第三話:まずは天清仙人として、妖王・洛星宇を叩き起こして来ます。
その喜びようは、生前『
その様を呆れ返ったかのように若干冷たい瞳を自身へと無言で向けて来る
土下座の際に地面に額を擦り付けすぎたせいで赤くなった顔が、何とも情けない。
未だ興奮が止まない見開いた瞳を真っ直ぐに自身へと向けて来るその異様な様に、
「ひとまず、他の登場人物たちに怪しまれないように、普段から二人きりの時も原作の名前で呼び合う癖をつけましょうか。僕……あ、
「おーう、よろしく
「クッソ、陽キャは陰キャの名前もろくに覚えないのが癪に触る……」
飄々とした態度で呑気に欠伸をし出す
コイツ、これから本当に
「というか、君……じゃなかった。貴方も口調や一人称は気をつけてくださいよ。
「はーいはいわかってるよ、さすがに原作ファンなんだから知ってる。皆の前では上手くやるから」
「癖を付ける為に今からやれっつってんですよ!」
もう我慢ならんと
下品にも耳の穴に指を突っ込みながらホジホジ、挙げ句の果てにピッとどこかへ耳垢を弾き飛ばす
現実世界で世の女性ファンを
コイツ、小学生のガキかよと思わず呟きそうになるのをどうにかして堪えるしかない。
「んで、俺は何すりゃいーんだ?」
「だから口調って言ってるのに……まあとりあえず
「おっしゃ!じゃあさっそく……あはぁぁぁんっ!」
「え、何急に。キモっ」
急に断末魔のような雄叫びを上げ、包帯だらけの身体をこんにゃくゼリーのようにプルプルと震わせ出した
真っ青な額に滴る無数の汗の筋や、尋常じゃなく何かを耐え忍びすぎてもはや梅干しのようにしわくちゃになる美青年(のはず)の顔に、思わず一歩後ずさってしまうのを止められなかった。
対して件の人物である
「身体が痛すぎて動けねぇ……」
「あー、まあ最終回直後ですもんね。ほぼ死にかけの状態だったので、とりあえず怪我が治るまでは寝ててください。まぁ貴方仙人だし、死ぬ事はないでしょうけど」
「ちくしょー……転生したらチート無双状態になれんじゃねぇのかよぉ」
「日本アニメの観すぎです。とりあえず治癒能力を使える道士を呼んで来るので、それまでは大人しくしといてください」
しくしくと痛む腕で顔を覆い隠した
外から入ってきた涼しい風が部屋の装飾を揺らめかせ、空に浮かび上がる黄金の太陽の光が開いた窓から侵入してくるその様を見やり、
時は少しばかり流れ行き、次の日の朝。
「あー、暇……」
スマートフォンも、漫画も、テレビも、アニメもないこの世界に置いて何の娯楽も得られず、ただボケッと布団の上で寝ているだけの時間を、
おまけに身体はズキズキと激痛に見舞われ、指一本動かす事でさえ億劫な程に悲鳴を上げている。
そんな満身創痍状態の
「失礼致しますよ、
「……入れ」
人がこんなに苦しんでる所に来やがって、いったいどこのどいつだとは思わんでもなかったが、それは声には出さずにぐっと堪える。
何とも言えない怒りを滲ませる
「おや、お休みの所でしたか。これはすみません」
「……
「つれないですねぇ。僕と貴方の仲だっていうのに」
柔和で、
「……用がないなら帰れ」
「あります~。貴方の治療をしてくれって
「……それは、どうも」
ただ、
言うならば、ゲームのパーティーにおけるヒーラー的役割を担う存在だ。
種は違えども同じ仙人同士、二人は『修仙人妖伝』の作品内でも昔からの仲で所謂腐れ縁という設定であったと思う。
ならば、
しかし――。
(……なんかコイツ、視線がスケベだな……実はそっち系?原作にはそんな設定なかったはずだけど……)
その視線は、じとっと湿気っているかのような、それでいて僅かに舐め回すかのような淫靡な雰囲気を醸し出している印象を受けた。
確かに
しかし、作中でもそのような関係性があるとは一切明記されていないはずなのに、この滑るような視線が意味するものとはいったい何なのだろうか。
(……どうせならおっさんじゃなくて、白衣の天使ちゃんにドスケベな目で見られたかった……)
今の
さらけ出された身体をじとっと見つめてくる、僅かに熱の籠った
ほわっと温泉のような温い暖かさが流れてきたその途端、傷ついた内臓付近の変色していた皮膚が元の滑らかな白い肌に戻っていくのが明らかに見てとれていく。
それと同時に、ズキズキと痛んでいた腹の中が途端に楽になり、
治療をし終わった後、心なしかスルッと白肌をさりげなく撫でていく
確かに、死ぬほど痛かった部分は緩和された。
されたが、全体的には傷ついた部分の五分の一にも満たないくらいにしか治っていない。
すなわち、まだまだ普通に痛い所だらけだ。
「ほら、今日の分の治療は終わりました。また明日以降も来ますので、くれぐれも暴れたりしないでくださいね」
「するわけねぇだろ!こんなちょびっとしか治療しねぇでいつになったら完治すんだよ!完治する頃には寿命が来ちまうだろうがっ!」
「
「うるせーこちとら原作厨だからそんな事くらいわかっとるわ!言葉のあやだってのちくしょー!」
治療が終わった途端、布団の上でジタバタと子供のように暴れ出す
というか、まだ全然傷治ってないのにそんだけ暴れられるのならもう放っておいてもいいのでは?
