第3話 なぜ「何も感じていない」のか。

 いじめられている被害者のことを、「何も感じていない」なんて、そんなことがあるわけない、なんて言う人もいるかもしれませんが、実際に「被害者の受ける痛み」を一切感じていないから、いじめられるわけです。

 相手受けるの痛みが感じられるなら、痛くていじめは続けられません。

 そして、相手のことを「何も感じられない」なんて、何かの病気じゃないかと言う人もいるかもしれませんが、加害者は正常です。

 なぜ、大人たちは、自分が子供だった時のことを、忘れてしまうのでしょうか。

 これは、人間なら、全員通る道なんですが。

 付け加えると、加害者にも痛みを感じる相手はいます。何も感じない相手だから、いじめられるだけです。


 大人の人は、思い出してください。

 子供の時に、残酷なことをしたことがありませんか?

 大人になった時に、なぜ子供の時に、あんなかわいそうなことを、あんな残酷をしたんだろうと、不思議に思ったことはありませんか?

 具体的に言うと、「意味なく虫を殺した」とかです。

 子供のころに、意味なく残酷なことが出来るのは、相手に対して「何も感じていない」からです。

 何をしても、何も感じられない相手というは、現実には存在しない、架空の相手と同じです。何も感じないから、初めから存在していなかったのと同じ。だから、際限なく残酷なことが出来る。

 

 これも生存本能の話と同じものなのです。

 人間は、自分の生存に必要なものと、自分の生存に不要なものを、明確に分けています。

 なので、自分の生存にとって必要のないものに対して、何も感じません。

 子供から大人まで、これは共通です。

 ただ、子供は成長途中なので、自分の生存にとって必要でないと思っているものが大人より遥かに多いのです。

 つまり、何も感じていない、架空の存在としか感じられないものが、大人と比べるとものすごくたくさんあるということです。

 家にあるものを簡単に壊す、落書きするなども一緒です。何も感じていないからこそ、壊せるし、落書きができるのです。大切ではない、何も感じていないから。

 大人で言うと、夫のコレクションを簡単に捨ててしまう妻ですね。夫のコレクションに対して、何も感じていないからこそ、簡単に捨てられるのです。

 何も感じないからこそ、際限なくいじめられる被害者と一緒です。何も感じないから、壊されるし、捨てられるのです。そこに罪悪感もなければ、殺意もありません。ただ、何も感じていないだけです。


 人間は、生存のために、自分の生存に必要ものと、必要ないものを分けています。

 肉体上での自分は、分かりやすく自分の体だけですが、精神上の自分は違います。

 生存に必要ものすべてを、自分自身と感じています。

 失えば、心が傷つくもの、心が死んでしまうものは、肉体の内か外に関係なく、あなたにとって大切な、自分自身なのです。

 赤ちゃんの時は、自分自身と母親を自分自身と感じている可能性があります。

 そこから、いろんな経験をすることによって、増えていくのです。

 何を自分自身と感じているのかは、人によって違います。ただ、精神上の自分が、何を自分自身と感じているのかは、簡単に分かります。

 失ったら、心が傷つくもの、悲しいもの、泣いてしまうものをすべて紙に書いてください。それを、大きな丸と小さな丸の中に分けていきます。

 小さな丸は、あなたの命です。

 これを失ったら死んでしまう、と思うものを小さな丸の中に入れてください。

 より重要なものは中心に、置きましょう。

 人によって、重要なものは違います。自分の命が一番大切な人もいれば、子供の命やパートナーの命を一番大切だと思う人もいるでしょう。人の命ではなく、自分の作品や、コレクションが一番大切だと思う人もいます。

 失えば心が傷つくものは、すべて大きな丸の中においてください。より重要なものは円の中心側に、重要でないものは外側に近づけて。

 この円の中にあるものが、精神上の自分自身です。そして、外側にあるものが、失っても何も感じない、あなたにとって架空のものと感じられるかもしれない、自分以外もの。

 いじめの被害者は、加害者にとって、大きな円の外にある何も感じられないもの、なのです。










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