第18話「暑い日のかき氷」
毎日暑い日が続いている。
ここのところは雨も少なく、太陽が容赦なくきつい日差しを照りつけてくる。私は夏は好きな方だと思っていたが、ここまで暑いとへばってしまいそうだ。
今年は新しい商品として、かき氷を出してみることにした。カウンターの隅にかき氷機を設置した。存在感がそこそこあって、お客さんにも「あら? かき氷?」と訊かれることもある。アトリエ月光の新しい相棒だ。この夏は頑張ってもらおうと思っていた。
この間も田所さんが「せっかくかき氷がメニューに追加になったのなら、食べてみようかねぇ」と言って、かき氷を注文してくれた。「なんだか子どもの頃を思い出すわぁ」と、なかなか好評でよかったなと思った。
カランコロン。
ひと段落着いたのでカウンター奥の掃除をしていると、ドアが開く音がした。私はお店の入口に行く。
「こんにちは! お久しぶりです。来てみました!」
「……こ、こんにちは」
入ってきたのは子どもが二人……そう、あの職業体験でうちに来てくれた美潮ちゃんと翔平くんだった。今日は制服ではなく私服姿だ。美潮ちゃんは水玉のワンピース姿で、翔平くんは黒のシャツに青いジーンズ姿。二人とも可愛らしいと思うのは私が大人だからだろうか。
「まぁ、いらっしゃいませ。来てくれてありがとう。こちらにどうぞ」
私は二人を席に案内した。向かい合うようにして二人が席に座る。
「今日はお客さんとして来てくれたんだね。本当にありがとう」
「いえいえ! また美味しいコーヒー飲みたいなと思っていたので!」
「……あ、ぼ、僕もです」
「そっかそっか、なんでも注文してね。お姉さん頑張るからね」
「はい! あ、かき氷があるんですね!」
美潮ちゃんがメニューを見ながら言った。
「ああ、うん、今年から出すことにしたんだよ。二人ともかき氷食べる?」
「はい! 外めちゃくちゃ暑くて、涼みたい気持ちになってしまったので!」
「……あ、ぼ、僕もいいですか?」
「もちろん。シロップは何にしようか?」
「私はいちごでお願いします!」
「ぼ、僕はメロンで……お願いします」
「分かりました。ちょっと待っててね、作ってくるから」
私はそう言ってカウンターの隅にあるかき氷機の前に立つ。氷をセットして、スイッチを押すとガリガリガリという音を立ててかき氷ができていく。お皿に山盛りになるように盛った後、シロップと練乳をかける。夏にぴったりのかき氷が出来上がった。
「お待たせしました。こっちが美潮ちゃんのいちご味で、こっちが翔平くんのメロン味ね」
「ありがとうございます! じゃあ、いただきます!」
「……あ、ありがとうございます。いただきます」
二人がスプーンですくって、かき氷を食べる。冷たい氷の食感が口の中に広がっているだろう。
「つめたーい! でも、涼しくなった気がします!」
「あはは、よかった。翔平くんはどう?」
「つ、冷たいです……逆に温かい飲み物もほしくなるくらい」
「あ、そしたらホットのコーヒーもあとで出そうか。そっちはお姉さんのおごりにしてあげるから」
「え!? いえいえ、ちゃんとお金払いますよ」
「大丈夫。二人はまだ中学生だから、お小遣いが大変でしょ。今は他のお客さんもいないから三人の秘密ね。お姉さんに任せておいて」
「ありがとうございます! いただきます!」
「……す、すみません、ありがとうございます」
「いえいえ。それにしても二人は仲良しなんだね。もしかしてお付き合いしているとか?」
「え!? そ、そんなぁ~、こいつとは小学校のときから一緒で、腐れ縁なだけですよぉ~」
「……お、お、お付き合い……は、してないです」
「そっか、でも仲が良いっていうのはいいことだね」
「まぁ、クラスでもよく話す方ではありますね……って、あんたさっきから挙動不審だけど、やっぱり光さんが綺麗だから見とれてるんでしょ」
「なっ!? ち、ちが……!」
「まったく、これだから男の子は……光さんすみません、やらしい目で見てたら殴っていいですよ」
「あはは、二人とも職業体験のときと変わってないね。かき氷で涼んでね」
二人が美味しそうにかき氷を食べるのを見て、私も嬉しい気持ちになった。
こうして可愛らしいお客さんが増えるのはいいことだ。夏の暑さはまだまだ続く。これからも新しい相棒とともに、このアトリエに来てくれる人が増えることを願っていた。
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