◆16 鳥かごから見た空
「んぐぐぐぐ……取れねぇ!」
「ボクもさっきからロープを切ったり、燃やたりしようとしてるのですぞ。でもなんかずっと気分がわるくて、シュウチュウできないんですぞ……」
「
啓斗がぽつりと言う。
「このロープも、この鳥かごも、黒い色だ。【
「なんとかしてここから出ねーと……あっ! 目をさましたら
「それが出来たとしても、もっと
大輝の思いつきに、啓斗は首をふる。
「僕たちを
「そっか……くそー!」
お守りは今もみんなの首にさがっている。もしかしたら【悪夢の使徒】や他の人たちにはさわることができないのかもしれない。
「ごめんなさいですぞ……ボクがあの時【悪夢の木】の枝をふんじゃったから……」
「しかたねーよ、オレだって母ちゃんいたから頭まっしろになって
あおばがあやまると、大輝がロープをまた切ろうとがんばりながら言う。
「そっちのほうが、しかたないですぞ」
「だってさ、オレだってあのときもっと――」
「どっちも仕方ない! とにかく今はここから出る方法を考えないと」
啓斗の言葉で二人はだまりこむ。でも啓斗にも良い方法はうかばなかったし、あいかわらずロープはほどけない。それでもあきらめるわけにはいかなかった。こうしている間にもオキの国はもっとメチャクチャになっているかもしれないのだ。大輝とあおばがロープを切ることに集中する間、啓斗はなにかヒントがないかまわりの景色を見ていた。そして空を見上げたとき、それに気づく。
「何か空にいる! こっちに来るぞ!」
大輝とあおばも空を見た。それは日の光を浴びて七色に
「鳥だ! ――オウム? インコか?」
「……ナナちゃん? あれはナナちゃんですぞ!」
「ナナちゃん?」
『ハーイ! ナナチャン、ダヨ!』
「しゃべったぞ!」
「やっぱりナナちゃんですぞ!」
「二人とも、もう少し静かに。【使徒】たちに気づかれるかもしれない」
おどろく大輝と
「それで、あおば。このナナちゃんは何者なんだ?」
「ナナイロドリのナナちゃんですぞ。兄上が、ぼくがもっと子どものときに
『ハーイ! ナナチャン、ナナイロドリ、ダヨ!』
「それって、あさひがこっちに来てるってことか? ジミーは?」
「
「とにかく、ナナちゃんが来てくれたってことは、兄上はぼくたちのピンチを知ってて、助けてくれようとしてるってことですぞ!」
『ソウ、ナナチャン、スゴイゾ!』
ナナちゃんはダンスをしながら、みんなの顔をじっと見つめる。
『キレタラ、コウゲキ! キレタラ、コウゲキ!』
「切れたら……どういう意味だよ?」
『ヒモ! ツナ! ロープ!』
「あっ……これを切ってくれるってことか?」
「しっ、大輝!
「タイヘンですぞ! ナナちゃん、どこかにかくれるですぞ!」
あわてて大輝はだまり、ナナちゃんは近くの木の中にかくれる。耳をすますと、ぶつぶつとつぶやくような声と足音が、だんだん近づいてくるのがわかった。やがて、黒フードの集団が見えてくる。先頭にはボスと、あの体の大きな【
「ご気分はいかがですか? 【
鳥かごの前にたどりつくと、ボスが笑いながらそう言った。
「いいわけないだろ!」
大輝が
「ならば、さっさと目をさまして、オキの国に帰ればよろしいのでは?」
「そんなことできない! オレたちは神様を助けに来たんだ!」
「勇ましいことですね。元気なのは良いことですが、聞き分けのないお子さまは、
ボスがちりんと
「少し時間をおけばオキの国にお帰りになると思ったのですが、なかなかみなさましぶといので、やり方を変えることにしました。ここから少し行ったところに深い谷があるんです。そこから落としてみましょうね」
ボスの冷たい言葉に、みんなぞっとした。実際に死ぬことはなくても想像するだけでもおそろしいし、そんなことをされたらさすがに目がさめてしまうかもしれない。
「はなせ! はなせよっ!」
暴れる大輝に、啓斗はすばやくささやいた。それで大輝はおとなしくなり、三人はまるで荷物のようにかかえられ、運ばれていく。
「先ほど何か話していたようですが、もしかして、外に出れば何とかなると思っていましたか? もう試したと思いますが、そのロープでしばられている間は、あなたがたの力は満足に使えませんよ?」
それを聞き、啓斗はうつむいた。ほっとした顔を見られないためだ。その言葉は、ボスがまだ気づいていないという証明だった。啓斗はうつむいたまま、動く黒フードの足と地面を見つめる。大輝も、あおばもだまっていた。やがて少し開けた場所で、みんな立ち止まる。
「
ボスは少しイライラとした声で言う。オキから連れてこられた黒フードのひとたちは、【
「ほら、そろそろ行きますよ。【
ボスが
――すると、大輝たちをしばっていたロープが、とつぜん切れた。
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