第5話 怖い記憶1

 レスティの状態を説明して、互いの自己紹介を終えた俺たちは今後どうやって行くかを話し合う事にした。


『まずは食料ですね!水は目の前に川が有りますね。あ、でも生水って危ないんでしたっけ?』


『そこは安心して。俺がちゃんと安全な水にろ過するし。食べ物についても同じだ。危険な毒性はすべて排除するよ』


『本当ですか!ありがとうございます!、それじゃぁ先ずは何か無いか探しに行きますね!』


 そう言ってレスティはすくっと立ち上ったが、その勢いのまま右側に倒れ込む。


 全身包んでる俺と言う名の魔力で大丈夫だったんだが、それでも一瞬ヒヤッとしてしまう。


『あ、ありがとう御座います。』


 特に怪我は無さそうで良かった。


『大丈夫か?さっき見た通りの身体なんだから気をつけて。それにレスティが目を覚ます迄に既に何日も経ってて左半身もかなり鈍ってると思う。力が入り難くなってるかもしれないから出来るだけ急に動こうとしないでね。』


『何日もって……ずっと私は意識無かったんですね……グランさん、守ってくれて本当にありがとうございます。』


 うるうるとして感激してくれてるのが、少し恥ずかしくなって、誤魔化す様にそれよりもと、話しを続ける。


『そんなに畏まらないで、名前も呼び捨てで良いよ。レスティが付けてくれた名前なんだし、俺もレスティって言うからさ?、とは言え自分の意思で動けた方が良いだろうから右半身も操作できるようにするね』


