第40話 撤収(17日目)
その後は消化試合だった。
目を潰されて、暴れ回るゴブリンにひたすら石を投げつけた。幸いにも弾はいくらでもある。ヴェニーくんの方に向かわないようにだけ注意しながら、ポイポイ投げてるだけでゴブリンは弱っていった。
動かなくなったゴブリンを放置して、ヴェニーくんのところへ向かう。
肩から流れ出ていた血が固まっている。ポーションは効いたようだ。
「動ける?」
「歩くくらいならなんとか」
「とりあえず、今日中に帰りたいから撤収準備しよっか」
「耳を持って帰らなきゃいけない、デカブツは魔石も。あと、少し気になることがあって調べたい、手伝ってくれ」
「りょ」
片手を上げて了解の意を示す。
「なんだよそれ?」
「親しい間柄で使う、わかったっていう意味の言葉」
「りょ」
片手を上げてわたしに返答した。本当にもう大丈夫みたいだ。
耳と、ホブゴブリンの魔石も回収した。魔石が重い。1つ2キロくらいありそうだ。面倒になったのでマジックポーチを持っていることをヴェニーくんに話す。驚いていたがもう面倒になってしまったので隠すのはやめた。これで帰りが楽ちんになる。
小屋から決まった方向にゴブリンたちが歩いて行って、途中で仕留めたけれど、ヴェニーくんはその先に何があるのか気になるそうだ。血まみれのヴェニーくんを綺麗にしてから、案内してもらいそちらに向かう。
小屋から1キロくらい離れたところに洞穴があった。後から来たゴブリンたちはここを根城にしていたんじゃないか、元々の群れの1部が小屋に分かれて生活していて、行き来していたんじゃないかとヴェニーくんが言う。確かに、洞穴の中にはゴブリンの糞尿らしきものが溜まって悪臭を放っている。多分ヴェニーくんの言う通りだろう。念の為、生き残りがいないかどうか気配を探るが、反応は無かった。
これから村長のところへ報告に向かうけど、その前にヴェニーくんに口止めをする。内容は、『ホブゴブリン5匹とゴブリン6匹がいたことは言うな』だ。つまり依頼の内容通りこなしたと言うことにする。見せるのも耳10匹分だけ。やり取りはわたしがする。
村長の家へと向かって川を下る。歩きながら、今回の依頼についてわたしが疑っていることを話す。
村長が元から10匹目以降のゴブリンの存在に気付いていた可能性だ。
これは無いと思うけどゼロじゃない。ホブゴブリンがいるのが分かっていたなら、わたしだったら依頼金が高くなっても危険は排除してもらいたい。でもどうしようもない守銭奴ならゴブリンのついでにデカいのも、と考えるかもしれない。まあ、無いと思う。無いと思うけど、はっきりさせておかなくちゃいけない。
村長宅について、挨拶する。わたしも来る時に1度顔を見せているので自己紹介はいらない。
ゴブリンの討伐依頼を完了した事と、討伐証明として耳10匹分を見せる。ここで「他にはいなかったか?」なんて聞いてきたりしたら黒だけど、どうやら何も知らないようだ。依頼完了のサインをもらったし、白だと確信したのでネタバラシする。他にホブゴブリン5匹とゴブリン6匹がいましたよと耳を見せつける。面白いくらいに驚いていたので演技では無いだろう。
タダ働きはあり得ない。こう言う場合はギルドが追加報酬を立て替えて払ってくれるみたいだ。流れの依頼主じゃなければね。村はギルドに借金をすることになる。支払わなければどんなに困っていても2度と依頼は受けてもらえないし、借金奴隷となる。まあ、大した金額にはならないだろうし、村でお金を出せば済む話だ。
ヴェニーくんと外に出て、太陽の位置を確認する、まだ高い。門が閉じる前には帰れるだろう。
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