第2話 生き残る為に

※場所も時間軸も一緒ですが視点が1話目と少し違いますので混乱注意お願いします<(_ _)>

※それとは別ですが、1話同様、公開後に書き直しております(*- -)(*_ _)ペコリ



――――――――――


 彼らの気配がしなくなってからどれ位時間が経ったのだろうか?

 気を失いかけてるは力なく左手を地面に垂れている。


『必ず助けるから……』


 そう呟き、目の前に塞がる揺らめく木の壁に、右手を伸ばすとそれは呆気なく突き抜ける。


さわれないのか……、本当に危なかった』


 俺の目的はこのを生き残らせる事。

 それは頭に焼き付いてる。

 俺にとっては唯一で最も大事な存在意義だ。

 だが、同時に今の状況が全くわからなく、自分が誰なのかも思い出せ無い。

 それが不安を掻き立てる。

 それでも自分がこの身体を守らなければいけないと言う強い使命感で自身を奮い立たせながら、守るべき身体に意識を向ける。

 と、そこには朦朧した意識で痛みに耐えるている姿が有り、途端に強烈な恐怖が襲って来た。

 をこれ以上苦痛にさらす理由わけにはいかない。

 そう思って彼女の意識への眠らせる事にした。

 ただそれでも、まだ僅かな意識が痛みを感じてしまうかもしれないと、拭えない不安から眠らせる薬を精製して彼女の中に流し込む。

 そして、それに合わせるように目の前の洞を隠す壁が溶けるように消失した。


『彼女の力?だめだ、クラクラする……自分は誰?』


 ふと前に突き出した右手が目に入る。


『右手……変な手だな……』


 思考が曖昧で意味の無い妄想の迷路に嵌まりそうになる。


『!!だめ、しっかりしなければ!移動しなきゃ……戻ってくるかもしれない……』


 眠気に襲われて居ると同時に、無理に意識を保とうと耐えるようなそんな曖昧な意識で、それでもここに居続けるのは危険だと本能が告げる。

 洞から抜け出した俺はを全て包めてる事を確認してから川に沿って登って行く事にした。



 どれ位の時間歩いただろうか、少なくとも数時間は歩いた気がする。

 それでも安心できずに今だ足を止める事が出来ないでいた。

 所々の通れ無さそうな場所はで無理やり身体を引っ張り上げてなんとか進んで行く。

 暫く川に沿って登っていると、先ほど隠れていた木の倍はあろうかという大木が力強くそびえ立っていた。

 しかも、その大きな木にも洞があったので、取り敢えずそこに腰を下ろした。


『うぅぅ……』


 ここまでなんとか逃げるて来ることができ、安心してしまい一気に意識が薄れていく……ダメダこのまま意識を手放したら。


 俺は急いで身体を確認して、繋がって無い血管の代わりにで繋がりを作り、弱ってる心臓の代わりに偽物の心臓をの俺の体内に作り、その他の色々部分の傷口は保護するように分厚く覆う。

 そこまでやって、やっと安心して意識を手放した。



『……んんっ』


 ゆっくりと酩酊した思考の中に目が覚め、その酩酊を振り払うように強く眉間辺りに力を入れ意識を回復させようと……。

回復?いや違う!そうじゃない!

なんだここは?

 次第にはっきりして来た意識に、今初めて本当の意味で自身を認識できた。

自我……を?


『お、俺は……!』


 はっとして自分の体に視線を落とし、その中に透けて見えている身体に意識を向ける。


『やばい!大丈夫だよな?!何日経った??』


 分からない、ただ言える事は数時間って事は無さそうだ。

 確実に数日は経っている。

 なにせ意識を失う前よりも血色が悪く、やつれて居たからだ。

 修復再生の術式が動きっぱなしなのも原因な気がして一旦それを止める。


 まずは己の体を理解し、与えられた指令をしっかりと把握する事にした。

 この体は魔力で出来ているようで、体積が許す限りは自由に動かせて長く伸ばす事もできる。

 守るべき身体の生命維持は、組み込まれた術式で無意識化でも自然に行えるようで、常に意識し続ける必要は無さそうだ。

 そして、魔力体と言えるこの体には、包み込んでいるの生命維持を基幹術式に組み込まれているおり、さらにはそれが最優先事項として充てられている。


『人の身体の生命維持に必要な物はまずは水か……川は目の前にあるな』


 急いで右手を伸ばして川の水を採取する。

 ふと生水は人間の身体には害がある事を知識から警告を受け、その理由を考えながら水の成分を視ると、とても普通の目では見えないような小さな生物がうじゃうじゃと居る事に気が付き、また単純に毒になる成分が有るかもしれないとも。

