期待に応えて

ShiotoSato

 

 トンネル内には、男女の足音だけが響き渡っていた。


「ねぇユウ君、帰ろうよ……」


「帰んないって。せっかくここまで来たじゃんか」


 少年の方は歩みを止めずに、喜々とした様子で話す。


「ねぇ……だ、誰かに見られてる気がする」


 ひどく震えた声で少女は言った。


「はぁ? 何だよソレ」


「ホントだってば」


「どうせ帰りたいから気を引こうって魂胆だろ。いいか、俺らは肝試しに来たんだぞ」


 聞く耳を持たない彼。付き添う彼女。

なおも、2人はトンネルの奥へと進んで行く。


 次第に闇が濃くなると、少年は辺りを見回した。


「……ここ、行き止まりか」


 つまらなそうに独りごちる彼を尻目に、少女も溜息を吐く。


「ほら、もう帰ろう。日暮れちゃうよ……」


「…………」


 彼はあからさまにガッカリすると、行き止まりに向かって唾を吐き掛けた。


「何も無いとか期待ハズレ……。帰るか」


 彼は踵を返し、その場を後にしようとする。




         さて。




    私の住処を踏み荒らしておいて、

     タダで帰れると思うなよ。

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