第9話 契約成立
「待ってましたよ」
「あの話、受けようと思います」
「ふふ、もう準備していたから無駄にならなくて良かったわ」
「助かります」
そういいながら図書館の奥へと消えていき、しばらくすると大量の本を手に持って帰ってきた。
「えっと、この本は?」
「ふふ、刻印魔法に関する本とダンジョンのDPについて、あとはこの世界の常識を学べそうな本をいくつかですかね」
「え?」
どうしてこの人が刻印魔法を知ってるんだ?
今日、相談しようとは思っていたが用意まで完璧にされてるなんて思いもしなかった。
「ふふ、私はそういうスキルを持ってるんですよ、世の中にはそういうスキルもありますから知られたくないスキルがあるなら人の街に行く前に対策することをおすすめします」
「ありがとうございます、でもどうして俺が本を欲しがると思ったんですか?」
「刻印魔法自体、スキルを持っていたところで事前知識がなければ使い物にならないスキルだからですよ」
刻印魔法がそんなスキルだとは思っていなかった。
確かに刻印といっても印の型を知らなければ何も出来ないだろうし、そういう基礎の形があるのだろう。
「わざわざありがとうございます」
「ふふ、これからも時々来てくださいね?」
そう言ってウィンクする姿は大人びた姿からは考えられないくらいお茶目で可愛かった。
こんなの通うしかないだろう。
この世界に来てから会う人が美形だらけでこれからが楽しみだ。
「もちろん!」
「ありがとうございます♪ ちょっと手を貸してください」
「はい」
司書さんが差し出した俺の手にそっと手を重ねると何かが流れ込んできた感覚が手から伝わる。
変な感触だがどこか癖になるような気持ちよさがあった。
「これで受け渡しも出来ました、本が少し多いですし帰りの転移陣まで半分運んであげましょう」
「ありがとうございます、助かります」
「それじゃ、行きましょうか」
半分本を司書さんに持ってもらい、図書館から転移陣に向かって歩き始める。
長い廊下を進んでいくと徐々に視線が俺たちに向けられているのが気になった。
人と言うだけで奇妙な視線を向けられることはあったがそれでもここまでではなかったはずだ。
「ふふ、気にせずに行きましょう、この学園では人型が珍しいですから仕方ないですよ」
「え、あ、はい」
言われた通りに気にせず廊下を進んでいく、司書さんからおすすめの本を聞いたり面白かった物語のあらすじを教えてもらったりとかなり楽しめた帰り道だった。
「ありがとうございました、あの、司書さんってなんて呼べばいいんですか?」
ずっと気掛かりだった名前を聞いて今日は帰るとしよう。
「私ですか、ん〜、リズとお呼びください」
「リズさんですね、改めましてありがとうございました、ではまた!」
「……ふふ、またですね」
無事に帰ると本を洞窟の隅にある布の上に置く。
余裕が出来たらこのコアルームも改装しようと心に決めながらシーナを探すとまだお菓子を食べていた。
「お前……いつまで食ってんだ?」
「……これで最後なの……味わってるのよ」
「そ、そんなに落ち込むか?」
「私の……生き甲斐……生きる意味が……」
「ダンジョンが安定して稼げるようになったらもっと出せるようになるから我慢してくれ」
「本当に頼むわよ……期待してるわ……期待してるわよ」
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