第3話 ファッションショー

 服装のセットパターンが三種類ある。どれか1つだけ選択して装備できるようだ。


 セット1を選択、装備する。


「おー、冒険者っぽい」


 最初のセットはユニセックスな見た目の、これぞ冒険者って感じの装備だ。

 太腿くらいまでの丈のフード付きの長袖チュニック。チュニックの上から革製の胸当てで、左胸の急所を守っている。腰回りにもベルトが巻かれていて、ポーチが2つ付属している。下半身はハーフパンツで、膝上までのレガースと、レースアップのショートブーツ。


「見た目性能は、男でも女でも無難に格好が付く、平均的装備って感じだね。誰にでも似合いそう」


 化粧台の前で鏡に映して背中側を確認してみる。腰周りのベルトはスペースが結構余っているので、剣の鞘やポーチなど吊り下げて使えそうだ。ぴょんぴょん飛び跳ねたり腕を回したりして着心地を確認する。悪くない。初期装備の割にお金がかかっていると思う。これは他のセットにも期待が持てるね。次に行こう。


「セット2はっと。おお、魔法使いっぽい!」


 脛あたりまでの丈長めのチュニックに、ベルトを回して、ポーチが二つ付いている。チュニックには太ももあたりから裾までドレープが付いていて、立体感が出ていてとても良い。外からは見えないが下半身はキュロットを履いていて、裾の絞りが可愛い。ブーツはミッドカーフ丈で、風通しが良い。見た目は女魔法使いそのものだ。神様は、色々と理解した上で、わたしにこの衣装を準備してくれているようだ。


「私はミニスカ魔法使いよりもロング派だから、この装備結構好きだな。若干防御力に不安があるけど、後衛職なら許容できる。杖持ってファイアーボール撃ちたい。今回は無理だけど後で似た感じの装備を絶対買おう!やっばい楽しくなってきた!」


 スーツでそのまま森の中に放り出される系の転移じゃなくてほんと良かった。


「最後のセット3はどんな感じかな?」


 選択して鏡を見ると、そこには女海賊がいた。

 白いオフショルダーのブラウス、袖はバルーンになっていて、その上に黒色のオーバーバストコルセットを着用。胸元はハートカットで胸部をアピールしつつ、一定の防御性能を有している。スカートは上品な臙脂色で、前が膝丈までで短く、後ろがふくらはぎまでの長さのフィッシュテールスカートになっており、通気性の確保と、前衛としての機能性を両立している。足元は膝下までのレースアップロングブーツで、スカートとの境の肌色を見せつける。あなたは男性のみならず女性の視線までも釘付けにするだろう。


「これにします」


 即決だった。


 やばい。すごい好みだこの装備。カッコよくてカワイイ、カワイイは作れる!カワイイは正義!


 テンション上がって若干おかしくなったけれど、冷静になって改めて装備を確認する。よし、胴回りにポーチ吊り下げ用のベルトもついてるからマジックポーチも付けれるぞ。リュックが若干ヤボったくなってしまうけどこれは仕方がない。あっ!いつの間にか下着がドロワーズになってる!?スカートが膨らみそうな気がするけど、薄手なのかなんなのかそんなに膨らんでない!おかげでシルエットがスッキリして大人っぽさが残っててクール!落ち着けわたし。


「装備は100点なんだけど眼鏡と髪型がなぁ。眼鏡はどうにでもなるけど現状のロングポニテだとあんまり噛み合ってない気がする。髪下ろすか?いや無駄に長いからバッサバッサするし、眼鏡とのバランス考えたらショートかボブくらいの方が知的眼鏡感と清潔感出ていいよね、長めでワイルド感出してもいいけど前世ほどまともにケアできる環境とは思えないし。でも切りたくない。よし、編むか!」


 アイロンもワックスもヘアピンもねえけどやるぞ!


 5分後、悪戦苦闘しながらもなんとかシニヨンが完成した。ちょい下目でまとめて、触角は残してみて、いい感じに崩した。普段あんまり編まないから不安だったけどやればなんとかなるものだ。ここで私は気づいてしまった。バンダナとかスカーフを頭に巻けばもっといい感じになりそう。ちくしょう持ち合わせがない。後で買わなきゃ。


 改めて女海賊装備の自分を鏡で眺めてみる。いい感じに仕上がってる、大満足だ。前世でこの手のファッションは経験が無かったけど、着てみたら楽しくてつい張り切ってしまった。でも流石にそろそろキャラメイクを卒業しよう。リュックを背負って、ウィンドウを操作する。


『そろそろ転移を開始してもよろしいでしょうか』《はい》、《いいえ》


 わたしが《はい》を選択すると、部屋の中を光が埋め尽くした。眩しさに目を閉じて、次に目を開けた時、わたしは丘らしき草原に立っていた。



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