師匠の話(1/2)

ある国の飛行場で、陸は師匠に聞いてみた。


「師匠は、なぜ旅に出たんです?」


「そろそろ、知りたくなって来ると思ってね、少しまとめて見たんだよ」


特段、驚きもせずに話す。


「師匠、それ本気です?」


「ああ、本気だとも」


「師匠にしては珍しいですね」


そうして、師匠は拳銃の整備の手を止める。


「何か言った?」


ニコニコの笑顔で陸に問う。


「いえ、何も」


「ならいいや、このノートに書いてあるから、読みたくなったら読んでくれ」


「貰っておきますね」


「うん、それじゃあ、話し始めるかね」


師匠は、自分の過去について話を始めた




「よし、ブリーフィングはここまでだ、あとは格納庫に行って少し説明を受けて、飛行機に

乗り、二から三門ほど敵の榴弾砲を破壊して帰れば英雄だ、健闘を祈るぞ諸君」


教官らしき男が、教壇から降りる。


「ついにこの時が来たな海!」


妙にデカい男が海と呼ばれた男の背中を、デカい手でバンバン叩く。


「俺は海じゃない!漣だ!」


「だから、漣は呼びにくいんだよ、海で良いじゃん」


男が反論する。


「俺にだって、しっかりとした名前くらいあるんだぞ」


「分かってるって、ほら行くぞ」


「へいへい」


生返事をしながらも、足取りは軽い。


「ところで、今回は何の機体に乗るの?特に説明なかったけど......」


そう、隣の男に聞く。


「どうにも整備隊の話によると、『400番から550番機としか聞いてない』とな」


話の中身は、すっからかんだ。


「400番機?普通は、『飛龍』とか『長鯨』とかの名前だろ?」


「今回の作戦にはそれらの機体も参加するけど、俺たちの乗る機体は実験機らしい」


「空中で分解しなきゃ良いけどな」


漣が渋い顔で言う。


「あの時の事故か」


「それで僕は、肋と肋骨を折ったんだよ」


少し怒り気味に語る。


「あの後、設計者は自分の設計で負傷者が出たことに負目を感じて、研究所を退職したんだろ?」


「僕に謝罪の一言もなしでな!」


完全に怒っている。


「わかったから早くしろよ置いて行くぞ?」


「ああ!もう!やってやらぁ!」


「行くぞ」


飛行場に着き、そこに並べてある機体を見る。


「なんだよ、あれ」


そこには、見たこともないような形状の機体と、ウェポンベイには爆弾に似た何か、だが先端が細い棒が両翼に合わせて4本あった。


「あれは、なんだ?爆弾にしては長細いが、機銃にしては銃身が短いぞ?」


そこに、教官がやってきた。


「諸君、初めての機体に装備、驚くのも無理はないが、昨日ここに運んで来たばかりでな、訓練なしのぶっつけ本番でやってもらう」


衝撃の事実が告げられる。


「そんな!!訓練ナシでどうやって!」


所々から不満の声が漏れる。


「まあ、落ち着け簡単に説明しよう」


教官は、前のボードに貼ってある三面図とコックピット内の図を指した。


「まず操縦桿はいつも通りの形状だが、武装に新しくロケット弾が搭載された」


「ロケット弾って......あの開発中のロケット弾のことですか!?」


「そうだ、今回新たにそれが追加された」


ロケット弾の図を指さして説明を始める。


「こいつは、狙った目標に向かって飛翔し、目標に着弾すると爆発する」


「つまり、飛んでいる敵機も落とせるんですか!?」


みんなからの期待の視線が一気に教官に集まる。


「残念ながら、目標に追尾する機能自体は、机上の設計にあるがとても実用には使えないポンコツだ」


「つまり、ただまっすぐに飛ぶだけですか?」


「そうだ、もう質問はいいか?」


みんなシンと静まりかえる。


「次だ、照準器のレティクルが少し変わった」


「少しって?」


「新たにミサイルの照準も加わったが、機銃となるべく同じように照準できるようにしてある」


「..................」


さっきの勢いが失われたかのような沈黙が走る。


「あとは実際に飛んでもらおう」


右手を挙げて、スタッフたちを呼ぶ。


「いつものバディで指定された番号の機体に搭乗するように」


それぞれ、飛行場のスタッフに連れられて機体に近寄る。


「海、操縦よろしく!」


「そっちこそ、しっかりと敵機を落としてくれよ?」


「俺に任せとけって」


二人は仲良く同じ機体に乗り込んだ。


そのまま離陸の手順を進める。


滑走路へと走り出して一度止まる。


「いくぞ!奴らに一発お見舞してやれ!!」


勢いよく機体が走り出して、ふわりと機体が空に上がる。


それから、編隊を組んで長い長い道のりを進み始めた。

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