻腕だから、わたしの右側ばかりを執拗に責める。


 あれ、なんで腕がないのがホブゴブリンなんだっけ。ユナだよね?


「ここ、あるのかないのか、確かめますよ。失礼します……」


 ユナがわたしのそこに手を伸ばす。ドロワーズ越しに、ユナの左手がわたしに触れる。細い指は、布越しなのにとても冷たく感じられて気持ちがいい。


「ほんとに、付いてる……」


 少しだけ触れただけで、ユナの指が止まってしまう。


「……いや、まだ分かりません、もう少し詳しく調査しないと」


 ユナ、なんか顔が怖いよ。


 指先だけでなく、腹も使って、わたしの形を確かめる。


「これ、大きすぎますよね……」


 手のひらを使って、握って緩めてを繰り返す。


 もうダメだ、だってユナだもん、ホブゴブリンどっかに行っちゃったもん!


「え、なんかおかしくないですか?こんなに大きくなるなんて聞いてないです」


「ユナがいけないんだよ、我慢してたのに遠慮なしで触るから……」


「これ、先端から何か滲み出てきてますよ、大丈夫ですか?」


 大丈夫じゃないからこうなっているんだよ。


「もう分かったでしょ、男だって納得したよね?」


「まだ分かりません、こんなに大きくなるはずないです!だってわたしの手首くらい太いですよ!あり得ません!殺す気ですか!?」


 そんなことを言われても個人差があるんだよ。


「分かりました!水魔法で偽物を作っているんですね!だからここに染みが出来てるんです。見栄を張ったのが仇になりましたね。こうなったら仕方がありません。ご開帳させて頂きます。いきますよ、せーのっ!」


 びたーんとお腹に跳ね返る。


 ああ、結局見られてしまった。もういっか、ユナだってある程度覚悟しているだろうし、わたしの好きにしても。


「え、なにこれ、こんなの許されるんですか?死んじゃうよこんなの……うわあああああああ!」


 悲鳴を上げながらユナが走って出て行ってしまった。


 下着をずり下げられた、レイプなのか逆なのか分からない状態でわたしは部屋に放置されることになった。


 あと10秒、決心が早ければこんなことにはならなかったのに。


 下着を履いて、ランプを消して、ふて寝した。






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