　朝（あさ）、車（くるま）に乗（の）ろうとしたら、小（ちい）さな手形（てがた）がいっぱいフロントガラスについていた。

　子（こ）どものいたずらだろう。

　急（いそ）いでいるのに……。

　何（なん）とか拭（ふ）き取（と）ったが、一（ひと）つだけ全然（ぜんぜん）、消（き）えない。

　おかしいな？

　気付（きづ）いた。

　それは内側（うちがわ）についていたのだ。

　うっすら赤（あか）い、幼稚園児（ようちえんじ）くらいの手形（てがた）だった。

　思（おも）い出（だ）し、背筋（せすじ）が凍（こお）った。

　昨夜（さくや）、事故現場（じこげんば）を通（とお）りかかった。翌朝（よくあさ）は早（はや）くに出（で）ないといけないから、それで通行規制（つうこうきせい）がかかり渋滞（じゅうたい）になっていたのには苛立（いらだ）った。

「たくっ！　迷惑（めいわく）な……」

　思わず、吐（は）き捨（す）てた。

　今朝（けさ）のニュースには、その事故で小さな子が犠牲（ぎせい）になったと出ていた。

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