GWがやってきた

GW初日、5月だというのにうだるような暑さとなったせいで外に出る気力がマイナスに振り切った俺は作業通話に入りイラストを描く。


「うーん、うーーーーーん」

「どうしたんや、コロスケ君」

コロスケとは自分のHNもしくはペンネームだ、SNSにはこの名前でアップロードしている。

そして自分のうめきに反応したのはクロネコさん、同人活動を活発にしている先輩絵描きだ。

アズ『作業に行き詰まったのか?』

アズさんがチャットで反応する、アズさんは入学式の前日に作業通話に聞き専で参加していた人だ。

音声で参加したことがなくチャットでたまに反応をくれる、なにかしら創作活動をしているらしいんだが何をしているかは1年近く付き合いがあるにもかかわらず聞いたことがない。

「ちょっとこのポーズの股関節と肩周りが難しくて」

「あー外連味の効いたポーズでうまくデフォルメや嘘を混ぜないと行けない構図だからなおさら難しいわな」

「そうなんですよねぇ……人体の知識がなくて……」

「とりあず自分で写真撮って参考にするのが最初やな、そっからどう嘘を混ぜるかになる。ちょっときついポーズだけどコロスケ君は若いしいけるやろ!俺みたいなおっさんがやると身体痛めるかもしれんけどな!」

そう言ってガハハと笑うクロネコさん。そのジョーク笑うに笑えなっす……。

アズ『俺もまずは資料を調べてから作業するからな。参考にするものがあるなしではかなり違う。』

「なるほど……ちょっと撮ってみます!離席しますね!」

俺はそう宣言しマイクをミュートにするとこんなこともあろうかと買っておいた自撮り棒を取り出す。

(やはり資料を見るのは基本かつ大事なことなんだな……)

そう考えつつ自撮り棒を構えポーズを取る。

(んーもうちょい俯瞰で角度つける感じか……?首をかしげて腰を捻って……)


ガチャ

その時突然俺の部屋のドアが解き放たれた。

「こーくん!!!!!おはよーーーーーーー!!!!!!」

ポーズを撮ることに集中していた俺は突然の来訪に驚き反応できない。

「「……」」


ガチャン


5秒にも満たないはずなのに無限とも思えた見つめ合いの果てに無言でドアが閉まる。

「こーくんが裏垢女子になっちゃったあああああああああ」

「ちょっとまてひまり!!!!!勘違いだ!!!!!」

俺は慌てて追いかけひまりを捕まえると、必死の説明をするのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ポーズの資料だったら私がやろっか?女の子を描くならそっちのほうが都合がいいよね?」

説得の末になんとか理由を納得してくれたひまりはこんなことを言い出した。

確かに描くのは女の子だし、骨格からして男女差がある。そのへんは脳内で補正してある程度の参考にするに留めるはずなのだが……。

「……い、いいのか?」

ひまりは顔も可愛くスタイルもいい、そんな子がポージングしてくれるのは願ってもないことだ。

「こーくんのためなら、いいよ?でも絶対人には見せないでね?」


そうして思いがけない形で撮影会が始まった。

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