陸は見た

陸は、荒野を歩いていた。

「あつい...」

何回目かもわからないほど、連呼する。

歩いていくと一瞬、何かが見えた。

それを虚な目で見ながらさらに歩く。

すると、また何かが見えた。

今度は陸も見えたらしく水を一口飲み、力を振り絞って思いを込めるように、拳銃のスライドを目一杯引いた。

「くるなら来やがれ」

相当、暑さでやられていますがそんなことは気にせず、気配を消して歩く。

砂丘を少し超えたあたりで、それは見えた。

「屠龍四型!?なんでこんな場所に!」

そして、さらに近づくと人が、人が見えてきた。

しばらくそこで観察していると、その人は機内に入っていった。

「よし、いまだ」

砂を蹴って走る。

その時、屠龍四型の前面から火が吹いたと思うと耳の横で空気が揺れました。

「なっ!」

そして、さらにもう1回。

陸は、やっと撃たれていることに気づきました。

陸は、負けじと引き金を絞るが相手の方が数倍の密度で撃ち返してくる。

肩に、足にと、次々撃たれて力無く押し戻される。

「もう、ダメだ...降参だ...」

撃たれている中で弱々しく白旗を掲げた。

すると、すぐに銃撃が止んでコックピットから長物を持った男が、コックピットから降りてきました。

体のシルエットは細いながらも、自分より少し背が高く若いパイロットだ。

「君、名前は?」

「小林陸だ」

そっけなく返す。

「陸か、良い名前だね、君はどうしてここにいるのかな?」

「.........国外追放だよ」

「...何をしたのかな?」

「.........命令無視だよ」

「君は、元兵隊かな?」

「航空兵だ」

「それじゃあ、腕はいいんだね?」

「隊の中では負けなしだったがな」

「なら、自分と旅に出てくれないかな」

「旅!?」

「あれを操縦してくれるだけでいいんだ!!」

「見るに、屠龍だよな」

「ああ、あれは僕のお爺さんの、ずっと受け継がれて来た機体なんだ」

「そんなに長く......」

「大丈夫かな」

「見てみないとなんとも言えない」

「見てくれるんだね!?」

「ああ、見るだけだ」

「ありがとう!ありがとう!」

そして、屠龍に近づく。

「あんた、そういえば名前は?」

「僕は、リンゴ、この先をずっと行った国から来た」

「林檎か、いい名前だ」

「君はそう言ってくれるのか、ありがとう」

「ところで、この屠龍よく飛んだな」

「簡単に飛んだけど何かあったの?」

「ところどころ、穴や、歪みに、エンジン内部の汚れ、破損、フラップやラダーにエルロンの整備不良、上げたらキリがない」

「そんなに酷いのか?」

「むしろ、どうやって使ってたのか知りたいくらいだ」

「だから!だからあそこで、落ちたのか」

「それは薄々気づいてた」

「直せるのか?」

「修理キットと少量の資材があれば応急処置や、ごまかし程度ならできる」

「じゃあ、やってくれ」

「資材は、さっき落ちてた航空機から、鉄板を剥ぎ取って使う」

そうして、リンゴは資材、陸は整備を始める。

鋲を取ったり、壊したりして鉄板を地面に置いていく。

「陸、これくらいあれば足りるかな」

「きっと、足りると思う」

そうして、陸とリンゴは、一所懸命に切ったり、貼ったりして直していきます。

数時間後には、見た目は少し不恰好ですが本来の力の三分の一くらいまで取り戻せました。

「ありがとう、陸」

「ああ」

「ところで陸、この先目的地とかあるのか?」

「自分は、この先にある国に行こうと思う」

「あそこの国かい?やめた方がいいよ」

「......なんで?」

「自分が国を消したから」

「消したって!国を?」

「うん、滑走路や首都に、軍事施設全部ね」

「どうやって?」

「普通にこの、屠龍で、バババッ!と撃ってドカンと」

「.........狂ってる」

「ん?何か言った?」

「いえ、なにも?」

「ああ、そうならいいんだけど」

「それより、旅に連れてってくれるって」

「あああ!そうそう!一緒に旅に出てくれる?」

「もちろん!ここにいても倒れるだけだからね」

「それじゃあ、しばらく後方の銃座にいてもらおうかな」

「喜んで!」

陸は半ば、逃げるように座席に座る。

「それじゃあ、離陸かな」

そして、砂の上をぐんぐんスピードを上げる。

「よし!足回りをスキーにしたから上手くいったぞ!」

「このまま、次の国にいくぞ」

「燃料は?」

爆音に負けじと、声を張り上げる。

「足りない!!」

拙い返事が返ってくる。

「......大丈夫かよ」

「何か!!?」

「なにも!!」

そうして、次の国に向かい飛んでゆく。


終わり

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