2.

(……静かね。)

 各務が図書室に現れない。これで2日目である。

 教職員用パソコンの横に貼られた学校の予定表に史紀は目をやる。

 ……修学旅行。2泊3日。

 そもそもクラスに馴染めていないであろう各務にとっては、行ったところで楽しいのかしら。

 そんなことを思ったところで、史紀は違和感に気付く。

 ……なぜ私があの子の心配をしているのかしら。

 私があの子の心配をする理由なんてどこにあるというのかしら。

 氷室が言うほど、私が思っているほど、各務はクラスに馴染んでいないわけではないのかもしれない。

 本当にクラスに馴染んでいなくても、各務なりに楽しんでいるのかもしれない。

(……いないならいないで、手のかかる子ね。全く。)

 図書室の静寂を乱す各務に自らの心さえ乱されていることを、史紀はぼんやりと感じ取っていた。

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