第4話 自己紹介
『え~と、そのなんだ、驚かずに聞いて欲しい』
本物の手も頭も、もし俺にあれば頭を掻きながら
一応は聞く体制で静かに耳を傾けてくれていて少しほっとした。
『君が今居る場所は、大きな木の洞の中なのは何となくわかるよね?』
彼女はゆっくりの頷いてくれている。
『だから、もちろん後ろに俺が居る分けでは無いよ』
びっくりした感じに顔を上げて周囲に目線を動かすがあまり頭が動かせず不安そうな表情になってしまった。
『別に後ろに隠れてるわけじゃないんだ、それと今どうやって会話してる?』
そう言われて目を丸くして左手で口元を抑える。
『うん、さっき教えて実践してもらったんだけど、心の中で俺に伝えたいって思ってくれれば聞こえてるし、俺も同じ方法で伝えてるよ』
「……、…………」
彼女は直接口を動かして直接喋ろうとして、喋れない事の原因が肺に空気を取り込めて無い事に気が付いて焦って空気を吸い込もうと口をぱくぱくとさせる。
『っ!大丈夫落ち着いて!呼吸はできてるよ!さっきまで苦しくもなかったでしょ?ゆっくり深呼吸して!はい!すー、はー、すー、はー』
『すー、はー、すー、はー……、ほんとう、苦しくない』
いや、すーはーって言わなくて良いんだけど……まぁいいや。
『とりあえず落ち着いてくれたね。ちゃんと俺には声は伝わってるよ。それでちゃんと説明すると今君は俺が包み込む事でい――』『神様なんですね!』
凄い勢いで食い込み気味にとんでもない言葉が飛び出して来た。
『あれですよね!直接心に話しかけてくださってるって!』
そうだけどう、なんでそうなる!
『え、えーっとね!君の命を守る為に繋がってるから、直接声出さなくて喋れるだけで!』
『やっぱり!私を助けて下さる為に私に繋がって下さってるんですね!』
さらに食い気味にとんでもない方向に結論を出された!
『いやいや、そうだけどそうじゃない!』
情緒不安定な反応に引き気味になる。
魔力補助の馴染み方が上手く行ってないのかもしれない。
それで感情が変に感情が安定しきれてないようだ。
『はい!大丈夫です!理解しています!』
うん、してない!
とは言え神様とか思ってしまってる今なら現状を信じて貰いやすいかな?
『う、うん、ともあれ君の身体の事……そっちを説明しようと思うけど良いかな?』
『え?はい!宜しくお願いします!』
『ええと、君の身体の事だけど今は俺の補助で命を繋いでる状態なんだ。』
『そうなんですか?ありがとうございます!流石神様です!』
素直なお礼に戸惑うが嬉しくなるが、神様じゃございません。
でも……今から言う事は彼女を地獄に落とすような内容だ。
『いや、神様じゃないから……と、ともかく現状は俺の補助が無ければダメなんだけど、その理由ってのは……右半身ほぼすべてを俺が肩代わりしているからなんだ。』
『………へ?』
彼女は右側に視線をやる。
そして暫く黒い靄でしかない右半身を凝視した後、左側に視線を移し、左手をニギニギさせてそれを見ている。
最初は右手でそれをやろうとして出来ずに、左手でも確認をしたようだ。
それで右手が無い事を理解してしまった。
そしてその左手で右顔を触ろうとして黒い靄、魔力体を透過して手が空を彷徨う。
『……ない……。』
先ほどの元気は何処に行ったのか、右顔のあるべき空間でいつまでも左手を彷徨わせながら、そう呟くのが精一杯と言う表情で左目に涙を浮かべた。
『だ、大丈夫!安心してくれ、必ず俺が元通りの身体にしてやるから!』
俺は彼女の左肩を優しく叩く様な刺激を与えつつ、泣き止むのを待った。
やがて泣き止んた彼女は、決意を決めて顔を上げた。
『それは、右半身全て元の通りに治して頂けるのと言う事ですか?』
左だけの目で、そこに俺が居るかの様に正面を見つめながら、これ迄に無い真剣な顔で言う。
『ああ、もちろだ。必ず元通りにしてやる!』
嘘では無い。
時間はかかるだろう、事実今も治癒を続けており少しづつ再生している。
この魔力体がある限りはだけど……。
『わかりました、信じます!』
そう言って自ら左手で涙を拭った。
『もう泣きません!ですからこれから私がその為にやるべき事が有れば教えて頂けませんか?』
そう言うと彼女は、気丈に振舞おうと笑顔を浮かべる。
『うん、では改めて』
俺は自分自身の心も落ち着かせるように静かにこれからの事を話し出す。
『当たり前だけど、身体を治すためには十分な栄養を取って必要な場所へ送り届ける事が大事なのはわかるかい?』
『……なんとなく?』
不思議そうに少し首をかしげてから、少し考えてから頷く。
『うーん、あんまりピンと来てない感じだね。』
俺は少し考えたが、いまいち良い例を思いつかなくて困ってしまっていると、彼女の方が先に言う。
『いえ、何となくですが分かる気はしています。例えばお腹すいても食べ物が無ければ、痩せて細ってしまいますし、逆に贅沢に食べ続ける人は太ってしまいます。それと一緒ですよね?。でも、例えば手を失ったりした人がしっかり食事を取れたからといって、失った手が元に戻る事は無いと思います。なので少しだけその差が分からないのです。』
聡明な子だな。
『おお、うん十分理解してるね!良い例だ!、でだけど大雑把に説明すると普通の場合、失った部位がどうして元に戻らないかと言うと、それはとても大きい範囲だったり、複雑な器官だったりするからだ』
本当はもっと難しい話なんだけど、そこまで話す必要は無いだろう。
ってか俺がそこまでは知らない。
なんとなく基幹術式がそう言ってる……気がする。
『そうなんですね、大きな欠損や複雑な器官・・・目とかですか?』
『そうそう、まぁ大きな欠損でなくても傷痕みたいになったりする場合もあるけど、まぁそれは置いておいて実は傷の回復には、周囲の身体の組織が分裂して修復して行くんだが、どうしても再生できるのは同じ性質の部分だけなんだ。目を失ったまわりには目が無いだろう?だから目は再生しないんだ。』
うん、自分で言ってて無茶苦茶適当だわ!
