第6話 中村の新曲発表

中村のアパート内での新曲発表の日がやってきた。リハーサルの準備が進む中、住人たちは興奮と期待の入り混じった雰囲気の中、アパートの共有スペースに集まっていた。高橋もまた、サポート役として張り切っていた。


「さて、新曲のリハーサルを始めましょう!」中村が元気よく言った。彼はいつものように気合い十分で、準備に取り掛かっていた。楽器を並べ、音響機器のセッティングも整えていく。高橋はその様子を見ながら、手伝いをしようとしっかりと準備していた。


「これが今日の見せ所だね!」と高橋が声をかけると、中村がにっこりと笑った。「うん、今日はバッチリ決めるからね。」


リハーサルが始まると、問題が次々と発生した。最初にスピーカーの音量が小さすぎて、みんなの前で何度も調整を繰り返す羽目になった。


「どうなってるんだ?」中村がイライラしながら言うと、正美が「ちょっとスピーカーの設定を見直さないといけないかも」と提案した。


高橋も手伝おうとスピーカーの前に立ち、調整を試みたが、勢い余ってスピーカーを押し倒してしまった。スピーカーが倒れる音が大きく、部屋の中は一瞬にして騒然とした。


「うわっ!」高橋が驚きの声を上げた。「すみません、これは完全に私のミスです…」


スピーカーが壊れてしまったことに気づいた住人たちは、すぐに対応に追われた。中村はすぐに修理を開始し、高橋も一緒に作業を手伝うことにした。みんなが協力しながら、スピーカーを修理する様子はまるで緊急修理チームのようだった。


「みんな、ちょっと落ち着いて!」中村が冷静に指示を出し、「修理が終わったらリハーサルを再開しよう。」


一方、高橋は必死に壊れた楽器を修理しようとしていたが、手元が狂ってさらに楽器を壊してしまった。「ああ、なんてこった…」と悔しそうに言うと、住人たちも思わず笑ってしまった。


「大丈夫、大丈夫。」鈴木が慰めるように言った。「このアパートでは、予想外のことがよくあるからね。」


最終的にリハーサルは何とか無事に終わり、中村の新曲もきれいに演奏されることになった。住人たちは拍手を送り、リハーサルの後はみんなで楽しいひとときを過ごすことができた。


「今日のリハーサル、本当にお疲れ様でした。」中村が高橋に感謝の言葉をかけ、「トラブルが続いたけど、みんなの協力で乗り越えられたね。」


高橋は肩の力を抜き、にっこりと笑った。「いろいろあったけど、楽しかったです。」


イベントが終わり、みんなが帰り支度をしていると、またしてもアパートの入り口に手紙が置かれていた。中には「次回のサプライズにご期待ください」とだけ書かれていた。


高橋は手紙を手に取り、「また何かあるのかな?」と不安と期待が入り混じった表情でつぶやいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る