そんな呆れた気持ちを抱く
「……貴方、本当に
「
そんなちんけな理由で納得するものか。
心の中では容赦なく突っ込みを入れる
「あ、はい……え、と……じゃあ僕はこれで」
一通り荷物を纏め、最後に
「いいですか?処方した仙薬は絶対飲み忘れのないようにお願いいたしますよ!いくら不老不死といえど、病気や怪我の化膿は侮れませんからね!」
「わかったから早く行け」
しっしっと有象無象を追い払うかのように
なぜかその波に乗って
自身以外いなくなり、部屋の中に沈黙が訪れる中で
「……にしても、マージでイケメンだよなぁ…てかこの小説の登場人物全員、美男美女しかいねぇ…世の中顔かよ結局」
ふと、枕元に置いてあった、顔と同じサイズ感の銅鏡を手に取り、
少し面長のバランスのいい輪郭は、二十歳そこらの若々しくも色気のある雰囲気を醸し出している。
長く艶やかな栗色の髪には、所々に星空のような輝く青色の髪がメッシュのように交じっており、それが天清仙人である証のように浮世離れした幻想的な美しさを作り上げていた。
まろい頬の上には、深海のように深く青い瞳が二つ鎮座している。
その瞳を縁取る長い絹のような睫毛は、瞬きをするたびにパサパサと鳥の羽ばたきのように微かな音を奏でる。
スッと筋の通った鼻筋、細く整えられた眉、薄めだが、桃色に色づく唇が扇情的な雰囲気を作り上げている。
極め付きは、その珠のような滑らかで美しい、吸い付くような弾力の白い肌だ。
おまけに身体付きは、背こそ中国人男性の平均身長とほぼ同じかそれよりほんの少しだけ小さいくらいで、後はスラッとした均等のとれた筋肉の付く細身の肉付き。
モデルかと見まごう程に長い手足。喉仏のあまり目立たない細く白い首筋。
キュッと引き締まった小さな臀部の上に鎮座する、両手で包み込めてしまえるくらいに細いくびれの仕上がった艶やかな腰付き。
一通り観察した後、よくここまで完璧な中性的美青年を造り上げたもんだと感心する。
それに、今はまだ直接会ってはいないが、
更には、凛々しい漢前な顔立ちの
なんだここは。かの有名なイ○メンパラ○イスというやつか。
だからこそ、『そこそこ』であった自身が今こうして圧倒的顔面偏差値の高い所にぶちこまれた事により、
「
「おー!もう元気ハツラツよ!これだったら妖王の一匹や二匹余裕余裕!」
「それは良かった。
「お前の情緒がわかんねぇって……」
あれから一週間程かけて
相変わらずの
そうと決まれば、
「んじゃさっそく
「それに関しては手筈は整ってますのでご安心を。念のため、他の道士たちにも万が一に備えて今回の事はお伝えしてあります」
「……お前、そのコミュ力あれば普通に
「甘いですね、主人公としてのプレッシャーがないからこそ脇役としては力を発揮できるものなんです」
主人公だとコミュ障を発揮する癖して、脇役となると途端に内に潜んでいた陽キャの部分がひょっこりするこの一番弟子に、若干呆れた気持ちになってしまうのは否めないだろう。
しかし、未だ冷静沈着な主人公になりきれない自分とは違い、何だかんだこの世界のキャラクターとして馴染んできてしまってる
「
「ああ
弟子たちが集まっているという、仙城の広々とした中庭に
中には涙を溢れさせておいおいと顔を覆いながら号泣する者までいる。
それほどまでに、
(すっげーな
そしてあれだけ重症であった両足肋骨その他もろもろの骨折や破裂しかかってた内臓でさえ、三界一の治癒の仙人と吟われる
わいわいと我らが師匠の快気を祝う中、
その途端、あれだけ騒がしかった場が嘘のようにしんと静まりかえった事に、
気分は『皆さんが静かになるまで三分かかりました』と全校生徒に告げる生活指導の先生のようで、なかなかのものだ。
「あー……お前たちも、健在のようで何よりだ。心配をかけたな、すまなかった」
「いえそんな!
