　昼間（ひるま）の繁華街（はんかがい）。

　大（おお）きな犬（いぬ）を連（つ）れた、すました顔（かお）のきれいな女（おんな）の人（ひと）が向（む）こうからくる。

　ん？

　なんだ……、あれ？

　人間（にんげん）だ。

　おっさんだ。

　四（よ）つん這（ば）いで、真（ま）っ裸（ぱだか）で、首輪（くびわ）にリードで、その先（さき）を女の人が持（も）っている。

　誰（だれ）も何（なに）もいわない。

　誰も変（へん）に見（み）ていない。

　俺（おれ）だけが呆然（ぼうぜん）と立（た）ち尽（つ）くす。

　そのすぐ横（よこ）を平然（へいぜん）と、女の人と犬のおっさんはすれ違（ちが）った。

　女の人は俺を見もしない。

　おっさんは、俺を見た。

　ニヤリと笑（わら）った。

　振（ふ）り返（かえ）ったが、もう雑踏（ざっとう）のなかに消（き）えていた。

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