第12話 領主様

「ねぇ、ダンジョンで前の騎士団が騒いでるわ」

「お、来たのか、そういえば呼び出す合図も決めてなかったな」

「早く行ってあげなさいよ」

「行ってくる、憑依」


 領主の周りを囲む10名程の騎士団、知らない顔ぶれの戦闘には隊長さんが居た。


「遅れてすまないな、連絡手段を作るべきだった」

「ヒヤヒヤしたぞ」

「本題に入ろうか」


 そう言って俺が領主の方へと向くと領主も1歩前へと出てきた。

 近くの護衛が剣を突き出し俺の事を睨んでくる。


「私は3代目エーシュマ領、領主のアルカナ・エーシュマだ」

「私は……そうだな、ナユとでも呼んでくれ」


 夏目祐希の言葉を拝借しただけの簡単な名前だが今後ユウキとしか名乗るつもりがないのでバレることは無いだろう。


「して、改めて話をしてくれると助かるのだが」

「あぁ、俺はお前たちにダンジョンで渡せる資源とダンジョンでの一定の層までの安全を提供しよう、その代わりあなた達には死ぬ気で街を発展させて欲しい」

「こちらに利益しかないように聞こえるが?」

「俺たちがせっかく作ったダンジョンもこんな場所じゃ日の目を浴びることなく朽ちてしまう、だから近隣のエーシュマ領が発展すればこのダンジョンにも人が来るだろうという読みだよ」

「なるほど」


 普通はこんなに怪しい話のるまでも無い。

 むしろ俺を取っ捕まえて牢屋にでもぶち込んで無理やり言うことを聞かせる方がマシだろう、それをしないってことは相当向こうも慎重にならざる負えない理由があるのだろう。


「その話に乗ろう」

「交渉成立だな」


 相手の様子は様々だ。

 領主を信じきって選択に従うもの、まだ俺を訝しんでいるもの、この話に好意的なもの。


「礼と言ってはなんだが次の層ではあんたらの欲しいものをできるだけ用意しよう」

「良いのか?」

「あぁ、緊急で足りていないものや、何か必要なものは?」

「では、鉱物資源を頼む、特に鉄だ、もう我々には日用品を作る鉄がまともに残されていない」

「……アイアンゴーレムとやらがこのダンジョンにスポーンすれば解決出来そうか?」

「何!? アイアンゴーレムを出せるのか!?」

「まあ、かなり力を使うが出来んこともない」


 アイアンゴーレムのスポナーは5万DP、スポナー系は500体まで勝手に数を調整しながらダンジョンに放出してくれる。

 一体倒される事に還元DPが30DP、還元率は3割500体が倒されるまでに元を取れるといいが……


「代わりの条件を提示してもいいだろうか」

「っ! あぁ……」


 何か覚悟の決まった顔をしているが生贄や人柱を要求しようって訳じゃないんだがな。

 それだけモンスターとの取引ってのは通常ありえないことなんだろう。


「騎士団をダンジョンに駐屯させて欲しいんだ、1層なら驚異も少なく野営にも向く、なんなら建物を建ててくれても構わん」

「何か意味があるのか?」

「人間が多いほど力の回復速度が上がる、だから私は客寄せがしたいのだよ」

「ダンジョンがそんな仕組みだったとは」

「これは秘密で頼むぞ、墓場まで持って行ってくれると助かるな」

「あぁ、分かった」


 出来るだけこちらの情報は渡したくないがここで怪しまれて話が頓挫するのだけは避けないと行けない。

 多少の開示くらいは大丈夫だろう。


「2日後には第3層を解放しておこう、それでは私はここで失礼する」



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 投稿遅れてすんません


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