第6話煙草取締法1
ある作家の話し。
その作家は羽弦トリスと言う男だった。
ハイライトを1日40本吸うヘビースモーカー。執筆がはかどらない日はその倍、喫煙する。
そこに、仲間の著名人が集まる。
画家の沢口、華道家元の田山、ジャーナリストの須田。そして、羽弦。
「しかし、喫煙人口もだいぶ減りましたな」
と、田山が言うと、
「誠に残念。この我々が吸っている煙草が一箱20本で3000円時代が来るとは、嘆かわしい。だいだい、煙草と言うものは合法的な精神安定剤です。それが、最近の連中は喫煙者を殺人犯を前にした様な目で見てくる。日本の将来も危ういですな」
4人はそれぞれ喫煙しながら、バーボンを楽しんでいる。
「沢口先生、最近の若い作家の小説読んでも喫煙者は登場しないんです。しかし、私の小説では登場人物全員が喫煙者と言う設定で書かせてもらいますが、ひと昔前まではファンレターが多かったのに、今じゃ脅迫状ばかりですよ」
と、羽弦はハイライトに火をつけた。
「羽弦先生のおっしゃる通り。非喫煙者は喫煙者より長生き出来ると迷信じみた説を信じていますが、喫煙は文化なのです。マリファナよりも煙草は常習性が高いですが、喫煙する人間が犯罪者的な論調は即刻辞めるべきです」
と、沢口はラッキーストライクを吸っている。
須田はジャーナリストの第一人者だが、
「最近、悪い噂を聴いています。皆さん、近々、煙草取締法という法律が閣議決定されるそうなのです。煙草も麻薬の一種とされ、逮捕される事になるんです」
「ホントですか?須田先生。しかし、私は何回前科が付きようが、禁煙はしませんよ」
「羽弦先生のおっしゃる通り。私も辞める気はありません。皆さんどうでしょう?喫煙秘密結社を作ると言うのは?」
それに、すぐ田山が乗った。
「皆さん、作りましょう。喫煙秘密結社を!喫煙文化を私達の代で終わらせてはいけません。欧米の健康促進法などマネして、日本も健康意識が馬鹿の様に高くなりましたが、喫煙は続けましょう」
「なぁ〜に、田山先生そう焦らずとも、健康意識は禁煙ばかりではありせん。コンビニ弁当もカロリーが高いのです。2型の糖尿病患者を減らすには、コンビニ弁当も禁止にするべきです。ま、私は2型の糖尿病ですが。アハハハハ」
『アハハハハ』
全員、笑いながら喫煙して、バーボンを飲んだ。
この煙草取締法は間もなく衆議院で可決されてしまった。
その年の年末から、販売機、コンビニから煙草が消えたのである。
そして、喫煙秘密結社は始動する事になった。
ある筋のルートから煙草と現金との取り引きで喫煙秘密結社は自らも喫煙するが、煙草を一箱1万円で売り捌いていた。
また、自宅で煙草の葉を栽培する様になった。
こうして、喫煙秘密結社は活動の場を広げて行ったのである。
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