四〇粍の出所

「師匠、さっきの国で燃料補給をしたのはいいけど、あの重いものはなんですか?」

「あれかい?さっきの国のとある組織から、頼まれて、次の国まで輸送してるんだよ」

「ふーん」

そうして、陸は前方に視線を戻すと、遊び半分に銃架を右往左往させる。

「陸、しっかり見てなよ?」

「わかってるって、師匠!」

また、右往左往する。

「暇だな」

その時、キラッと光るものが空に見えた。

「ん?」

目をよく凝らしてみる。

「んー?」

しかし何も見えない。

「陸?」

師匠が言う。

「師匠?」

陸が言う。

陸はまだ目を凝らしている。

「は!!敵機発見5時の方向!」

「陸、このまま加速して振り切るから後方は頼むよ」

「ガッテン承知のすけ!!」

爆発的に加速すると、一気に高度を下げて速度を上げてアクロバティックな軌道を描いて飛ぶ。

「師匠!師匠!持ちません!機体が持ちません!あああ!みしみしいってる!」

「陸!!少しその口だまれ!」

幸いというべきか、後ろからの銃撃はありませんが、敵機はついてきます。

「陸!!今回は『貨物』を使うぞ!準備しろ!」

「なに!?『貨物』だって!?それをどうしろと!?」

「撃つんだよ!!ばか!ちゃっちゃやれ!」

「やってやるよ!!あほ!」

そして、一旦銃座から離れると、貨物の布を外す。

「こりゃ......四〇粍じゃねえか、どこからこんなもん...」

「陸!早くやれ!」

陸は、無視して黙々と射撃の点検をする。

「よく整備されてるな、すぐに撃てる」

「陸!!早く!!」

「よし!できた!!」

そして、陸はよく狙って引き金を引きます。

「外れた!」

初弾は、外れました。

もう一発。

今度も外れましたが、掠りはしました。

「最後だよっと!!」

これが、3発目、最後の弾です。

少し左にズレて、見事左の尾翼付近に着弾、そのまま根元を引きちぎり両方の尾翼が完全になくなる。

「やったぞ!!」

そのまま敵機は錐揉み回転して落ちていく。

「陸、よくやった」

「師匠、早く次の国に行きましょう」

「うん、あの一機とは限らないからね」

やや早く機体を飛ばして、次の国まで舵をとる。

「師匠、さっき手抜いてましたよね」

「陸、君は元パイロットだよね、なら分かるか」

「ですね、師匠」

「うん、ほんとはあの敵、自分が本気を出せば数秒で落とせたんだよ」

「ならなんで......」

「その四〇粍、たぶん未使用品だよ、それを担保に借金を返してたんじゃないかな」

「なら、なんで」

「うーん、気分?それに四〇粍重かったから少しでも重さ減らしたくてね」

「これは相当怒られるぞ......」

「陸、さっさと次の国に行こう」

それからは、敵襲もなく順調に航路を消化していく。

そして、数時間飛ぶと次の国の滑走路が見えてきました。

「陸、弾をありったけ後ろに持って、すぐに装填できるようにしておいて」

「師匠、なんで」

「すぐに分かるはずだよ」

「............?」

陸は、怪訝な顔をしながらも銃座近くに弾を持っていく。

師匠の神技で、あれよあれよというまに、滑走路に降り立つ。

エンジンはそのままにして、師匠はコックピットから降りて、近くにいた男に近寄る。

「師匠、何話してるのかな」

師匠がしばらく話していると、こっちに近づいてくる。

師匠の腕が下に動いた。

『自分、下、3秒、撃て」

指でそれを素早く陸に向けて伝えた。

一瞬、陸は意味がわからなかったものの、師匠の言いたいことがわかり、銃架にある機関銃を装填する。

師匠の指が動いて、3の指をする。

2、1。

師匠が下にしゃがむと同時に、男たちのほうへ銃口を向けて横に薙ぐように撃つ。

数十人いた男達の内、数名が弾に当たり、弾ける。

そのまま陸は撃ち続けると同時に、師匠がコックピットに走り、暖機運転だったエンジンをフル回転させて離陸の用意をする。

タイヤ止めはあったものの、低かったのでそのまま乗り越える。

サイレンが鳴り響いて、格納庫から、敵航空機が続々と出てくる。

「陸、しっかりやってくれよ」

「当たり前よ!!」

そして、離陸前の敵機を次々撃つ。

それもすり抜けてきた敵機は師匠が屠り追撃をかわす。

「陸、これで全部か?」

「そうみたいですね師匠」

「よし、陸このまま次の国で弾と燃料を補給しよう!」

そうして、師匠と陸は次の国まで飛んでいく。


終わり

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