素をなるべく出さないように
うむ、と得意気に
「ところで
「……本当だが、何か問題でも?」
「あ、いえ……ただ、アイツは我らと共闘関係を結びながらも、結局はこの三界を滅ぼそうとした極悪非道な罪人です。何故、今になって助けるような真似を……」
若者の言葉を静かに聞いていた
そんな若者を一瞥した後、
「……お前たちも見て来ただろう?
そう。原作内で闇落ちし、三界を滅ぼそうとしてしまった
しかし元を辿れば、彼がそうせざるを得ない状況に追い込んでしまった原因は、まぎれもなく彼が生きてきた環境や周りの醜悪な人物、彼に理解を示そうともしてやらなかった我々なのではないか。
「彼は凄惨なる運命に翻弄された被害者だ。もう罰は充分に受けたはず。今度は我らが救済の手を差し伸べる番だ」
「なんて寛大なお言葉だ……!さすがは我らが
「容姿も内面も考え方も全てが尊く美しい……!まさにこの方こそが
弟子たち同士で呟く声を、こっそりと耳を澄ませて聞いていた
「くぅ~!我ながらめちゃくちゃカッケーこと言っちゃった……!どうだった?どうだったよ?」
「さすがです、
「だろぉ~?」
こんなくだらない会話が、弟子たちの憧れの存在である
こそこそと互いにしか聞こえないくらいの声量で茶番的なやりとりをする二人を、若者たちは俄然キラキラとした純粋な瞳で見つめ続けるのであった。
師匠と弟子たちの茶番劇が終わった後、
青々と茂る木々に囲まれたその峡谷の中心には、芯まで透き通り太陽の光を反射させキラキラと輝きを帯びる川の水が幻想的な景色を作り上げている。
なので、天清仙人であり無限の戦闘力を携えている
「……お前たち、何だその体たらくは。そんな有り様では仙人への道は俄然険しい物になるぞ。もっと修行に励み、体力をつけなさい」
「……ぎょ、御意……」
死人のようにバタバタと倒れていく弟子たちの哀れな姿を見やりながら、
人の手がほとんど加えられておらず、なおかつ人が滅多に立ち入る事のないこの峡谷の川のど真ん中に、『それ』は静かに鎮座していた。
「……これが黒化された
「現実世界で売ったら相当価値付きそうじゃないですか?」
「わかる、ちょっと削って持ち帰っちゃダメかな」
「
「お前本当に情緒の波おかしくねぇ……?」
二人の目の前には、人の背丈の倍はありそうな高さのある巨大な黒曜石の塊が、その存在感をありありと主張している。
そう、まぎれもなくこれは黒化された
原作通りであれば、主人公の
そして、
不老不死である
憐れみと同情の気持ちを込めながら、
「……んで、これどうやって解けばいいん?」
「……さぁ?貴方天清仙人なんだし、黒化した張本人なんだからご自分で何とかしてくださいよ」
「おいテメェこの役立たず!ちっとは手貸せや!」
原作ファンと言えど、神通力の使い方なぞ普通の人間であった
藁にも縋る思いで隣にいた
この世界に同級生を巻き込んだ張本人である責任を少しも感じさせない飄々としたその態度に、
どこ吹く風といったように知らん顔で視線を反らす
再び黒曜石に視線を寄越しながら
「……こういう封印系って、なんかこううまーく手に力を込めながら『解!』とかって唱えればだいたい解けたような……」
「それこそアニメの観すぎですね、原作であんだけ苦労した黒化がそう簡単に解けるとは……」
「解!」
「話を聞きなさいよアンタ!」
やれやれと呆れた手振りをしていた
そう。あくまでも『真似事』に過ぎなかったはずであった。
黒曜石に添えていた手に力を込める素振りをしながら、何となく『解!』と唱えただけだったのに、途端に目の前の黒曜石にピキピキと亀裂が入り出す。
驚く間もなくあっという間に上から下までびっしりとヒビを行き渡らせた黒曜石は、その瞬間凄まじい音を立てながら粉々に砕かれ散ってしまった。
