陸は見た
陸は、荒野を歩いていた。
「あつい...」
何回目か分からないほど連呼する。
「あつい」
トボトボと砂地を歩くも、止まる。
「ああ」
水を一口飲もうとして、水筒を出す。
その時、視界の端でにキラッと何かが見えた。
それを虚な流し見ながら水をキャップに注ぐ。
感覚が麻痺して、陸は気付かない。
すると、また何かが見えた。
今度は陸も見えたらしく水を一口飲んだ。
拳銃を取り出し、思いを込めるように、拳銃のスライドを目一杯引いた。
弾倉から、初弾が送り込まれる。
一応セーフティーは掛ける。
「くるなら来やがれ」
かなり暑さでやられているがそんなことは気にせず、そこに向かい走った。
砂丘を少し超えたあたりで、それは見えた。
「屠龍四型!?なんでこんな場所に!」
驚きつつもさらに近づく。
近づくと、飛行機を直している人が見えてきた。
しばらく機体正面の砂丘に隠れて、そこでその人を観察する。
その人は工具などを置いて機内に入っていった。
「よし、いまだ」
砂を蹴って陸は走る。
その時、屠龍四型の正面から火が吹いた。
と、思うと耳の横で空気が揺れた。
「なっ!」
さらにもう1回。
陸は、やっと撃たれていることに気づいた。
陸は、負けじと拳銃の引き金を絞るが、相手の方が数倍の密度で撃ち返してくる。
肩に、足にと、幸い当たらなかったが、掠った。
痛い。
「もう、ダメだ...降参だ...」
撃たれている中で弱々しく拳銃を捨てて両手を挙げた。
すぐに銃撃が止んでコックピットから長物を持った男が降りてきた。
体のシルエットは細いながらも、自分より少し背が高く若いパイロットだ。
「君、名前は?」
遠くから聞かれる。
「小林陸だ」
そっけなく返す。
「陸か良い名前だね、君はどうしてここにいるのかな?」
「.........国外追放だよ」
陸の近くに近づいてくる。
「何をしたのかな?」
「.........命令無視だよ」
「君は、元兵隊?」
「航空兵だ」
「それじゃあ、腕はいいんだね?」
念を押すように聞く。
「隊の中では負けなしだったがな」
「なら、自分と旅に出てくれないかな」
「旅!?」
「あれを操縦してくれるだけでいいんだ!!」
「見るにその機体、屠龍だよな」
「そうだよ」
「やっぱり、でもなんでここに、ずっと昔に無くなったんじゃ?」
「あれは特別で、僕の、ずっと受け継がれて来た機体なんだ」
「そんなに長く......」
「大丈夫かな」
「見てみないとなんとも言えない」
「見てくれるんだね!?」
「ああ、見るだけだ」
「ありがとう!ありがとう!」
「あんた、そういえば名前は?」
「僕は、リンゴ、この先をずっと行った国から来た」
「林檎か、いい名前だ」
「君はそう言ってくれるのか、ありがとう」
「でも、その名前嘘だろ?」
「............」
「まぁ、名前を隠すならそれ相応の理由があるんだろ?」
「そうだよ、本当の名前は楓だ」
「別に偽名でも良いんだがな」
陸は漣から屠龍に視線を移しまじまじと機体を見る。
「ところで、この屠龍よく飛んだな」
「簡単に飛んだけど何かあったの?」
「ところどころ、穴や、歪みに、フラップやラダー、エルロンの整備不良、上げたらキリがない」
「そんなに酷いのか?」
陸は、エンジンの中も見る。
「汚れに、過度な運転による劣化、オイル漏れ」
「ええ、普通に飛んだんだけどな」
「むしろ、どうやって飛んだのか知りたいくらいだ!!」
「だから!だからあそこで、落ちたのかー納得納得」
「それは薄々気づいてた」
「直せるのか?」
「工具と少量の資材があれば応急処置や、ごまかし程度ならできる」
「やろうここから早く抜け出したかったんだ」
「資材は、さっき落ちてた航空機から、鉄板を剥ぎ取って使う」
そうして、漣は資材、陸は整備と応急処置を始める。
漣は、機体の鋲を取ったり、壊したりして鉄板を地面に置いていく。
「陸、これくらいあれば足りるかな」
「きっと、足りると思う」
そうして、陸とリンゴは、一所懸命に切ったり、貼ったりして直していく。
数時間後には、見た目は少し不恰好ですが本来の力の三分の一くらいまで取り戻した。
「ありがとう、陸」
「どういたしまして」
「ところで陸、この先目的地とかあるのか?」
「自分は、この先にある国に行こうと思う」
「あそこの国かい?やめた方がいいよ」
「......なんで?」
「自分が国を滅ぼしたから」
「滅ぼしたって!国を?」
「うん、滑走路や首都に、軍事施設全部ね」
「どうやって?」
「普通にこの、屠龍でバババッ!と撃ってドカンとして、追ってきた敵も返り討ちに」
「.........狂ってる」
流石の陸もドン引き。
「ん?何か言った?」
「いえ、なにも?」
「あそう、ならいいんだけど」
「それより、旅に連れてってくれるって?」
「ああ!そうそう!一緒に旅に出てくれる?」
「もちろん!ここにいても倒れるだけだからね」
引き攣った満面の笑顔で応えた。
「それじゃあ、しばらく後方の銃座にいてもらおうかな」
「喜んで!」
陸は半ば逃げるように座席に座る。
「それじゃあ、離陸かな」
そして、砂の上をぐんぐんスピードを上げる。
「よし!足回りをスキーにしたから上手くいったぞ!」
「このまま、次の国にいくぞ」
「燃料は?」
爆音に負けじと、声を張り上げる。
「足りない!!」
拙い内容の返事が返ってきた。
「......大丈夫かよ」
「何か言った!!?」
「なにも!!」
そうして、次の国に向かい飛んでゆく。
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