第21話 ランクアップと訓練場(11日目)
ミリアさんに呼ばれていたので、2人で向かう。
「それでは、お預かりしていたギルドカードの更新が済みましたので、お返し致します」
渡されたギルドカードを受け取る。ギルドカードに刻印された『G級』の文字が、『F級』に変わっていた。この部分だけ一度潰して刻み直したのだろうか。簡単に偽造できそう。
「F級になることで、今までと何か変わることってあるんですか?」
「リンさんもヴェニー様も、今まで討伐依頼や、護衛依頼を受けたことがなかったため、知る機会がなかったのだと思いますが、依頼にはランクが設定されています。G級の方は、F級の設定がされた依頼までは受けることができますが、E級の依頼は受けることができません。今回、F級に昇級されましたので、今後はE級の依頼まで受けることができるようになりますね」
「受けることのできる依頼が増えるのはいいことですね」
「制度上では、自分のランクより上の依頼も受けることができますが、F級に認められた方に勧められる依頼はF級までです。制度を利用して無理をして、能力に見合わない依頼を受けて帰ってこない方も珍しくありません。そのようなことにならないように、依頼を受けるときはよくお考えください」
ミリアさんが釘を刺す。
「わたしは、しばらくは依頼を受けないと思うから、あんまり今の時点では関係ないかな。ヴェニーくんは?」
「俺は、もしかしたら受けるかもしれないな。近場の魔物だと、シープくらいしか美味しい魔物はいないし。そのシープはあんまり俺向きじゃないからな、ちょっと考えはあるけど」
あまり無理はしないで欲しいかな。せっかく仲良くなったし。
ヴェニーくんと本格的にパーティを組んでもいいし、組みたい気持ちもあるけれど、わたしはいつかはこの町を出るつもりだから。組んでいるのが当たり前になるのは良くない。身軽なわたしに比べて、町に家族がいるヴェニーくんはこの町を離れないだろう。
「そっか。ミリアさん、わかりました。ヴェニーくん、解散でいいかな?この後用事があって」
「ああ、じゃあな、次のシープは3日後で」
そう言ってヴェニーくんは去っていった。
「ミリアさん、今から訓練場を使いたいのですが」
中途半端に時間が余っているので、雷魔法の検証をちょっとだけ行いたい。
「わかりました、初回ですので軽く設備の説明を致しますので、あちらの通路を進んでお待ちください。後から合流します」
ミリアさんが他の受付嬢、ジェーンさんに一言話してからわたしに促す。私は支持された通路の先へ進んだ。
「こちらです」
ミリアさんに案内されて、後ろをついて行く。裏口のようなところから建物の外に出て、開けた所に出た。
そこは50メートル四方くらいの広い空間だった。
右側端には、案山子?木人?みたいなものや、道路標識みたいな的が一列に奥まで並んでいる。雑多だし備品を並べているようだ。
手前には相撲の土俵のようなスペースがあって、ここは複数人で立ち会いなどをするんだろう。奥には居合で斬る巻藁のようなものや、案山子みたいなのが点々と置いてある。あそこは個人でのスペースかな。
左奥側は、弓道場みたいになっていて一番奥に土壁と、的が置いてある。そこから手前まで50メートルは、射線を確保するためか、衝立みたいに杭が並べて打たれている。
「奥がこんなに広いとは思っていませんでした」
「ふふっ、一度も利用しないで、知らないままの方もおられますよ」
そう言いながら、ミリアさんは帳簿のようなものに何か書いている。使用履歴だろうか。
「それでは設備と各備品の使用方法を説明させていただきますね」
ミリアさんから説明を受けていく。大体想定通りの内容だったので、特に質問などはない。
「備品の破損などに関してなのですが、こちらは弁償などは特に規定はありませんが、意図的な施設破壊など、明らかにやりすぎな場合は調査の上、相応の罰則が与えられますので、気をつけてください。施設利用前と利用後に報告をしていただき、その際に備品の損耗に関しても報告をお願いします」
「わかりました、ありがとうございました」
お礼を言うと、ミリアさんは会釈して去って行った。
「さて、やろうかな」
主な目的は、余った時間を使って訓練場の確認と、基本的な雷魔法の仕様の確認だった。既に前者は達成しているので、雷魔法の確認を行おう。わたしは個人スペースに向かう。
案山子の前で立って、雷魔法の発動を意識する。基本は水魔法と同じでいいだろう。
(拳大の電気の塊を出して、維持する)
特に何も起きない。
水魔法のときはこれで成功したけれど、同じ方法じゃだめということか。
「電気って形がイメージしづらいな、若い時に放電実験か何かを見た気がするんだけど、どんなだったっけ」
わたしは科学や物理畑の人間じゃないので、学校で習ったことなんてもう完全に忘れている。困った。
「電気っていうのは物から物に流れるはずだから、こうかな」
両手を目の前にかざし、その間に電気が流れるのをイメージ。
「わっ!」
魔力が流れるのと同時に、手のひらの間で、バチバチと細い糸みたいな、青白い電気が流れる。その電気の線は、右手から左手、左手から右手と何度も往復し、その度にバチ、バチと音を出す。
「すっご!人間スタンガンじゃん。わたし自身は痛くないけど、なんか抵抗は感じるな。……あと結構うるさいなこれ」
宿屋で寝る前に練習すると女将さんに怒られそうな程度にはうるさいかも。
「次は射程を確認しよう。まずはこのまま手を広げて……できた!)
20センチくらいの距離を少しづつ広げていく。1メートルまで広げたけどまだ続いている。魔力消費は最初に消費した1のままだ。
両腕を広げたり閉じたりして遊ぶ。楽しい。
「次はわたし以外の間に発生するか試してみよう」
その状態のまま、両手の間で行き来している電気を、右手から案山子に通るようにイメージして、右手を案山子に向ける。
2メートル先の案山子に向けて、右手から青白い閃光が走る。
そのままの状態で、少しづつ後ろへ後ずさる。2メートル弱離れたくらいで、魔法が途切れた。
「射程短い!水魔法の射程が5メートルくらいだったのに、3メートルくらいしかないじゃん!?」
これじゃあ、近距離戦でしか使えないじゃん!遠くから雷どーん!がやりたかったのに!
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