第9話

IRISの計画は緻密であり、逃亡の手段としての確実性を感じさせた。彼の提案は、地下鉄を使って宇宙港まで向かい、そこで宇宙貨物船に潜り込んで火星の衛星ステーションまで行くというものだった。そして最終的には、火星の時空警察本部基地に亡命するという計画である。


「地下鉄を使うなら、敵の追跡をかわすチャンスが増える。」IRISは地図を広げながら説明を続けた。「宇宙港までは比較的安全だが、貨物船に潜り込むタイミングが難しい。だが、そこさえクリアすれば、火星の衛星ステーションまで行ける。」


MILLENNIAはその計画を聞きながら、内心の緊張を押し隠していた。「地下鉄から宇宙港に行くまでの道はどうなってるの?」


「幾つかのルートがあるが、一番確実なのはこの道だ。」IRISは地図上の一つのルートを指さした。「宇宙港に着いたら、貨物船の出航時間を確認して潜り込む隙を見つける。」


「それで、火星の衛星ステーションにたどり着けるってわけね。」MILLENNIAは少し不安げに見えたが、その目には決意が宿っていた。


「そうだ。衛星ステーションにたどり着けば、私たちの追手も手を出せない。」IRISの声は冷静で確信に満ちていた。


二人は早速準備を整え、地下鉄の駅へと向かった。駅は静まり返り、時折通り過ぎる電車の音が響くだけだった。乗り込んだ電車の中で、二人は無言のまま座っていたが、その瞳には互いに対する信頼と共に、これからの未知の旅路に対する覚悟が見え隠れしていた。


やがて、地下鉄が宇宙港の最寄り駅に到着すると、二人は素早く降り立ち、寂れた通路を通り抜けた。宇宙港の広大な敷地に足を踏み入れると、その荒廃した様子が二人を迎えた。かつての栄光を思わせる巨大なドックは、今や静まり返り、冷たい風が吹き抜けるだけだった。


「ここが出発点だ。」IRISは低くつぶやいた。「貨物船が停泊しているエリアまで行こう。」


MILLENNIAは頷き、二人は慎重に進んでいった。

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