第5話  謎の人物の正体とその真相

アパートの共有スペースには、鈴木のアート展示会が無事に終了し、住人たちの笑顔が広がっていた。高橋は展示会の片付けをしながら、またあの謎の人物がアパートの前に立っているのを見かけた。彼はまるで何か重大な発表があるかのような姿勢で、時折あたりを見回していた。


「またあの人物か…。」高橋は困惑しながらも、意を決してその人物に近づいた。「すみません、ちょっとお話しできますか?」


見知らぬ人物は振り向き、目を大きく見開いた。「あ、どうも!実は…」


その前に、住人たちも気になって集まってきた。鈴木、正美、美咲、そして中村がその場に集まり、まるで集合写真でも撮りそうな勢いでその人物を囲んだ。


「また、田辺さん?」正美が冷やかしながら言った。「最近ドッキリ好きな田辺さんがまたやったのね。」


「え?田辺さん?」高橋が驚きながら、住人たちの反応を見つめた。「彼って誰?」


田辺さんは困ったように笑いながら、言い訳を始めた。「実はですね、皆さんを驚かせようといろいろなサプライズを仕込んでいました。コスプレイベントの変な衣装も、音楽の大音量も、展示会の作品が倒れるのも…全部ドッキリです。」


住人たちは一斉に「ああ、やっぱり」と笑い合い、田辺さんに対して笑いと呆れの混じった表情を向けた。


「またやってくれたね。」鈴木が笑いながら言った。「展示会の作品が倒れたときは、本当にびっくりしたけど、まさかあなたが仕組んでいたとは。」


田辺さんが軽く肩をすくめながら、得意げに言った。「それが僕の趣味ですから。サプライズでみんなの反応を見るのが楽しくて仕方がないんです。」


美咲が笑いながら言った。「じゃあ、アパート内に現れた謎の人物も、あなただったわけね?」


田辺さんはうなずきながら、「はい、そうです。手紙も、音楽の大音量も、全部僕が仕組んだものです。『これから重要なことが起きる』って言ったのも、皆さんの反応を見たくて…」


高橋がびっくりして言った。「じゃあ、すべての謎は田辺さんの仕業だったんですね。」


田辺さんはニコニコしながら、「そうです。驚かせるつもりだったんですが、みなさんがそのたびに驚く顔が見られて、本当に楽しかったです。」


「でも、手紙の内容は?」中村が尋ねた。


田辺さんは「それもただのジョークです。実は、次に何が起きるのかは僕もわからないんですけどね。」と笑いながら答えた。


住人たちはその説明を聞いて、笑いが止まらずに次々と大爆笑した。高橋もその様子を見ながら、「まさかこれほどまでに楽しいドッキリが続くとは…」とつぶやいた。


展示会が終わった後、住人たちはアパート内の楽しい空気に包まれて、お茶を飲みながらくつろいだ。田辺さんも加わり、皆で楽しく過ごす時間が流れていった。


しかし、笑いが収まる中、またもや玄関に新しい手紙が置かれているのを高橋が見つけた。手紙には「次のサプライズはもうすぐ!」とだけ書かれていた。高橋は手紙を手に取りながら、次の展開に少し不安と期待を感じていた。

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