第2話登山隊1

夏のある日。

夏でも雪が解けない山に一つのパーティーが登山した。

この登山隊は、カレンダー会社のパーティー。夏の雪山を撮影して、翌年のカレンダーに載せるのだ。

人数は6人。

この登山隊は、雪山は慣れている。しかし、この山は夏でも雪になる場合が多いが現代の科学ではいつ山が晴天なのか?判断出来る。

そこに、登山隊の甘さがあったのだ。

標高がだいぶ高くなると、吹雪となった。

登山隊の1人が滑落した。

周りはトラバースをストップさせて、滑落した人間を救出に向かった。

隊長の寺山は、

「ここは、オレと伊藤が行ってくる。残りは待機」

「寺山さん、私も行きます。ミカを助けます」

「中川。お前は女性だ。男2人だけで大丈夫だ。だから、田嶋を残して置く。中川と園田を頼むぞ、田嶋」

「はい」


慣れた、寺山と伊藤は滑落した香川ミカを救出に向かった。

山を下ること10分。香川は岩場に倒れていた。

「香川、大丈夫か?」

寺山は香川の頬を触る。香川は目が覚めた。

「た、隊長。足が、足がぁぁ〜」

寺山と伊藤は足を見た。

右足がおかしな方向に捻れていた。

「香川、落ち着け!今、処置してやる」

寺山と伊藤は雪山の岩肌に落ちていた、木片を用いて、持参の包帯で捻れた足を固定した。

「ぎぁぁぁ!痛いっ!痛いっ!」


ガタイの良い、伊藤が背負って3人が待つ場所に向かった。

30分後、パーティーは雪山をトラバースしていた。

「この先に山小屋があったはずだ!」

と、寺山が言う。

「有りましたっけ?まだ、先じゃ?」

「いや、この近くだ!田嶋」


「あっ!」

「どうした?中川」

「見えました!山小屋が」

「どこだ、どこだ」

周りは吹雪の中、周りを見渡す。

「あった!」

寺山を先頭に、全員山小屋に避難した。


暖炉があった。

田嶋は山小屋に備蓄されている着火剤にライターで火を付けて、薪に火を移した。

暖炉では、火が燃えている。

「何だ?全然暖かくならないぞ!」

と、伊藤が言う。

香川は痛みで気絶したままだ。

全員で火を囲む。

「みんな、落ち着け。寒いと言う先入観から身体を冷しているんだ。炎に集中しろ。じきに暖かくなる」


「ホントだ。暖かい」

中川が言った。

「アハハハハ。明日は救助隊が来るはずだ。さっき、無線で連絡したから」

寺山は、笑った。園田は、小屋に置いてあった、毛布を香川に掛けてやり、火に1番近い場所にみんなで運んだ。


「みんな、食料はあるか?後、飲料水」

各自、2日分の蓄えがあった。

「万が一、救助隊が遅れても助かる様に、私が食料を管理する。みんな、私に預けなさい」

寺山は周りから、食料品と飲料水を預かった。

寺山は、元看護士だった。


「こんな、話しがある。ある遭難した、登山隊の話だ。登山隊が雪崩に遭った。生き残った2人の男たちだった。片方の男は足に大怪我。もう1人は食料品を探すと言って、日に3度、外に出た。その人間は隠し持っていた食料品を食べていたのだ。自分だけ生き残る為に。そうするうちに、足に大怪我を負った男は衰弱し、ある朝、死んでいた。片方の男は、その死体を運び出し、雪の中に埋めたんだ。だが、翌朝、生きている男が目を覚ますと男の死体はテントの中に。何度も埋めたが、必ず翌朝には死体は横にある。ある日、1日をビデオに撮った。すると、死体は自らが埋めた穴から運んでいたんだ」

寺山は、コーヒーをすすった。

「隊長、何故、今頃そんな話をするんですか?」

と、園田が言った。

「食料品で揉めてはいけないと言う事だ」

「……分かったぞ!寺山さん。アンタだけ、1人生き残るつもりだな。食料品を返せ!」

「そうだ!そうだ!」


パーティーは各々が自分の食料を管理する事になった。

香川が目を覚ました。

「あっ、ミカちゃん」

「瞳ちゃん、喉が渇いた」

と、香川は園田に言った。園田はペットボトルのお茶を飲ませた。

「ありがとう、瞳ちゃん」

「ミカちゃん。ゆっくり寝ていて。明日は救助隊が迎えに来るから」


しかし、救助隊は3日間過ぎても来なかった。

そして、恐怖は始まる。



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