「うっそマジかよできちゃったよ!」
「ちょ、危ないって!」
大きな黒曜石が砕かれた事により、鋭い破片が四方八方に飛び散っていく。
破片の散乱で嵐のような突風までもが発生し、身体が吹き飛びそうになった。
突風に耐えつつ間一髪で破片を避けながら、
粉々になり、煙を巻き上げる無惨な姿の黒曜石の中心から、何やら背の高い人のような影がゆらりゆらりと身体を揺らめかせているのが微かに見て取れる。
一歩、また一歩と、その『人影』が
そしてある程度の所で歩みを止めたかと思えば、今度は峡谷の合間を縫って吹き付けてくる自然の突風に煽られ、黒曜石の周りを覆っていた煙がサァッと風に流されていく。
煙が全てなくなり、件の人物がその姿を完全に現すと、途端に渓谷中に弟子たちによる驚愕と恐怖の悲鳴が轟き出した。
「うわあああ!
ゆらり。ゆらり。
ゆらゆらと身体を左右にゆっくりと揺すりながら、件の人物――
二メートル近い高さの背丈に、程よく筋肉の付いた、しかし全体的にガッチリとした身体はそれだけで厳かな雰囲気を纏っている。
面長のシュッとした輪郭に、切れ長の黄金に輝く瞳。目の縁を囲うように、艶やかな朱の刺青が差し色として入っている所が妖艶さを引き立たせている。
高い筋の通った鼻や薄い唇は、男らしくもどこか艶やかな印象を抱かせた。
長いぬばたまの髪の毛は少し癖があり、頭の高い位置でひとつに結んである。その漆黒の髪には、所々金色に光る髪の毛がメッシュのように入り組んで生えており、まるで
『修仙人妖伝』の悪役は、見る者を惹き付けて放さない、御伽話の王子のような美貌の青年であった。
そして
兄と同じように黒色に金色の混じった長い髪の毛を艶やかにたなびかせながらも、黒化によって仙根と妖根が尽きかけている影響からか、その黄金の瞳は閉じられ、今は
黒化から解放され件の
妹を抱える腕の優しさとは相反して、
凍てつく黄金の瞳は、まるでこの世の全ての生き物を駆逐せんばかりに射殺すような憎しみを携えながら、目の前に立つ
一方、突如として現れた
「
「
推しを間近で見ることのできた嬉しさからか、両手で顔を覆いながらその場で蹲り、あまりの尊さを噛み締め消化するために叫び散らかす他なかった。
小説の挿し絵や実写映画で幾度となく見てきたはずの推しのビジュアルだが、実際の代物というのは所詮作り物でしかないそれらとは比べ物にならないくらいに輝いて見える。
創作物でしかなかった推しが、息をして動いているというその事実だけで饅頭十個は腹に入りそうだ。
ありがとう作者様、ありがとう呪術師のおばあちゃん。
緊迫感漂うこの状況を置いてきぼりにしながら、二人は今にも射殺さんとこちらを睨み付けてくる
だってしょうがないじゃないか。推しのビジュアルがあまりにも良すぎるのが悪いのだから。
身体をぶるぶると震わせながら、壊れたロボットのように『ありがとうございますありがとうございます』と呟き続ける
「……かの者が、我らが宿敵、
「ん?鴨の肉が、柔らかステーキ、美味ルンルン?お前鴨好きなん?食わしてやりてーけどここにそんなモンあるかな?」
「
推しを前に思考回路がイカれた
何がどうしたらそんな聞き間違いができるのか。さすがの自分でもそれはないと思ったと
しかし、二人の間に流れるその茶番のような空気感は、突如として
「……貴様、どういうつもりだ」
「……え?どういうって……」
「とぼけるな!貴様、一度は俺と妹を黒化しておいて、再び解放するとは……俺たちを馬鹿にするのも大概にしろ!」
「えぇ……本当に馬鹿になんかしてないって……うわぉぉぉっ!?」
腕に抱えていた眠る
推しに悶えて油断していた
いや。正確には、妖王としての圧倒的な身体能力を携えている
ぽかんと呆気にとられる
何が起きたのかもわからないまま、
