第2話 コスプレイベントの準備

高橋真一がアパートのロビーで朝のコーヒーをすすっていると、美咲が何やら忙しそうに荷物を運んできていた。

彼女は大きなダンボールを抱え、「真一さん、ちょうどよかった! コスプレイベントの準備を手伝ってもらえますか?」と声をかけてきた。


「コスプレイベントですか…?」と、高橋は首をかしげた。


「はい! 今週末にアパートの住人たちでコスプレイベントを開こうと思って。住人同士の交流も兼ねているのよ。真一さんも一緒に参加しませんか?」


高橋は一瞬迷ったが、住人たちとの交流のために手伝うことに決めた。

「わかりました。どんな手伝いが必要ですか?」


美咲はにっこり笑って、「まずは、自分のコスプレ衣装を用意するのが第一ステップです。後でお手伝いするのは、装飾の準備やリハーサルだね。」


高橋は自分の衣装を選ぶために、アパートのロビーの一角に置かれたコスプレ衣装の中から適当なものを探し始めた。

コスプレの経験がほとんどない彼は、衣装選びに苦労しながらも、最終的には奇妙なキャラクターに決めることにした。


「これでいこう…何とかなるだろう。」と、自信満々で高橋は選んだ衣装を持ち帰った。





数日後、いよいよコスプレイベント当日がやってきた。


アパートの共有スペースは華やかな装飾でいっぱいになり、住人たちが次々とコスプレ姿で集まってきた。


美咲も豪華な衣装で準備万端。


高橋は自分の衣装を着ると、どう見ても異様なキャラクターになっていた。


彼の選んだ衣装は、古びた魔法使いのようなもので、帽子はあまりに大きく、長いマントはすぐに地面に引きずってしまう。


鏡で見てみると、自分がまるで中世の奇妙なキャラクターに変身しているのが分かった。


「これ、どう見てもおかしいな…」と苦笑しながら、イベントの会場に向かうと、住人たちは彼を見て大爆笑。


「高橋さん、その衣装、なかなかユニークですね!」と、鈴木さんが声を上げた。


「うん、あまりにも珍しいから、どこから持ってきたんですか?」と、美咲も笑いながら言った。


高橋は顔を赤らめつつも、「まあ、これもアパートのイベントだから、楽しんでいこう。」と心に決めた。


イベントは和やかに進行し、住人たちと楽しいひとときを過ごした。コスプレコンテストでは、高橋の衣装が「最も個性的なコスプレ」として特別賞を受けることになり、結果的に彼の変な衣装がイベントのハイライトになった。


イベントの片付けが進む中、高橋はもうひとつ気になっていることがあった。

すると、アパートのエントランスから不意に音がした。

振り向くと、黒いフード付きのコートを身にまとった見知らぬ人物が現れていた。

周囲の雰囲気が一変し、住人たちの談笑も止まり、その人物に注目が集まった。

高橋は心臓が速く打ち始め、見知らぬ人物の存在に驚きと不安が込み上げてきた。


「一体、あの人は誰なんだ…?」


その人物はじっと高橋を見つめながら、ゆっくりとアパートの中へと歩み寄っていった。


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