秘密のひととき

天然無自覚難聴系主人公

第1話 秘密の触れ合い

「……ね? お願い? 痛いの」


 二人きりの部屋。無防備な薄い服を着こなしベッドに横たわる人とこの状況をどうしようかと考え込む人の二人。


「貴方は私のメイドさんでしょ? だからお願いしているのよ?」


「それに関しては重々承知していますが……」


 メイドと言ってもマッサージは素人同然揉めば大体良くなるだろうというレベルでしかない。


 問題はそれだけでは無い。そもそも気安くマッサージなどしていいのだろうか。主従の関係、雇われている身なので業務の事に関しては手を抜くことなくこなす。が、


「はやく~」


 奇麗な脚をパタパタとさせながらこちらの様子を窺う。その眼差しを断るわけにもいかない。

 ゆっくりとベッドの横に寄り背中に手を添える。どのくらいの強さなのかも分からないが、このまま始めてしまっても良いのだろうか。


「良いよ。早くやって?」


 ゆっくりと力を入れていく。押せば反動か気持ちよさなのか声が漏れている。この辺なのだろうかと考えながら適当に押し続ける。


「あぁ~気持ちいよ~」


 いつしか相手の気持ちよさなど考える事を忘れ綺麗な肌に触れることを楽しんでいた。押すたびに声を出しまるでおもちゃのような面白さと可愛げを感じていた。


「あぁ~、ん~、そこ~」


 声だけを聴いていると何かまずい事をしているような気がしてたまらない。


「その辺は少しくすぐったいかも」


「……この辺ですか?」


 わざと弱いところを軽く突くような感じで触れる。ビクッ、と予想通りの体の反応を楽しみたまらない。何回か繰り返すとさすがに怒られ我に返る。


「今度は私がマッサージしてあげるよ」


 くすぐった事への報復でもしたいのだろうか。個人的には良いのだがこれでも業務中である事を忘れてはいけない。


 さっきは忘れてくすぐっていたんだけどね……


「私はメイドですよ? することがあってもされることはありません」


「そう固いこと言わないでよ~良いでしょ?」


 ベッドに引き込まれる。抵抗はしない。したくない。それを望んでいた? だけどこうされるのは嫌ではない。言われるがまま、自分でもちゃんと先を考えて体を動かす。気が付けばうつ伏せにされ、準備はできている。


「じゃあやるよ?」


 軽い力で背中を押される。コリが取れるような気がしないが気持ちい。


「どう? 上手い?」


「もう少し力が必要ですね……」


 ムッとした表情を浮かべ立ち上がる。ベッドの後ろに周り上がり込む。

「あの……?」


 さすがに二人分の重さが乗る時にはギシギシとベッドが音を立てる。上から見下ろされ嫌な予感がする。


 うつ伏せに横たわるメイドの腰に乗りかかりこれでもかという様な表情で背中を押す。腰にのしかかる体重、小さな手が柔らかい刺激を与え気持ちいの分類に入れていいのかもしれない。嫌な予感は大きく外れた。


「どう? 今度は気持ちいでしょ?」


「まぁ、そうですね気持ちいです……」


 少しの間静かな時間が訪れた。黙々と疲れを取ってくれている様を途中で止めたくはなった。たまに気を抜きすぎて漏れ出る声を聴くたびにニヤニヤとするお嬢様の顔が離れない。


「ふぅ、じゃあそろそろ前だね」


 困惑。前とは一体どういうことか。いつになくお嬢様の表情から目が離せない。私は一体これから何をされるのだろうか。その答えはお嬢様の手を見れば分かる。


「そ、その手の動きでどこを触るつもりですか……?」


「リンパマッサージです! 怪しくありません」


「本当にそれだけですか!?」


「……すこし私的な所もありますが……」


 さすがにそれではお嬢様が変態まっしぐらなので、起き上がる。しかしもうお嬢様は止まらない。脚をかき分けどんどんと迫ってくる。太もも同士が擦れ合い刺激が走っているのは私だけなのだろうか。


 実際の所は顔を見れば動揺しているのが分かった。試しに擦ってみれば一緒の感覚を共有している。


「……スリスリしないでください」


「襲おうとしてこないでください」


「……私だって自分にあれば良かったのに」


 ここに来てリンパマッサージの隠れ蓑を捨てた。確かに色々と気になるお年頃ではある。親が過保護であり性教育については最低限度の事しか教えていない。お嬢様の口からS〇Xなど言葉など聞いたことも想像もできない。ましてやチンチンなども聞いたことがない。徹底されていると感じるがこの先が心配でもある。現在進行形で暴走しているが。


 段々と近づく距離。少し手荒だがお嬢様の手を掴み牽制しようとするが効果は無い。押され始め、重心がずれる。


 ゆっくりと倒れ始め二人の勝負は決着がついた。


「私の勝ちです。失礼します」


 胸に顔をうずめられ、吐く息が服を通り越し胸を熱くする。抵抗しようと思えばもう少しやりようはあったかもしれない。せめてもの抵抗が見えるようにこの手は離さない。


「私もいつかはこのくらいに……」


「まだまだ成長期ですよ」


「身長もう止まったんだよね……」


 不貞腐れさらに顔をうずめる。この鼓動が聞こえてしまうのではないだろうか、顔が赤いのがバレてしまうのではないか。


「気持ちい?」


「……はい」

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