第20話 シープ狩りの成果(11日目)

 通り過ぎるシープ目掛けて、あらかじめポーチから取り出しておいた石を投げる。距離は50メートルくらいだろうか。ヴェニーくんに言われた通り、頭を狙って投げる。かなり離れたところで横移動している、猫サイズの頭の相手に、面白いように当たる。


 練習がてら、利き腕じゃない、左腕でも投げてみる。当たった。投擲術Lv.2ってすごい。


 群れが通り過ぎた後に、頭が凹んだシープが6匹転がっていた。


「リンってすごかったんだな……」


 ヴェニーくんが死んだシープを見ながらドン引きしている。


「多分これも、位階が上がったからだと思うよ。スライム相手に石を投げてたらいつの間にか遠くまで投げれるようになったから」


 嘘です。狙って取得しました。


「ああ、参考にするよ。それじゃ、解体して帰るか。これ以上は解体しても重くて大変だろうしな」


「わたしも練習したいから解体するよ」


 その後は2人で残りの6匹を解体して、帰路に着いた。




 ◾️◾️◾️




 わたしが2匹分、ヴェニーくんが6匹分持って、ギルドまで歩く。もう1匹分くらい持てるって言ったけど、譲ってくれなかった。


 ギルドについて、2人で窓口に向かう。今日もミリアさんのところだ。この間、混雑していたから別の窓口に向かったら、後でミリアさんに遠回しに嫌味を言われた。意外に気に入られているようだ。ちょっと嬉しい。


「わたしがやり取りしてもいい?」


「受付のミリアさんと仲良しなんだろ?任せるよ」


 ありがとうとヴェニーくんにお礼を言って、ミリアさんのところに向かう。


「こんにちは、ミリアさん」


「お疲れ様です、リンさん……ヴェニー様とパーティを組まれたのですか?」


 ミリアさんがいつものように、笑顔で挨拶をしてくれたと思ったら、唐突に真顔になった。なんで?


「はい、臨時ですけどね。魔石と、魔物素材の買取を依頼したいんですけど、ギルドカードって2人分提出した方がいいんですよね?」


 そう言って、2人でギルドカードを差し出す。


「そうですね、昇格ポイントの分配がありますので……。先に魔物素材を拝見させていただいてもよろしいですか?査定に時間がかかりますので」


 言われたので、2人でカウンターの上に布袋を出す。


「アサルトシープ8匹分です。確認お願いします」


 ミリアさんは受け取った後に、布袋を持って奥の方へ向かった。戻ってきて、わたしに木札を渡す。


「番号札になりますので、1階でお待ちください。呼ばれたらあちらの窓口で引き換えになりますので、無くさないようにしてください。それでは次に、魔石を確認させていただいてもよろしいですか?」


「お願いします」


 シープの魔石8個を提出する。いつも通りの流れで、ミリアさんから銀3銅8を受け取る。


「リンさん、ヴェニー様。後は素材金額の引き渡しのみになるのですが、今回はその後にもう一度私のところまでお越しください」


 え、なんで、私何かした?


「ギルドカードの更新手続きを行います。おめでとうございます。2人とも、これまでの魔石の買取と、今日の素材買取で昇格基準を満たしましたので、GランクからFランクになりますよ」


 ミリアさんが笑顔でそう告げる。おお、やったね、ヴェニーくんと目を合わせてハイタッチする。


 喜びも束の間、ミリアさんに向き直るとまた真顔になっている。なんで!?





 窓口を後にして、2人で待っていると、素材買取窓口から番号を呼ばれたので向かった。左頬の下に十字傷のゴツいおじさんがいる。番号札を引き渡すと、査定内容について説明してくれる。


「肉は8つ合わせて金2、銀6、皮は毛を含んで金3、銀9、銅2だ。傷が少なくて質がいいから少し高めに付けといた」


 1匹分で大体銀貨8枚か。


「はい、ありがとうございました」


 札と硬貨を交換して、2人で隅の方に移動して分配する。


「素材が金6、銀2、銅2。魔石が銀3、銅8。合わせて金6、銀9だね。当分すると、金3、銀4、銅5だね。確認して」


「信用してるよ」


「ダメだよ、間違いがあったらいけないからちゃんと計算して」


 ヴェニーくんがため息を吐きながら指を折り始める。


「あってるよ。ギルドの方で分けてくれればいいのにな」


「それだと間違いがあった時にギルド側と冒険者とでトラブルになるし、割り切れない時もあるからね。しょうがないよ。それにしても1日で結構な稼ぎになったよね。スライムの3倍は稼げてるよ。時間もおんなじ位だし」


「スライムは魔石だけだからな。シープの素材はFランクだし、素材が他のFランク魔物と比較しても高く買取してくれるらしい。羊皮紙とかにも使うしな」


 ずっとスライムだけ狩っていたけど、お金を稼ぐなら、シープの方がいいね。


「3日に1回、シープを一緒に狩りに行かない?路銀を稼ぐのに割りがいいから」


「俺は1人じゃ今の所、狩る手段がないし、助かるけどさ。リンはもう1人でも狩れるだろ?今日みたいに半分も貰ったら悪いよ」


「わたしはまだ解体に慣れていないし、重くて数は持って帰れないから、ヴェニーがいると助かるよ。他にやりたいこともあるから、3日に1回で申し訳ないけど。一緒に組もうよ」


 肉を小分けにしてポーチに入れればいくらでも持って帰れるけど、重さを考えると4匹分くらいが目立たないで持って帰れる量だ。1匹当たり銀貨8枚なら、1人で狩っても今日と同じくらいの金額にしかならない。だったら一緒に狩った方が、ヴェニーくんの稼ぎになる。雷魔法の検証と訓練をしたいから、毎日は無理だけど、3日に1回くらいなら問題がない。


「わかった。俺が貰ってばっかりな気がするけど組もうか」

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