 純粋な水成分だけを抽出してそれ以外を指先から吐き捨てる。


『よし!これを……いや?いきなり水だけは不味い?……ような気がするな……』


 そんな知識が自然に警告する。

 基幹術式に組み込まれているのだろうか?こんな中途半端に突然思い出すようにしか知識を利用で来ないのは少し困る。

 意識して事前に知識を引っ張り出せれば良いのだけれど……。

 とは言え今は悩んでる暇は無さそうだ。


『何が足りない?何が危険と思った?』


 自身が包み込んでる身体から剥離や排出されて、俺の魔力体の中に漂う物を視ると身体の構成物質に近い物やそれらの老廃物と思われる物などが見て取れた。


『濃度?』


 何となくそうだと判断して血液内のこれらの濃度が極端に薄くなる事が無い方法を考える。


『ならばこの分離され漂う物質から明らかな老廃物を除いた物を水に加えて……、直接血管に注入する?いや、それが安全なのか……わからない。口から飲ませるべきだろうか?』


 悩んだ末に血管では無く口へ運ぶ。


「うぐっん、うぐっん」


 喉をならして飲み込んでくれた。

 まぁ結構無理やりに押し込んだのだが……。

 暫くして少しだけ血色はよくなったような気がする……気のせいかもしれないが、それでも何となく安心できた。


『次はどうする……その他に身体を構成する不足分の摂取が必要だけど、流石にこれは……』


 先ほど水の濃度調整時に排除した老廃物を見る。

 確かに不足物質を含んではいるが、かなりの部分で変質しているのでこのまま取り込ませるわけにはいかないだろう。


『ならば』


 再び魔力体を伸ばし周囲の状況を探り、届く範囲の植物を手当たり次第取り込み魔力体内で分解し、構成している物質毎に分ける。


『これも考え無しに与えたらだめだろうな……』


 一瞬だけ思考を巡らせ基幹術式にも問い合わせてみるが、今度はこれと言った反応は無かった。

 なんだよこの基幹術式はこちらからのアプローチには反応しないのかよ……


『……簡単に考えて取り込ませるのは毒に成り得る物質が怖いからで……仕方ない、あまりやりたくない方法だが今はコレしか無いだろう』


 魔力体と身体との接続面である修復中の部位から小さいかけらを抜き取り、先ほど採取して分離した物質それぞれを接触させて反応を見る事にした。

 ただ、今はその修復を停止中だし、かけらとは言え可能な限り小さなかけらで反応をみて、無駄にする事が無いように慎重に試す。

 そうして、悪い反応が無い物だけを口内に運んだ。



 口に水や植物から得た物質を送り込み続けて1週間程経過した、一応は一時期より確実に血色は良くなり肌にツヤも戻って来た。


とは言えまだまだ油断はできない……。


 この一週間摂取させた続けた物質の何が何処にどのように作用してるのかを慎重に観察し続けた結果、どのように使われるのか分かってきた。

 とりあえず、今足りないのは筋肉等の素材になる物質なようで、少しは木の実などから摂取できてはいるがとても足りない。

 今は止めている損傷個所の修復再開には絶対に欠かせない物質だ。

 何せ水分以外で身体を構成する上でほとんどを占めているのだから、その材料がなければ修復を再開できない。

 改めて魔力体を伸ばし周囲を探っていくと、小さな生物が至る所に居る事に気が付きそれらも植物と一緒に回収し魔力体内で分解する事で、木の実で取得できていた物質より身体に近い物を手に入れる事が出来た。


『とは言え、これは数が多くても小さすぎる……ここら一帯のを集めても十分な量は確保できそうに無い……』


 それに、もう一つ重要な懸念があった。

 血液の濃度が薄まってるのだ。

 正確には身体から分離した物から取得していた一部の物質が、老廃物を除去する過程で少なく成ってきているからだ


 どうした物かと溜息をこぼした時、地面すれすれの繁みの奥に腕一本分位の大きさのネズミに似た生物居る事に気が付いた。

 生物!なら血も通ってるし筋肉組織などの必要な物を持っている筈だ!