でもまぁ俺もよくわからんし!
それにそんな詳細は今はどうでもいい。
『えーと、それだと何故腕とか再生しないのですか?骨とかありますよね??』
『うん!そうだね!大きい欠損がそのパターンだね。』
一呼吸おいて続ける。
『まぁ重要なのは、そんな風に通常再生しない組織も栄養さえ取れれば、俺が必ず元に戻もどしてあげるし、それ迄は俺が左半身になって支えるよ』
『え?は、はい!』
『なので、先ずは現実を全部受け止める事と、覚えてる範囲の記憶を整理して、この後どう生きて行くか決める必要が有る』
『それはどういう事ですか?』
『こういう事だよ』
俺は彼女を魔力体で支えながら立ち上がる。
そしてゆっくりと木の洞から出て、側の川面へ顔を晒す。
『!!!』
絶句るする彼女の声にならない驚きが伝わってくる。
『やはり、見ちゃうと厳しいか……』
驚愕の表情のまま左手で右顔を撫でるように触ろうとして触れずに、気持ち悪くなったのか、嘔吐いて辛そうな表情になる。
『……こ、これは……神様のからだ?』
彼女の目に入った自分の姿は、顔半分を失いその部分には黒い靄が掛り僅かに人のそれのような形をしており、よく見るとそこだけでは無く右半身はほぼ全て同じような状態だった。
『え、いや、だから神様じゃないよ!で、身体が如何に危険な状態なのはわかったよね。じゃぁ次は俺の事を説明するよ』
そう言って、包んでる魔力を波打たせて自分である事を強調する。
『これが俺で、実は俺は君が作った魔法なんだよ……』
俺の言葉に、彼女は意味が分からないといった表情で、左手でゆっくりと魔力で出来た右顔を撫でる。
『わたしが作った魔法……?』
『そう、君が命の危険が迫った時に身体の生命維持を行う為に自動で発動するように仕込んでいた魔法で、今見ている黒い靄がその魔法で作られた俺自身の体なんだよ。』
不思議そうに無言で川面に映る黒い靄を見つめてる。
『続けるよ。それでさっきも言ったけど身体は必ず元通りに戻す』
元通りか……本当にどこまで治せるのか……いや、必ず治して見せると俺自身に言い聞かせる。
『だから安心してほしい!現在の状態を知った上で、それでも元の身体に俺が必ず戻すって信じて欲しい』
こういの説明するのは本当に苦手だ。
『わかりました!それで、神様でないなら何って呼んだらいいですか?』
『ありがとう信じてくれて。それで……俺の名か……。う~ん特に名前なんてないからなぁ、好きに呼んだら良いよ』
『そうなんですか?では、そうですね……それならグランってどうですか?守護の神と言われてる神様に因んだ名前です』
『神様から離れて欲しいんだが……。まぁそれでいいよ。それで君の名前は?』
うーん、頭を捻って考えてるようだが、どうやら名前は思い出せないらしい。
『グランさんは、私が作った魔法なら覚えて頂けてないのですか?私の名前……』
『うーん、そういった知識は無いっぽいな。中途半端でごめん』
『す、すみません!大丈夫です!。そうですね、それなら私はレスティって名乗らせて頂きます!』
『良い名だね。それはどんな意味が有るだ?』
『えっと……ナイショです!』
ドキッとするような笑顔でそう言われては、それ以上は聞けなかった。
――――――――――
こんばんわ!
やっとメインの登場人物の名前が出ました!
副題を「君のな……」にしようと思いましたが流石にそれは止めておきました(;^_^A
まだまだ森の中でうろうろしますが、早めに人里へ行かせたいですね!
次回は通常通りに土曜日に公開致します。
◇次回 怖い記憶1
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