師匠の話(1/2)
ある国の飛行場で、陸は師匠に聞いてみた。
「師匠は、なんで旅に出たんですか?」
「そろそろ、知りたくなって来ると思ってね、少しまとめて見たんだよ」
「師匠、それ本気です?」
「ああ、本気だとも」
「師匠にしては珍しいですね」
そうして、師匠は拳銃の整備の手を止める。
「何か言った?」
「いえ、何も」
「ならいいや、このノートに書いてあるから、読みたくなったら読んでくれ」
「貰っておきますね」
「うん、それじゃあ、自分のことを話すかね」
「よし、ブリーフィングはここまでだ、あとは格納庫に行ってすこし説明し、飛行機に乗って、二から三門ほど敵の大量にある榴弾砲を落とせば英雄だ、健闘を祈るぞ諸君」
教官らしき男が、教壇から降りる。
「ついにこの時が来たな海!」
「俺は海じゃない!漣だ!」
「だから、漣は呼びにくいんだよ、海で良いじゃん」
男が反論する。
「俺にだって、しっかりとした名前くらいあるんだぞ」
「わかってるって、ほら行くぞ」
「へいへい」
生返事をしながらも、足取りは軽い。
「ところで、今回は何の機体に乗るの?特に説明なかったけど......」
そう、隣の男に聞く。
「どうにも整備隊の話によると、『400番から550番機としか聞いてない』とな」
話の中身は、すっからかんだ。
「400番機?普通は、『飛龍』とか『長鯨』とかの名前だろ?」
「中にはそれらの機体もあるけど、今回のは実験機ぽいな」
「空中で分解しなきゃ良いけどな」
「あの時の事故か」
「それで僕は、肋と肋骨を折ったんだよ」
少し、怒り気味に言う。
「あのあと、設計者は自分の設計で負傷者が出たことに負目を感じて、研究所を退職したんだろ?」
「僕に謝罪の一言もなしでな!」
「わかったから早くしろよ置いて行くぞ?」
「ああ!もう!やってやらぁ!」
「行くぞ」
飛行場に着き自分の乗る機体を見る。
「なんだよ、あれ」
そこには、見たこともないような形状の機体と、ウェポンベイには、爆弾に似た何かだが先端が細い棒が両翼に4本ありました。
「あれは、なんだ?爆弾にしては細いが、機銃にしては銃身が短いぞ?」
そこに、教官がやってきた。
「諸君、初めての機体に装備、驚くのも無理はないが、昨日ここにきたばっかりでな、訓練なしでぶっつけ本番でやってもらう」
「そんな!!訓練なしでどうやって!」
所々から不満が漏れる。
「まあ、落ち着け簡単に説明だけしよう。まず操縦桿はいつも通りだが、武装に新しくロケット弾が搭載された」
「ロケット弾って......あの開発中のミサイルですか!?」
「そうだ、今回新たにそれが追加された。こいつは、目標に向かって飛翔する」
「つまり、敵機も落とせるんですか!?」
みんなからの期待の視線が一気に教官に集まる。
「残念ながら、目標に追尾する機能は机上にあるがとても実用にはできない」
「つまり、ただまっすぐに飛ぶだけですか?」
「そうだ、もう質問はいいか?次だ照準器の照準が少し変わった。新たにミサイルの照準も加わったが、機銃となるべくおんなじにしてある」
「..................」
さっきの質問がなかったかのような沈黙が走る。
「あとは実際に飛んでもらおう。いつものバディで指定された番号の機体に登場するように」
それぞれ、飛行場のスタッフに連れられて機体に近寄る。
「海、操縦よろしく!」
「そっちこそ、しっかりと敵機を落としてくれよ?」
「俺に任せとけって」
二人は仲良く同じ機体に乗り込んだ。
そのまま離陸の手順を進める。
滑走路へと走り出して一度止まる。
「いくぞ!奴らに一発お見舞してやる!!」
勢いよく走り出して、ふわり、と機体が空に上がる。
それから、長い長い道のりを進む。
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