第17話「ホームページが出来上がって」
今年も梅雨が明けて、本格的な夏がやって来た。
暑い日には冷たいものがよく売れると言うが、このアトリエ月光でもアイスコーヒーを注文されるお客さんが多くなった。今年も例年通り暑くなっていくのだろう。暑さに負けないように気をつけておかなければならないと思った。
カランコロン。
お昼も過ぎ、一息ついていたところにお客さんがやって来た。私はいつものようにお店の入口の方へ行く。
「光さん、こんにちは~、暑いですね~」
「まあ、坂元さん、いらっしゃいませ。ほんとに暑くなりましたね」
来てくれたのは常連の坂元さんだ。手にはパソコンを持っている。いつものように気分を変えるために来てくれたのかな。
「ほんとに~、これが毎日続くんだから、嫌なもんですよ~。あ、アイスコーヒーお願いしてもいいですか?」
「はい、もちろんです。空いてるお席にどうぞ」
坂元さんが窓際の席に座った。今はブラインドを下ろしているので陽は入ってこないだろう。お水を坂元さんの席に持って行った後、私はアイスコーヒーの準備をする。カラコロとコップの中で氷が音を奏でる。私はこの音も好きだった。
「お待たせしました、アイスコーヒーになります」
「ありがとうございます~。あ、光さん、今日は見てもらいたいものがありまして」
そう言った坂元さんはパソコンをこちらに向けた。見てもらいたいものとはパソコンの画面だろうか。
「ついにここのホームページが出来上がったんですよ~。さっきサーバーにもアップしたので、ここはもう全世界に公開されているページになりますよ~」
坂元さんが嬉しそうにパソコンを操作する。画面にはアトリエ月光の建物の写真と立派なロゴ、優しい色使いで素敵なホームページが映し出されていた。
「わあ、そうなんですね、すごいです! 坂元さんはこういうお仕事をされているのですね」
「まぁこんなもんですよ~。あと、SNSでも宣伝しておこうかなと思っています。実は私、フォロワーがそれなりにいるアカウントがありますので、宣伝効果は少しはあるんじゃないかと~」
「す、すみません、何から何まで……なんとお礼を言えばいいのか……」
「いえいえ、いつもここを利用させてもらってますからね~、これくらいさせてください~」
坂元さんがアイスコーヒーを一口飲んで、「夏は冷たいものがいいですね~」と言っていた。
「ここに、光さんやお父さんの声も入れたいんですよね~。あとは季節のメニューなんかが増えたときに更新したりして。なので光さんにも少し編集に慣れてもらわないといけないかと」
「な、なるほど……難しいものでしょうか?」
「いえいえ、そんなに難しくないですよ~、タイピングができれば問題ないです。あとはサーバーにちゃちゃっとドラッグ&ドロップで反映させるだけですので~」
「そ、そうですか、それなら私でもできるかな……」
「大丈夫ですよ~。あ、さっそくですが、この夏に出そうかと思っている商品とかありますか?」
「あ、かき氷を新しく出そうかなと思っています。たまには冷たいものもいいんじゃないかなって、父と話していました」
「ああ、いいですね~、じゃあそのあたりの情報をホームページにも載せておくといいと思いますよ~。それを見てお客さんが来てくれることもあるでしょう」
坂元さんがパソコンのメールアドレスを教えてくれと言ったので、私は普段使っているメールアドレスを教えた。必要なものはそこに送ってくれるらしい。本当に何から何までお世話になって、申し訳ないくらいだ。
「あとは、先ではお父さんの絵もここで販売ができるといいなと思っています~。今はネットでの販売もいろいろありますし、たくさんの人にお父さんの絵を見てもらういい機会なのではないかと」
「なるほど、そうですね、父の絵がたくさんの人に見てもらえるというのは、嬉しいです」
「そうですよね~、あ、お父さんの絵を写真に収めていってもいいですか? すでにいくつかあるけどもっとホームページに載せようと思いまして」
「はい、大丈夫ですよ。自由に撮ってもらえれば」
坂元さんがパシャパシャと父の絵を撮っていた。
ホームページが出来上がったことで、これを見てお客さんが来てくれることがあるかもしれない。それもまた新しい出会いだと、私は楽しみであった。
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