 俺は魔力体を一旦ゆっくりと伸ばしてその生物の周囲を取り囲むように配置。

 この生物が捕まえられる範囲まで入って来るように、祈りながら微動だにしないで集中する。


『……』


「……」


 そいつはヒクヒクと鼻を鳴らしながら暫く動かずにこちら側を見ている。

 緊張した静かな時間が流れる。

 相手はこちらの存在には気が付いて居ないだろうが、何かに慎重になっているのかもしれない。

 もしこちらの存在に気が付かれたら逃げ出すだろう。

 

 ほんの数十秒の事だが緊張のせいで長い時間に感じた。

 つい一瞬だけ気が抜けそうになった時、そいつは動いた。

 数歩跳ねるようにこちらへ近づいてきた。


 ここなら届く!


 そう思った瞬間に魔力体を細長く糸のように伸ばし、一瞬で巻き取って捕まえる事に成功した。


『やった!捕まえたぞ!』


 喜び勇んでその小動物を引っ張り上げた。

 油断していた。

 想像もしていなかったのだ……自分以外にも同じ獲物を狙ってる奴が居るかも知れないと……自己嫌悪だ。


 ガサガサガサ!!


 繁みの奥から2メートルほどの影が踊り出し、俺が捕まえている小動物に向かって大きな口を開けて飛び掛かってきたのだ。


『ちょ!おまえ!そいつは俺の獲物だ!』


 勿論音に出して叫んでるわけでも、言葉が通じるなんて思った分けでも無いが俺は悪態をつきながら、噛みつかれて引っ張って持ち去ろうとするそいつから奪われまいと、同じように魔力体で引っ張る。

 互いに獲物を渡さないと言う必死に引き合う。


『ざけんじゃないぞ!俺が先に捕まえたんだ!渡すものか!』

「グルルルルゥ」


 相手の唸り声が周囲に響く中、お互いに一歩も引かぬ意地の張り合いの中、ふと気が付いた……


あ、こいつごと捕まえればいいやん。


 結論から言おう、こいつも俺の獲物に成った。

 別で伸ばした魔力体の糸(さっきよりは太い)で、横取り野郎の身体を巻き取り太い木の枝から吊るすように引き上げる。


「フギャァァァガルルルルゥ!!」


 意識が引っ張り合いに向いてた為か、別方向からの襲撃に反応出来ずに案外簡単に吊り上げられた。

 先ほどの唸り声とは違う焦りの色の入った鳴き声を上げる横取り野郎の首を細く尖らせた魔力体で突き刺す。


トシュ!


 刺した魔力体を引き抜いた瞬間、刺し傷の穴から鮮血が噴き出した。


『あ、やべ!もったいね!』


 慌てて、また別の魔力体で飛び散る鮮血を残さず受け取るように包み上げた。


『大事な血を無駄にする所だった!』


「ウガァァ…ァ……」


 やがて横取り野郎の声は小さくなり、完全に聞こえなくなった所で伸ばした吊り上げた魔力体毎引き戻し、端から分解して取り込んでいく……


 これ、全部分解して取り込むのは一苦労だな……


 四分の一程を分解したところで一旦分解は止めて、血液だけは先にと魔力体を獲物の奥へ突き刺して血管からすべてを吸い出した。

 残った未分解の部分は川に沈めて置けば少しならもつだろう。



――――――――――

猫電話キャットテルです!

2話目もご覧いただき有りがとうございます!


まだまだ本番とは言えませんが次回も宜しくお願い致します。

本当は土日だけの公開予定ですが、書き直しも有ったので明日と明後日も公開致します!


又、宜しければフォロー頂けると幸いです!


◇次回 生きる魔法

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る