第16話 復活

「夢じゃなかったか……」


俺の頭を抱え込むようにシーナが丸まって寝ている。

動かそうにも起こしてしまいそうで気が引ける、どうにか起こさずに抜け出せないだろうか。


「無理そうだな……」

「ユウキ……ダメ……」


一体なんの夢を見てるんだ?

寝言と共に抱きしめる力がさらに強くなり女性らしい柔らかさと匂いが心地いい。


「ん? 何だこの本」


少しだけ首を動かしながら辺りを見渡すとなにか本が置いてあった。

見たことがない表紙なのでシーナの物だろうか?

暇つぶしついでに表紙を見てみると魔力操作基礎と書いていて明らかにシーナのものでないことが分かる。


「リズさんか?」


こんなものを持っているのはリズさん以外検討もつかないので多分リズさんのものだろう。

本を空に掲げ内容を読み始める。


「体に巡る魔力を感じる……」


目を瞑って体の中にある何かを感じようとすると何かが流れているのが分かった。

暖かくも冷たくもない、なんとも言えない何かを感じる。


「魔力を一点に集める」


魔力を手の平に集めるイメージを強くするほど何かが手の平に集まっている気がする。


「風よ」


手のひらから風が吹き出しコアルームの天井に当たる。

そこそこ強い風が出たようでビュンと音がした。

魔力は使いすぎるとなくなり0になると気絶するか酷い倦怠感に襲われるそうだ。


「魔力切れを繰り返すとレベルをあげなくても魔力が増えるのか」


流石にシーナに報告もなくすると今度こそ怒られそうなので今はこの本を読み続けるしかない。

しかし、シーナも案外俺の事を認めてくれているのかもしれないと思うと頑張っているかいがあるな。

倒れただけであそこまで心配してくれるとはちょっと以外だった。


「ん……んぁ……ユウキ……っ!?」

「あぁ、おはようシーナ」

「っ!!///」


完全に目が覚めたのか飛び起きると一気に俺から距離を取った。

顔が真っ赤に染まっていき隠れるように部屋の隅へと逃げてしまい、背を背けて頭を抱えている。


「シーナ、ありがとう、色々迷惑かけたな」

「……体調は」

「もう大丈夫だよ」

「ならいいわ」


背を向けたままだが心配してくれているのが伝わってくる。

耳が赤くなっているのを指摘して意地悪してみたいが、今回はやめておこう。

シーナともより一層仲良くなれた気がするので倒れたのは案外良かったのかもしれないな。

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