屠龍の改修
「リク!例のものは大丈夫だったか?」
「もちろん!」
そこは、飛行場に併設された飛行機用のドックだった。
「それじゃあ、機体の改修に取り掛かろう」
エドと陸は木箱から、四角い金属製の機械を取り出した。
「そのまま、落とさずにー、ゆっくりー、ゆっくりー」
ゆっくりと横移動して、機体の下部まで持ってくる。
「ありがとう、リク」
小型のジャッキに乗せる。
「エド、俺は飛行場のスタッフと話してくるから、なにかあったら呼んでくれ」
「分かった」
そして、陸は入り口の近くにいたスタッフと話す。
「さて」
エドは機体のカバーを外す。
ジャッキを上げて機械を持っていく。
「配線はどこかなっと」
金属製の箱から伸びている配線を、機体の中に伸ばしていく。
「後は、このディスプレイを、コックピットにっとな」
コックピットに伸びている配線の先を持っているディスプレイに取り付ける。
「後は、この穴にはめる」
見事測ったかのように空いた穴に持ってきて、ボルトとナットで留める。
「よし」
ガタつきが無いか調べて完成。
「次は何かあったかなー」
エドはしばしの間考える。
「あ、そういえば機内に積んであるあの包みはなんだろうか」
エドは機内に戻って包みを開く。
「こりゃあ、40ミリ機関砲じゃないか」
それをしばしの間見つめる。
「リクに聞いてみるか」
「ヘイ、リク!」
陸は名前を呼ばれる。
「ああ、直ぐ行くからまってろエド」
飛行場のスタッフと話していたのを切り上げ、
愛機の屠龍に向かい駆ける。
「リク、武装だが、前面の20ミリを40ミリに換装する代わりに下面の20ミリを外すが、それでいいか?」
「それでいい、やってくれ」
「了解」
「それと空気の取り入れ口だが、もう少し改良はできないか?どうにも調子が悪くてな」
「もちろんできるぞ、その代わり飛べるまで時間が掛かるがそれでいいか?」
「いくらでも時間は掛けて良い、しっかりやってくれ」
「了解だリク」
陸は街に買い物に行った。
「さて、取り付けていくぞ」
まずは、機内にある40ミリをドック備え付けのクレーンで引き出す。
「さて、傷つけないように、そっと置いてとな」
取り出した40ミリを台車に乗せる。
「次は20ミリを取り出して」
20ミリを固定している部分を取り外し、別の台車に乗せる。
「この取り出した20ミリは売って良いな」
置いておいても邪魔なので、エドは武器商人に連絡を取る。
「商人が来るまで少し休憩っと」
エドは私物の中からコーヒー豆袋やコーヒーの器具を取り出した。
「この前焙煎しておいて良かった〜」
小さなコンロに火を入れ、薬缶にある水を火に掛ける。
「次は豆だ」
慣れた手つきでコーヒ豆をミルで細かく細かく挽いていく。
「よし、これくらいで良いかな」
底に小さな穴が一つ空いた円錐形に、フィルターと挽いた豆をセットする。
沸いたお湯を少しかけて蒸らす。
「後はスーっと」
30秒くらい蒸らした後に、湯だまりができるくらい注ぐ。
「できたかな?」
後は円錐形を外して、サーバーで軽く混ぜる。
「できた!」
後はカップに移す。
「では」
一口。
「んん、やっぱり美味しい!」
エドはゆっくりとコーヒーを堪能する。
最後まで飲み切って、使ったものを洗って干す。
「そろそろだ」
「どうも、20ミリの買取に参りました」
商人がやってきた。
「買取ですね?まずは見積もりからさせていただきます」
商人が20ミリを丁寧に見ていく。
「大体これくらいで良いでしようか?」
見積もりの終わった商人が金額を提示する。
「ふむ、これくらいが妥当か」
エドは契約書にサインして代金を受け取る。
「まいど、この先気を付けろよ」
「ありがとね」
それからは40ミリの取り付けや、各部の検査に修復をしていく。
「終わり!!」
それからエドはゴロリとふて寝したり、工具の整備をして時間を潰す。
「リク遅いなぁ」
少し時間が経った後、陸がすっ飛んで帰ってきた。
「エド!あと一人だけ屠龍に乗るか?旅に出たいと言っている人がいてな」
「ほんとに!?」
エド困惑。
「ああ、本当だ!機関砲の装填手にする!」
「それならまあ、少し削れば入れるな」
「よし、直ぐにやってくれ」
エドは板を切ったり削ったりして、人一人が入れるくらいの空間を空ける。
「結構空けられるな」
陸は荷物の搬入を始めた。
その晩、操縦手の陸だけ宿に泊まり、エドは夜通し作業とチェックをする。
「よし、あとは後手になった40ミリの試射を」
エドは、格納庫の一角にある、大きな防音室に穴が空いた場所に機体を配置して、40ミリの試射をする。
「よし、これでいい」
それから操縦桿を動かしたりする。
「うん、これで良さそうだ」
エドは疲れからか、近くの椅子に座り込んで寝てしまった。
翌朝、まだ暗い時間帯に起き出す。
「んあ、寝てた」
エドは椅子から立ち上がって、ジェームズを待ちつつ最終の点検に入る。
陸も起きてきた。
エンジンを回し始めて暖気運転を始めた頃にジェームズは来た。
「陸さん、こんにちはよろしくお願いします」
「ああジェームズよろしく、そしてこっちがエドだ、整備士と後方機銃担当だ」
「エドさん、よろしくお願いします」
ジェームズがエドに挨拶する。
「ああ、よろしくジェームズ、では機体に乗り込んでもらって」
機体のことから、さまざまな注意事項をエドがジェームズに教えている間に、陸は荷物の整理整頓を始め、機体に詰める。
それも終わると、エド、ジェームズ、陸の順番で屠龍に乗り込む。
「よし、いいぞ外してくれ」
飛行場のスタッフが屠龍の車輪止めを外す。
格納庫から、滑走路に出ると、端の方で一度止まった。
次の時にはプロペラを回して勢いよく滑り出す。
爆音正しくエンジンとプロペラが轟音を立てて気持ちよく回る。
やがて、後輪が上がり機体全体も空にあがった。
空の上、しばらく機体が安定するまで飛行を続ける。
やがて3人が水の入った容器を持つ。
「では、新しい仲間のジェームズに乾杯」
金属容器を鳴らして、中の水をあおる。
そして次の街を目指し、愛機と共に進む。
銀翼の旅路 ESMA @ESMA1456K
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