◆13 神様をさがせ!
気がつくと、
「みんなで来たよ! 早く神様を助けに行こう!」
大輝はなるべく小さな声を出そうと思ったが、自然と力が入ってしまう。
『オキの国も大変なことになっているようですね』
【み】の守りがいつものように落ち着いた声で言った。あおばはうなずく。
「【
「こっちでの【使徒】の動きはどうなんだ?」
『それは見てもらったほうが早いかもしれません』
『まずはここを出ましょう。ここからはわたくしたちが、あなたがたが目覚めてしまわぬよう出来る限り手助けしますが、それでも時間との勝負になるでしょう』
三人は顔を見合わせ、大輝、啓斗、あおばの順に、おそるおそる草むらの外へと出る。
「
通りには誰も歩いていなかった。最初に見たときには不思議で面白く思えた八角形の家がずらっと
『まずはこのまま、道をまっすぐ進んでください。家がとぎれるあたりまでは歩いて行きましょう。何を見てもさわがないように』
【み】の守りに言われるまま、三人はきれいな
『静かに。あなたがたには、【
『これでこの街を出るまでは
その一言で、三人から一気に力がぬける。気持ちが落ち着くまでには少し時間がかかった。
「び、びっくりしたですぞ……」
「でも、ぜんぜん気づかれなかった。【い】の守りの力はすごいんだな」
「いてて、くちびる
『【悪夢の使徒】は、これからは自分たちがこの国を
【み】の守りは静かに言う。大輝がうしろをもう一度ふり返ると、さっきすれちがった【使徒】以外には
「【使徒】の数は少ないみたいだけど、そんなに強いの?」
『神が
「ネルの人は【悪夢の木】にさわれないから、神様を助けられないんだっけ?」
『ええ。【悪夢の使徒】たちが【悪夢の木】を利用して神を
「でも、どうやって神様を
大輝の言葉を聞いて考えていた啓斗が、顔をあげる。
「そうか。
【み】の守りは『はい』と言った。
『オキの人々を
「で、でも、そんな強い木を、ボクたちだけでこわせるのですぞ?」
『あなたがたには、
いつの間にか家がとぎれ、先には野原が広がっているのが見えた。 【み】の守りは、少しさびしそうに言う。
『【ひ】の守り、あとは
『おう、
「もしかして、力を使うんですぞ!?」
『ええ。わたくしの力で、神の居場所がわかるようになるでしょう。あおばさん、あなたがみなさんを導くのです。少しの時間だったけれど、いろいろとお話しできてよかったわ。お兄様とこれからも仲良くね』
「も、もう少し待ってほしいですぞ!」
お守りをあわてて手に持ち、声をふるわせるあおばの目の前で、白い光が
『
白い光はやさしく、
「おまもりさん……」
あおばはお守りを持ったまま、
「……と、とにかくがんばって神様を助けますぞ!」
『おう、その
「【ひ】のお守りさん、ありがとうございますですぞ!」
大輝と啓斗にもあおばの悲しみは伝わってきたが、急がないといけないのも確かだった。
「あおば、【み】の守りはネルの神の居場所がわかるようになるって言ってたけど、わかるか?」
「えっと……」
啓斗に聞かれてあおばは少し考え、それからあたりを見回すと、小さく声をあげた。
「あの草が光っているですぞ!」
「どの草だ?」
あおばの指さす方に目を向けても、他の二人にはどれも同じようにしか見えない。
「でも、わかったですぞ! あれが、神様のいる方向ですぞ!」
「そうか、それが【み】の守りの力なんだな」
「よし、早く助けに行こうぜ!」
それから三人は、あおばが見つける光る草を目印に、草原を走る。急ごう、急ごうと思うと足はどんどん速くなり、景色がどんどんうしろへと流れていく。
「次はこっちですぞ!」
これだけ走り続けているのに、ただ走っているだけなら体も
とちゅうでまたいくつかの町の近くを通った。どの町でも【悪夢の使徒】たちが見張りのように立っていたが、走る大輝たちを見ても、何事もなかったかのように目をそらす。自分たちがまるで目に見えない風になったような、不思議な気分だった。
そのまま三人とも風のように走って、走って、やがて、黒くもぞもぞと動くものが道の先に見えてくる。――それは、黒いフードをかぶった人たちの集団だった。黒フードの人々は広場の中でバラバラに、あちこちの方角を向いて地面に
『止まれ!』
【ひ】の守りが小さく言う。三人はすぐに足を止めた。
『気づかれねぇよう、なるべく静かに通りぬけるぞ』
あおばはうなずき、だまって次に光っている草を指さした。そこへとたどり着くには、【使徒】たちが
「
近づくと、黒フードの人たちはぶつぶつとそれだけを言いながら、時々何かを投げては拾うということをくり返していた。動きはゆっくりだったし、よけながら歩くのもそうむずかしくはなさそうだ。もっと近づくと、投げているものは細い木の枝だということがわかる。
『まずい、あの枝には絶対当たらないように進め』
そのとき、【ひ】の守りが
それから気をつけて歩いていき、向こう側にたどり着くまであと少し、というところまで来たときだった。とつぜん枝が大きく飛んできて、三人はあわててよける。ほっと息をついたとき――パキリ、と音がする。はっとしてあおばが足を上げると、
『走れ!』
【ひ】の守りが
「いたぞ! 【
そう叫びながら黒フードの人物がふたり、木のうしろから出てくる。ふたりは絵の具で
「だまっていてもムダだ!
『ダイキ、よく聞け。
【ひ】の守りが大輝にだけ聞こえる声で言う。このピンチを切りぬけるために、力を使おうとしているのだとわかった。大輝は歯を食いしばりながらも小さくうなずく。
『ダイキ、行け! ――
言われた通り大輝は啓斗とあおばの手をつかみ、お面の黒フードたちに向かって走り出す。ピンチを切りぬけたいという強い思いがあるからなのか、
『ダイキ、神さんを
親指を立てた強そうな男の人が
びぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんんんんん――!
ピンと張った糸をはじいたときに似た大きな音があたりにひびく。そして強い風が大輝たちのまわりに生まれ、広がっていった。草木がざぁぁぁぁっと鳴り、【悪夢の使徒】たちは動けなくなる。
「このまままっすぐ行くですぞ!」
まるで石になったように動かない、お面の【使徒】たちの横を通りぬけ、あおばの指さす方へと全速力で走る。
「草の色が変わったですぞ! きっともうすぐ神様のところですぞ!」
他の二人にはあいかわらずその草は見えなかったけれど、あおばの言葉を聞いてホッとした。もうすぐ、神様を助けられる。――そう思ったとき、どん、と何かにぶつかった。
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