第10話
その資源運搬船は砂漠の泉号と呼ばれていた。その船体は透明な鉄でできており、青く輝くその姿は、まるで空に浮かぶ水のオアシスのようだった。船は惑星間の水運搬を任務としており、その青い光は命の源を運ぶ象徴だった。
IRISとMILLENNIAは慎重に船体の非常ハッチに近づいた。IRISは小型のハッキングデバイスを取り出し、数秒でロックを解除すると、二人は素早く内部に潜り込んだ。
「これで少しは安全だね。」MILLENNIAは安堵の息を漏らしながら言った。
「まだ気を抜くな。これからが本番だ。」IRISは冷静なままであった。
二人は船の中を進みながら、搭乗者に見つからないように慎重に行動した。船は出港準備を整え、エンジンの低い唸りが船内に響き渡っていた。
やがて、船は静かに離陸し、地球の重力圏を脱し始めた。視界の端に広がる青い地球が次第に遠ざかっていく。
「もう戻れないんだな…」MILLENNIAは呟きながら、その美しい青い惑星を見つめた。彼女の目には涙が浮かんでいた。地球での記憶と共に、故郷を離れる悲しみが心に重くのしかかってきた。
IRISは何も言わずにそっと彼女の肩に手を置いた。「私たちにはまだやるべきことがある。」
MILLENNIAは涙を拭い、深呼吸をした。「そうだね。まだ終わってない。」
二人は互いに頷き合った。砂漠の泉号は、青く輝く船体を宇宙の闇に浮かべながら、静かに彼らを未来へと運んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます