エドの今まで
「敵襲!!敵襲!!対空戦闘用意!!」
サイレンが耳を突く。
すると、空が点滅した。
見るに、敵の爆撃機だ。
「エド!!弾持ってこい!!」
「はい!!」
エドは、近くの壕に走って、ありったけの弾薬箱を抱えて走る。
「持ってきました!!」
「装填!!」
トップカバーを開けて、弾薬箱からベルトを引き出し中に突っ込んでトップカバーを閉じる。
あとは力任せに、ハンドルを引っ張って放す。
「よし、エド第4基地に電信!」
「はい!!」
そうして、壕の中にある無線機に飛びついて、素早くモールス信号を打つ。
「よし送ったぞ!」
「あと少しだ!!耐えろ!」
すでに迎撃機が飛び立っており、あと数分で来るそうだ。
「それまで耐えられるかよボケぇぇぇ!!」
エドにみんな喰いかかるも時既に遅し、爆弾がそこかしこに落ちてくる。
周りは土嚢で囲ってあるから、完全ではないがある程度の破片は防げるだろう。
さっきからドカドカ、バリバリ撃って銃身が少し赤くなっても、敵は圧倒的な物量で爆弾を投下してくる。
「このままじゃダメだ!!退避ぃ!退避ぃ!!」
弾や銃も捨てて一心不乱に掩体壕に走り出す。
「くそ、くそ」
全員が掩体壕に逃げ込んだ。
全員の顔が曇る中、隊長は無線機をいじって必死に無線を聴こうとする。
そのまま少し時間が経って隊長が顔を上げた。
「みんな、今回はダメだったが次の戦場ではきっといい戦果を挙げられるだろう、我々第492歩兵小隊は今日のヒトフタマルマルを以て解散だ、迎えの船が今こっちに向かってる、東側の海岸まで行くぞ」
突然の解散にみんな戸惑って、顔が更に悲しみと侘しさで歪む。
「各個人必要な物だけを持って、ここにヒトナナマルマルに集合だ、暗くなってから出発する」
みんな自分の私物を名残惜しそうに背嚢に詰めていく。
「うう.........」
悲しみからか、大粒の涙が流れる。
「みんな、少し休んでおけ、夜になると嫌になるほど歩くからな」
そのままみんな泣き疲れて深い眠りに落ちる。
夜になり、みんなモソモソと起きてきた。
「さあ、出発だ続け」
ボルトアクション式の小銃を持ち壕から出る。
辺りは暗く、目を慣らさないと少し先が見えない。
「隊ち.........一松少尉、ここからどうやって行くんです?道中敵の野営地もありますよ?」
一松少尉と呼ばれた男は返事をする。
「小隊は解散させられたが、隊長でいいぞ」
意図を汲み取り返事し、作戦の説明をする。
「作戦だ、ここから少し行った所に小規模な敵の野営地がある、そこで武器弾薬を鹵獲して東側の海岸まで進むぞ」
「了解」
ザクザクと東方向に進んで、時折コンパスで方角を確認し、方角がズレてきたらその都度修正して進む。
月明かりだけで、小さなコンパスの針を見る。
根気と忍耐力のいる作業だがこの島から出られれば、どんな事でもするという気概が感じられた。
更にしばらく歩く。
いくら夜とはいえ、敵地のど真ん中にいるので無駄な話し合いはしない。
「見えた」
小さく呟き全員を止め、素早く伏せさせる。
「狙撃させますか?」
「いや、せっかくの奇襲が台無しだ、それに銃声で位置をバレたくない、そのまま近づいて近接戦に持ち込むぞ」
そこからはゆっくりゆっくり、亀のような歩みで這って前進する。
やっとこさ、敵から見えない塀の裏にまで移動した。
「突撃だ!」
手持ちの手榴弾を全て投げる勢いで敵に投げた。
そこかしこで爆発音が響く。
「突撃ぃぃぃぃい!!」
みんな一斉に立ち上がり、塀を乗り越えて走る。
「遅い!」
迎撃しようとしていた近くの敵兵を銃剣で刺して押し倒す。
しばらく銃声が響いて、突然静かになった
「外は片付けたか?」
「はい!」
「それじゃあ、中だ、武器庫を探すぞ」
この規模の基地としては、少し大きな建物に入る。
「誰か明かりはあるか?」
「隊長ここにライトが2個ありまっせ」
「点けろ」
二筋の光が前と後ろに伸びる。
ここからは、サブマシンガンを前に、ボルトアクション、拳銃の並び順で進む。
「音を立てるなよ」
ゆっくり、ゆっくりと廊下を進む。
さっきの突撃のせいか、部屋はドアが空いていて、誰もいない。
やがてT字の廊下に差し掛かった。
「クリアリング」
サブマシンガンを持ったポイントマンが、T字に近づく。
パイをカットするようにクリアリングする。
「クリ.........」
号令は発砲音と共にかき消された。
「敵襲!」
先頭の撃たれたポイントマンを引き込んで、壁に隠れる。
射撃も同時に止んだ。
「手榴弾はあるか?」
「一つだけ」
「それ以外は?」
「発煙弾が3つ」
「発煙弾と手榴弾をくれ」
後ろから、発煙弾が手渡される。
ピンを抜いて投げる。
ボシュ!
煙を吐いて煙幕を張る。
「手榴弾」
続いて手榴弾を投げる。
爆発音が響き、衝撃波が襲う。
「走れ!走れ!走れ!」
機関銃陣地は手榴弾で破壊できたようだ。
「よし、武器庫を探すぞ」
武器庫を目指して進む。
どんどんと奥に進んだ時、鉄格子の付いた区間を見つけた。
「隊長、あそこだけ警備が厳重です」
「誰か、夜眼鏡かなにか持っている者は?」
「ここに」
名乗りをあげた者を守るように、全集を警戒する。
「体長、ここが武器庫みたいです、沢山の武器、弾薬に装甲車までありますよ」
ここが武器庫で間違いないようだ。
「発煙弾は?」
「残り2つです」
「狙撃して、ある程度人数を減らしてから、発煙弾を投げて突撃だ」
スコープ付きのボルトアクションライフルを陰に隠して狙撃させる。
「撃て」
命令と同時に、3発の銃声が響く。
「発煙弾!!」
後ろで待機していた2名が発煙弾を投げる。
「第492小隊突撃!!」
雄叫びをあげて全員が走る。
マシンガンの火線が交差する。
「覚悟しやがれぇぇぇぇ!!」
一人撃たれた。
「まだまだぁ!!」
太ももを撃ち抜かれても、なんともなかったように走る。
敵も一人二人と倒れる。
激しい消耗戦だ。
「着いた!!」
一人が武器庫の扉にへばりついた。
下にいる敵はあらかた片付けるも、吹き抜けの上階からマシンガンが十字砲火する。
「ああ」
動きが鈍った隙を狙って撃たれる。
一人また一人。
「こなくそ!!」
サブマシンガンを上階に放つ。
軽い発砲音が連続して響く。
1門のマシンガンが止まった。
「あと1門だ!撃て!撃て!」
今いる全員がマシンガンに向かって撃つ。
どこかに当たったのかマシンガンが沈黙する。
「さあ武器を調達しよう」
満身創痍の第492小隊が武器庫に入る。
「医薬品をメインに集めろ!」
「負傷者の手当てが先だ!」
武器庫には、武器、弾薬の他に医薬品や食料品も揃っていました。
「みんなご苦労だ、しばしの休憩の後、ここから脱出して東の海岸まで装甲車で行こう」
そこからは、消耗した弾の補充や、武器の交換など各自で装備を整える。
「ふう」
アドレナリンが引いたのか、みんな床に寝転んだ。
「少し寝よう」
そのまま寝息を立てて寝てしまった。
腕時計の針が時を刻む。
どれくらい経ったのか
みんなが起き始めた。
「よし、出発しよう」
2台あった装甲車に分乗してゲートから出る。
「帰れる、帰れる」
しばしの沈黙が走った。
車は尚も走り続ける。
ボン!!!
突如前から爆発音が聞こえたかと思うと、前を走っていた装甲車が爆発して宙を舞った。
「なんだ!!」
周囲からの銃声は聞こえない。
「地雷だ!」
車を走らせる。
前を走っていた車に乗っていた数名はもう助からない。
「あれ、前が」
後ろに乗っていたエドは目の前が霞むと、意識が遠のいた。
「ここは」
朝日がエドの顔を照らした。
「起きたか」
そこには朝日を浴びて清々しい隊長の横顔が見えた。
「みんなは?」
「船内にいるぞ、さあ、会いに行こう」
エドは立ち上がって船内に歩き出した。
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