『本当にですか?私も自分で動けたら助かります!ぜひ宜しくお願いします』


『よし!それでじゃ右半身とレスティを魔力回路で繋ぐよ』


 そう言って俺は右半身の魔力をレスティの思考補助をしている魔力部分を経由して繋ぐ。


『これで、取り敢えずは動けると思うけど……慣れる迄は無茶しないで頑張って!』


『は、はい!』


 出来上がった魔力の右手足が自分の意志で動かせる事を確認して、左手で右半身に物質的に触れるようになった事に感激しながらすっと立ち上がった。


『た、立てました!あっ!』


 それでもやっぱりバランスを崩して倒れそうになる。

 俺は別に魔力の手を伸ばして、近くの幹を掴んで身体を支える。


『焦らないでゆっくりと魔力義肢の操作に慣れっていこう!慣たら自分の手足のようにちゃんと使えるようになるよ』


『ご、ごめんなさい、でもすごいです!。良かったぁ、手足が戻って来たみたいです!』


『うん、それなら良かったよ』


 今度こそ転倒しないようにゆっくりと立ち上がる。

 そして、魔力の手足に目を落としながら、上げたり下ろしたりと色々なポーズを嬉しそうに取る。


『本当にすごいですね、こんな不思議な事が出来るなんて私うれしぃ………ひゃ!!!!』


 目線が生来のままの左半身へ移った瞬間、自分の恰好に気が付いて身体を隠すようにしゃがみ込んだ。


『わ、私っ裸?!』


『あ!そうだった!着てた服はボロボロで身体の引っ掛かりも無いから、どうしても脱げてしまうんで、洗って足元に敷いて置いてるよ。』


『引っ掛かりって……』


 ギュッと自分の胸を強く抱くレスティ。


『ち、違う!右半身ね!右肩とかが無くて落ちちゃってたって意味!今なら物質化させたから右肩にも掛かるからね!』


 使える様になったばかりの右手と、生身の左手の両手で肩を抱くような恰好で、しゃがみ込んだままぷるぷると震えるレスティをみて焦ってさらに言葉を続ける。


『ご、ごめん、大丈夫?元気だして?、えっとレスティ?』


『うぅぅぅ…ごめんなさい、もう大丈夫です。でも恥ずかしいのは本当ですよ?』


 そう言いながら恨みがましい表情を浮かべて、直ぐにクスクスと笑って左目の涙をぬぐう仕草をしながら顔を上げる。


『あ、ああ』


 ころころと変わる表情にドキマギしてしまう自分に、戸惑いながらレスティの様子を伺う。


『これ、ボロボロですね……、着れなくも無いですけど……ちょっと完全に隠せなさそうですね』


 足元から持ち出したボロボロの服を、なんとかごそごそしながら着て魔力で出来たの右肩にも袖を掛ける。

 しかし、ボロボロで色んな所が隠れていない。


『その下に別のカーテンのような布も有るからそれを使って上手く隠せないかな?』


『うーん、そうですね……』


 そういって、フリルとかいろいろ上手く使って結んで行く。


『なんとかなりそうです。……どうでしょうか?』


 カーテンも使って色々な所を器用に結んで出来上がった服を着た姿でくるりと一回りする。

 服がどうとかと言う前に魔力の手足にすごく慣れるのが早いなぁってのが俺の感想なんだが。


『うん、いいと思うよ』


『そう?良かったです!』


 少しはにかんだ笑顔を浮かべるレスティには悪いけど、実は俺が解けないけない様に抑掴んでるんだけどね。

 暫くは、まぁ……俺が押さえてたら大丈夫と思う。


『それにしても……』


 スカートのフリル部分を掴んで不思議そうにしながら続ける。


『この服は、もともと私のが着ていた物なんですよね?』


『そうだけど、どうしたの?』


『なんていうか、ボロボロだけど結構フリルとかいっぱいあしらってあって、高級そうな服だなぁって』


 そう言って全身を見る様な仕草をする。


『確かに安い布地では無さそうだね』


『私って、どんな立場のだったんだろう……』


うーんと、俺に聞くわけでも無く1人ごちる。


『っていうか、レスティは本当に何も覚えてないの?何か思い出せる事は無い?』


 俺の言葉に左手の人差し指をアゴにあてて考える仕草をする。が、どうにも思い出せる事が無いようで、諦めて苦笑いを浮かべる。


『そうか……魔法の事も思い出せない?』


 その俺の質問に、えっ?って言う感じの不思議そうな表情を浮かべて顔を傾げる。


『いや、だってほら、襲ってきてた奴らから隠れる為に洞を偽装して中に居る俺らごと、洞を隠した魔法使ってたでしょ?』


『??』


 本当に何も心当たりが無いらしい。

 ってか、あれ?この記憶って何?……ああ、まだ自分の認識が曖昧ではっきりしなかった時の事か。

 で、あれってレスティが使った魔法だよね?、え?もしかして俺?


 いや違う!絶対にレスティが使ってた!俺はまだこの生命維持の魔法に馴染んでいなかった!そうだまだ俺はこの魔法の基幹術式にも触れられて居なかった!ってあれ?どういうこと??

 二人して呆けた顔で頭に?を浮かべて見つめあってしまった。


『まぁ、呆けてても仕方ないし多分レスティは魔法を使えるよ。こんな事言うのはアレだけど、きっと魔法の知識はちゃんと残ってると思うし、もしかしたら他の記憶も思い出せないだけで結構残ってるかもしれない』


 思わず口にした事を後悔したのはレスティの顔に若干の陰りが浮かんだから。


『ご、ごめん。嫌な事思い出させたね……』


『ううん大丈夫、少しだけだから。それに避けられない話だと、私も思うし……』


 俺は一つの提案をする。

 場合によっては残酷な提案だとは思ったけど、身体を治し人間社会に戻って行くには必要な事だ。


『一つ……提案なんだけど、俺にレスティの記憶を探らせて欲しい、もしかしたら色々大事な事を思い出せるかもしれないし』


 この提案は最初、人に頭の中を覗かれるのは流石に嫌だろうと避けていた。

 ただ、今思い出させる事は思い出した方が良いだろう。

 特に魔法が使えるなら絶対その方が色々出来る事も広がる。

 俺に覗かれる言うのは不快だろうけど……そんな提案をした。


『思い……出せるのかな……私自身の事』


 そうだよね、レスティにとっては魔法の知識なんかよりもそっちの方が大事な事だよね。


『分からない、でも思い出せるかも知れない』


 俺は卑怯だ、思い出したく無い事も思い出す事になるとは言えなかった。

 でも、それはレスティも分かっている事だとは思う。


『うん!お願い!私できるだけ色々思い出したい!』


 レスティは力強く頷いて大きく返事をしてくれた。


――――――――――

こんばんわ!

猫電話キャットテルです!


正直、PVが全然増えなくて寂しいです。

まぁいっぱい有る数多の名作の中で読んで頂けるのは難しいとは最初からわかってましたので、落ち込みはして無いですが、皆さんどうやって目に付くようにしてるんでしょうね。


あ、それでも既に読んで頂ける皆さんには本当に感謝です!

コレ書いてる段階では1話目しか誰にも読んで頂けてない事実が……


さて物語は記憶に触れて行きますが、まだまだ大きく動き出すのは先になりそうです!


◇次回 怖い記憶2

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