◆2 不思議なお守り
「確か、暗い場所で……森? 山? ええーっと、
いまは
「おーい、大輝! おはよー!」
するとうしろから大きな声で
「おはよー!」
反応がない大輝に、かっちゃんはもう一度声をかけてくる。でもいまはそれどころじゃない。ただでさえあやふやな夢の内容が、みんなどこかに消えてしまいそうだった。
「……あ、かっちゃん。おはよ」
とりあえずふり返って返事はする。かっちゃんは大きな目をさらに大きくし、大輝の顔をのぞきこんでから、ちょっと首をかしげた。
「何ぶつぶつ言ってんの?」
「今日面白い夢見たんだけどさ、どんなだったか
「へー……おれは夢って全然覚えてないからなぁ。
「オレはいつもなら結構覚えてるんだけどなぁ。今日のはすっげー面白そうだったのに」
いつもなら
「そういえばさ、大輝はアムちゃんねるって知ってる? 昨日のやつすっげー面白かった!」
そんなことを大輝が考えている間に、話題が変わっていた。
「アムちゃんねるって?」
「いま
「へぇ」
とりあえず返事はするものの、夢のことが頭から
「じゃあ、かっちゃんまたな!」
「うん、今度アムちゃんねる見たら感想聞かせて」
「おっけー! ……お、ヤマケンが
ドアを開けてすぐ、ヤマケンが
(夢に出てきたの、しゃべるぬいぐるみだったかな……? なんか
授業中もそんなことを考えながらノートのすみっこにメモする。そうするとだんだんと細かい部分も思い出せたような気になったが、今度はそれが正しいのかどうか自信がなくなってきてしまう。
「じゃーな大輝!」
「うん」
「……あいつ
あっという間に一日は終わり、そんな友だちの言葉を
「あれ?」
気がつくと、見覚えがない場所にいる。ぼんやり歩いていたら、いつもは通らない道に迷いこんでしまったようだった。あたりはだんだんと暗くなってきている。するとどんどん不安になってきて、
「あっ!」
その時、何か光るものが目に入った。街灯の明かりじゃない。通り過ぎようとした草むらの一部が、ぼんやりと光っている。不思議に思って近づいてみると、そこには変なお守りが落ちていた。
「うーん、どうしようか……」
大輝は
「これって、ひらがなかな?」
お守りの上のほうには、ひらがなの【ひ】にしか見えない
「あっ!」
急に夢の
「これだ! ぬいぐるみじゃなかった。このお守りがしゃべって……」
しゃべって。それから、しゃべって。それから……頭の中で同じ言葉ばかりがくり返される。考えがまとまらない。それは急にやってきた
『おう。ダイキ、来たのか』
ぶっきらぼうな声に
「あれ、ここは……?」
『ネルの国だ』
目の前には、あのお守り。目の
「ネルの国……そうだ! おまえは【ひ】の守りで、神様を助けてくれって
大輝が思わず大きな声を上げると、【ひ】の守りはしーっと短く言ってから目をきょろきょろとさせた。
『あまりデカイ声出すんじゃねぇよ。【
「ご、ごめん」
『
もう一度あたりを見回してみても
「じゃあこれは夢で、オレはいま
『ダイキにとってはそうなるな』
「でも、学校の帰りにお守りを拾ったのもほんとうで……」
『やるじゃねぇか! 無事、
【ひ】の守りはうれしそうな声を出す。どうやら似たお守りを拾ったというような話ではなく、夢の中と現実の出来事はしっかりつながっているようだった。
「じゃあ、神様が悪いヤツに
『だから、そうだって言ってるだろ。まずは仲間をさがせ。ネルの神さんはピンチになった時、俺様のような守りを何体かオキの国に飛ばした。俺様とダイキみてぇにもう
「そんなこと言われても……お守り同士で居場所はわかんないの?」
『居場所はわかんねぇけど、守りの【
「なんだか、いいかげんだなぁ」
『神さんも
「な、なに?」
急に名前を
「大輝!」
「だからなんだよ?」
「大輝ってば!」
「うるさいな!」
思わず大声を出すと、目の前には母の顔があった。
「うわぁっ! 母ちゃん!」
「うるさくて悪かったね! さっきから
「あっ……うん」
大輝はまだドキドキする
にぎりしめていた手を開くと、白い布に赤い糸で
「なんだか、大変なことになっちゃったぞ……」
もちろんお守りは、なにも言わない。かわりに母の
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