第7話 採取とお食事

 数日後。

 レスティが少しずつでも動けるようになった為に魔力の糸で探索できる範囲が増えた。

そのおかげでまた採取可能になった植物類を採取していく。

 その中で不思議な効果を持つ植物を見つけ、その植物は分解せずにそのままの姿で魔力体のなかで保管していく事にした。

 まぁ無限に持てるわけでも無いのでそんなに多く保管しておけるわけじゃないけど。


『この草の事はわかる?』


 俺の問にレスティは頷いて答える。

 前も言った通り、すべての記憶を見たわけじゃないが、俺が知らない物でもレスティが思い出せてる可能性は全然有る。


『たしか、薬士などが回復の薬を作る為に買い取って下さってたと思います。ただ私は採取したり売りに行ったりした事が無い……と思いますので確かな事は言えないです。』


 そこまで答えて、レスティは悲しそうなかおをして俯く。


『すみません、まだ記憶があやふやで正しいのかも……』


 俺は内心苦笑いを浮かべてレスティを励ます。


『この状況では仕方ないさ。大丈夫、ゆっくり思い出して行こう。俺も協力する。』


 さて、街に行った時になにをするにも貨幣は必要だろうが手持ちに無い。

 良く有る話しで街に入る為に税金として幾らか払わない駄目な場合も有るだろう。

 では、手持ちに無ければ何か売るしか無いわけだが売る物も無いと来ている。

 なら売れそうな物は無いかと、採取した植物を色々調べてる所だ。

 その中に回復効果の即効性がある植物が有ったので、売れないかレスティに確認してもらっていた所だ。

 回復効果をどうやって調べたりかって?……例によってレスティの細胞を使いました。


 キュルルルル。

 不意にお腹が鳴いて顔を真っ赤にしてレスティが顔を隠した。

 内蔵関係は、今後の事を考えても真っ先に治したので正常に機能してくれてる様で安心した。


『ご、ごめんなさい』


 顔を隠したままそう言うレスティに笑いそうになるが、そこはなんとか堪えて言う。


『そろそろ日も落ちる時間だし、採取はここまでにして食事にしようか』


 少し前なら、味気も無い栄養の塊を飲んて貰うだけでとても辛そうだったが、あれから魔法が使えるように練習したお陰て火が使えるようになり、劇的に食事事情は良くなった。

 例えば、野ネズミの肉を、とある方法で採取した塩を振りかけて焼いた物だったり、川で取れた魚に採取した植物からレスティが好んだ風味のする植物と煮込んだりと色々だ。

 ああ、そうだ野ネズミとは最初に捕まえようとした小動物はコレだったらしい。

 俺にはネズミと言うには毛がふさふさし過ぎてるネズミとは思わなかったが、レスティが覚えてた?思い出した?ので名前が分かったんだけど……野ネズミってどうなんだろう?レスティが言うには、普通に食卓に上がる動物らしくて特に拒否感は無いらしい。


 『今日は何が食べたい?』


 まぁ実際の所、野ネズミか魚を塩か植物で煮るか焼く位しかメニューは無いが、一応こうやって希望を聞く様にしてる。

 少しでも生活に色をつけてやりたいと思っての事だけど、レスティの反応は予想以上に良かったので続けてる。


『……焼いた塩味のお肉が食べたいです』


 今日は相当お腹が空いて居るのだろう。

 顔を真っ赤にしながらお肉をご所望との事なので、いつもよりちょっと手の込んだお肉に仕上げてやるとしよう。


『よし、わかった直ぐに作ってやるよ』


 昨日、少し遠めに移動した際に捕まえた野ネズミを魔力体の中で内蔵を取り除き、血を吸い出してから食べやすい大きさに切り分ける。

 削った木の枝に切り分けたお肉を刺していき、4本ほどそれを作ったら塩をまぶし、今日は香草として貯めていた匂いのよい乾燥草も多めにまぶす。

 追加で香ばしい匂いが強い小さな植物の種も砕いて、これもまぶしていく。

 この種は肉の臭みを上手く消してくれるので今後は重宝すると思うので見つけたら迷わず採取しておこう。


 後は、俺が発動準備させた発火の魔法をレスティに発動させて集めた焚き木に火をつけて、その火で炙って完成だ。


『おいしそう……』


 焼けて脂が滴り焚き木の火の中に落ちた焼けた香ばしい匂いと、香草の匂いとが混ざって、良い匂いが周囲に充満……しない。

 こんな匂いが周囲に広まったらどんな危険な動物や魔物がやってくるか分かった物では無いので、俺の魔力体を薄く伸ばして周囲を囲み匂い成分のみ吸収して広まらないようにしている。