その代償に、完治していた筈の腹と背中に大ダメージを食らい、衝撃に耐えきれなかった反動で激しく咳き込むのを止められなかった。
「ゲホッゴホッ!ってーな!こちとら病み上がりなんだからやめろよアホが!お前を助ける為に解放してやったのに何で攻撃してくるんだよ!?」
「黙れ!仙人も妖怪も人間も、もう何も信じない!俺には妹の
痛みで震える己に再び殴りがかってきた
(ハッ!そういえば
そう。
先ほどは彼女の凄まじい可憐な容姿にばかり釘付けになっていたが、安否は未だ確認できていない。
現に先ほども、仙根と妖根の尽きかけで眠っているだけに見えたが、不老不死というのは何も病気や怪我をしないというわけではないのだ。油断は禁物である。それは
「テメェどさくさに紛れて
「セクハラじゃありません。介抱です。それより
「ふざけんなテメェぇぇ!」
何と。この戦闘のどさくさに紛れて
ヒロインらしく、露出の多めなコスチュームを見に纏っている
あのクソ陰キャ野郎。後でしばくと。
一方、天清仙人と妖王の激しい戦闘を目の当たりにしながら、弟子たちはひそひそと言葉を交わしていた。
「
「気のせいじゃなさそうだ……」
「心なしか
「それにしても、やはり天清仙人と妖王の戦いは凄まじい……あの中に入ったら私たちなぞ簡単に捻り潰されるだろうな」
「おお、お労しや
憧れの師匠を想い、しくしくと泣く若者たちとは裏腹に、
妹と同じように、黒化の影響で仙根と妖根が尽きかけており肉弾戦でしか攻撃する事のできない
それをこれまた天清仙人持ち前の戦闘力によって必死に躱していた
「待て待て待て!いったん話し合おうってば!こんないたちごっこ的に戦ったってキリないだろって!」
「黙れ!いたちだかタヌキだかモグラだか知らないが、たかが仙人ごときが俺に指図するなっ!」
「ノリ良いんだか悪いんだかわかんねぇ奴だな!?」
先ほどの
一瞬そう考えた
どう見ても、普通に殺意びんびんな顔をしているから。
そうこうしている間にも、二人の攻防戦が終わりそうな気配はいっさい訪れない。
本気で殴りかかって来る者と、本気で防御に徹する者の実力差がほとんどないからだ。
(クッソ……!この感じだと戦闘力は五分五分ってとこか…あーもうマジでこのまんま戦い続けたら三界がヤバい事になるって!)
これではキリがないという考えに至った
「こうなったら……!」
渾身の力を込めて拳で顔付近を殴りかかってきた
今まで攻撃を流す事しかしてこなかったはずの
それを、
固まる
何事かと見開かれていく黄金の瞳を見つめながら、
「んっ……」
「んぐっ!?」
それは、『
突然の事に、
そのあまりの驚き様に、まるで時が止まってしまったかのような沈黙が流れ行く。
そんな驚愕の展開からいち早く目を覚ました弟子たちは、未だ整理のできないこの状況に対して声を震わせる他なかった。
「し、
「何と……何と破廉恥な!我らが
「いやどう見てもあれ
弟子たちの次に目を覚ました
驚きすぎて逆に冷静になった
そしてそのまま、ほぼ小説の受け売りと真似事を試すかのように、ぐっと手に力を込めて神通力を腹の中に流し込んだ。
「スキありっ!」
「っ!?」
重力に従い倒れそうになった
「へへっ……さすがの妖王様でもこれは利くだろ……!」
「はぁ~……死ぬかと思った……また身体いてーしよぉ……黒化から解放された直後でコイツの仙根と妖根が尽きかけてたのが幸いしたな」
「お疲れ様です、
「おー……にしてもこれからどうすっかなぁ。起きたらまた暴れるだろうし……」
腕の中でぐったりと気絶する妖王の姿を見ながら、
「……マジでこんなんで本当にコイツの事ハッピーエンドにできんのか……?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます