第3話 突発的なパーティー

数日後、高橋真一はアパートの廊下で突然、にぎやかな音が響いているのに気づいた。

音楽が大音量で流れており、住人たちの笑い声や歓声も聞こえる。

何かイベントがあるらしい、と興味を持って音の方へ向かうと、共有スペースが見事に装飾されているのが見えた。


「何のイベントですか?」と、高橋は近くにいた美咲に尋ねた。


美咲がにこやかに答えた。「実は、今日の午後に急遽、中村さんの音楽イベントを開くことになったんです。住人たちで楽しもうということで、パーティーになりました。」


高橋は「なるほど、急な話ですね」と感心しつつも、「何か手伝えることはありますか?」と申し出た。


美咲は手伝いを頼む絶好のチャンスとばかりに、「ぜひ! スピーカーのセッティングを手伝ってもらえると助かります。」


高橋は喜んで引き受け、スピーカーのセッティングを始めた。しかし、音響機器の扱いには自信がない彼が、説明書を片手にセッティングを試みると、どうも思うようにいかない。電源を入れた途端、スピーカーから大音量の音楽が流れ、住人たちは驚きの声を上げた。


「うわっ! こんなに音が大きいとは!」と、高橋は慌ててボリュームを下げようとするが、機器の複雑なボタンに戸惑ってしまう。音量が高すぎて、まるでコンサートのような状況になってしまった。


中村は微笑みながらも、「まあ、アクシデントも一興ですし、これもパーティーの一部ですね。」と寛容に対応していたが、他の住人たちは「どんどん盛り上がってきた!」と笑い合っていた。


高橋は音響機器のセッティングを終えた後、ホッと一息ついたが、何か忘れ物があったような気がした。すると、美咲が「高橋さん、あちらにある手紙、気になりませんか?」と指摘した。


アパートの共有スペースの隅に、小さな手紙が置かれているのが目に入った。高橋はその手紙を拾い上げると、差出人が書かれていないことに気づいた。「何だろう、これは…?」


手紙を開けてみると、内容はこう書かれていた。


「もしあなたが知りたいなら、アパートの歴史を探るといい。真実はそこで待っている。」


高橋は手紙を読みながら、眉をひそめた。「アパートの歴史…? 何か隠されたことがあるのか?」


その時、音楽が再び大音量で流れ始めた。高橋が振り向くと、先ほどの黒いフード付きのコートを身にまとった見知らぬ人物が、静かにアパートの一角で佇んでいるのが目に入った。人物は一言も話さず、ただ黙って手紙をじっと見守っていた。


高橋の心はざわつき、住人たちの楽しい雰囲気も一瞬、緊張感に包まれた。彼は手紙を握りしめながら、その人物の正体と手紙の意味に対する不安が募っていくのを感じた。アパートに何か隠された真実があるのだろうか…。


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