 でも、その膜の中にいるレスティにはしっかりと届いているので焼けるお肉を視る目がギラギラとしている。

 涎もそのうち垂らすかもしれないので、早々に焼けた分を食べて頂こう。


『ほら、こいつは焼けてるぞ』


 そう言ってレスティの左手に串を渡す。


『ん!おいしいです!』


 レスティは利き手で無い左手で不器用に掴むと、苦労しながら口に運び満面の笑みで咀嚼する。


 因みに右手はまだレスティの集中が途切れたら動かなくなったり、ひどい時には持ってる物が透過して落としてしまう。魔力の義肢は実体が無いから物に触れるには、独特の集中が必要になる為だ。

 元々は俺が実体化させて操作をレスティに任せる事で、本物の手足のように使えるようにしていたが、今後の事を考えて今は右手の実態物に触る制御もレスティに任せている。

 右足は急に維持できない事が有ると危ないので先に右手で慣れるように練習中だ。

 因みにレスティでは実体化は出来ていない。

 今触れてるのは瞬間的に反発魔法をアレンジしてかけているだけだ。

 反発魔法とは、魔法で発動した炎や氷等を弾き出して攻撃魔法とする基本的な魔法の事。

 基本的にと言っても難易度はかなり高い、なにせ普通はただ飛ばす事を目的としてる為、制御する事言えば威力と方向位で、掴む為に使うなんて余り使われない。筈だがレスティはもうだいぶん上手くできるようになって来てる。

 発想から考えて、レスティはそう言う使い方もした事が有ったのかも知れない。


『グラン!すごく美味しかったです!』


 4本全部の串を平らげたレスティが笑顔でそう言ってくれるだけで満足だ。

 燃え切った灰の後始末などを進めているとレスティの目が今にも閉じそうになっている事に気が付いた。


『それじゃ、もう日もだいぶん落ちたし今日は休もうか?』

『ん……』


 もう完全に俺に身体を任せてしまってるので俺が木の洞につれて行き静かに座らせる。


『……そりゃ疲れてるよな』


 本当にレスティは凄いな……こんな状況なのに全然弱音を吐か無い。

 普通ならパニックになったり気力を失ったりしてしまっても不思議じゃない。


『……今の内に少し試して置くか……』


 そう言って俺は眠ったレスティを起さないように注意しながら、こっそり集めた色の濃い植物の葉や実等を分解して可能な限り粒子にする。

 俺の魔力体の外側にそれを薄く伸ばし、その状態を維持しながらそれを覗き込むように別の魔力体を伸ばしてそこに目の疑似組織を生成してそれを観察する。


『うーん……暗くて見えないな』


 本当に見えないわけでは無いが、目的の確認には光の元でどう見えるかだからだ。


『少しなら……』


 レスティの右目の機能を一部制限して左目は厚めに魔力体で覆い、光の魔法の術式を構築する。


『あ、だめだこれ……俺じゃやっぱり発動出来んわ』


 今使えてる魔法は、俺が術式を構築しレスティが発動して初めて発現している。

 俺だけ何度か発動まで試したがなぜか発動しなかった。

 おそらく魔法構築に使用している魔力がレスティの体内で生成された魔力を使用しているせいだろう。

 俺の魔力で構築すれば発動させる事は出来ると思う。

 だが、俺の魔法は回復しない。動かす分には問題無いが光や火それに水等の別の物に変換してしまうと消失してしまう事は分かっている。

 レスティの身体の再生以外には使用したくない……。


 まぁ、レスティに隠す必要も無いから昼間やっても良いんだけど……上手く行くか分からないから変な期待をさせたくないんだよな……

 もう少し考えてみるか。


――――――――――

こんばんわ猫電話キャットテルです。

文章なんて本当にここ十数年書いて無かったので、リハビリ中です。


若い頃の様に瞬発力の有る文章を書けたら良いのですが(⁠´⁠;⁠ω⁠;⁠`⁠)


精進致します!


◇次回 遭遇

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