第3話 学院

「流石に年齢的に誤魔化しが効かないので厳しいですね」

その言葉で俺の要望は却下され、大人しく教員の立場として入ることになった。

(学校、通ってみたかったんだが…)

俺と言うか、俺の世代の三割くらいは学校や教育機関に通っていない。

それは、深淵城塞の出現時期が俺世代の3~4歳にもろ被りし、親が死んだり、ダンジョン攻略軍として徴兵されたりしたからだ。

だからまぁ、俺としては学校と言うものに通ってみたかったが、流石にダメだった。

ん?勉学壊滅的なんじゃって?

偏ってる自覚はあるが、攻略軍時代に年輩のおっさんに教えをこうてたから、物のやりくりは得意だ。

語学とかは体系的な教え方は無理だな。

理科は…危険物系ならある程度は……他は無理だ。

社会は戦術や武器ならいける。その他は無理。

「俺、教員出来るのか?」

「その為に私がいるのです」

隣に立っていたレーネが言う。

レイ曰く、「補佐としてレーネを着けます。貴方目線で戦力になる程度に鍛えて下さい」だと。

いなけりゃ鍛えろって?

(ハハ、無茶言うな)

ちなみに、学院の生徒に関しても見所があり本人の同意があれば個人的に鍛えて良いと言われいる。

「そんな物好き……そうそう居ないと思うがねェ」

いや、案外いるのかも知れない。

探索者になるための学校に通うような連中だ。

むしろ、ばっちこいな感じなのか?

「分からんなぁ…最近の若人わこうど

そんな事を言っていると、全校生徒の前で軽い自己紹介をしたレーネが此方に降りて来る。

「あまり目立つ事は避けて下さい」

すれ違い様に忠告したきた。

(へいへい)

入れ違うように、壇上へと登る。

マイクの前に立つと、生徒の顔を見た。

「案外、湿気た面してやんがな」

シーン…とでも擬音が着きそうなくらい、生徒、そして教師達も静まり返った。

レーネは…結構怒ってる様子だ。

「初めまして…俺は【剣帝】緋城刹那だ。恩赦の為にお前らにダンジョンで生きる術を教えに来た」

流石に、深淵城塞の事を漏らす訳にもいかんが、同時に俺がここに来ていることはどうやっても誤魔化せん。

それは、強さと言う意味でもあるが、何よりこの学校身辺調査能力がバカ高いらしい。

個人的にはそれ以外にも理由がある気もするが……まぁともかく、なら正面からいけと言う判断だ。

「受け持つのは体育と実技。後は実習だったか。これと言って何かお前らに言うこともないが……まぁそうだな。仮に、お前らがダンジョンに潜ったら…教師生徒含めて、九割九分九厘は死ぬ。生きたきゃ死ぬ気で踠け。死ぬ時は死ぬが、まぁ俺が授業をしてる時は死なねぇから」

敵意……と、怒気はレーネか。

大概は敵意か。

まずまず…こんくらいの反骨精神ないと、ダンジョンじゃあ直ぐに死ぬ。

「じゃあな若人諸君。授業で会えるのを楽しみにしている」


◆◆◆


「あんなこと言うから、人いないじゃないですか」

俺もさっき知った話なのだが、どうやらこの学院の授業は選択制……正確には、基礎以外は選択制らしく、俺は初っぱな嫌われたので見事に受講者0だった。

「まぁ……やっちまったもんはしゃあなしだ。だからその目で見るのは勘弁してくれ、レーネさんよ」

ジト目で俺を見る隣のレーネさんに手を合わせつつ、対策を考える。

「つってもなぁ…どうするよ?生徒いねぇし、やることなァ───あ」

そう言えば

「俺、お前の教育も頼まれてんだわ」

ポン、と手を打ち、レーネを見る。

「あぁ──良いですよ、りましょう。この学校、武道場があるらしいので」









緋城刹那の人生(ざっくりバージョン)

0歳……生誕。

3歳……深淵城塞出現、両親死亡。

4歳……ダンジョン攻略軍に拾われる。

5歳……ダンジョン攻略軍、後方支援部隊に配属、後の『白峰』メンバーと出会う。

8歳……ダンジョン攻略軍解散、姉やかつての部隊隊員と共に深淵城塞の攻略最前線に残留。

10歳……『白峰』結成。

15歳……【剣帝】として刻まれる。

16歳……【聖女】ルナアリア・ソレイユが『白峰』に加入。

17歳……【聖女】ルナアリア・ソレイユが『白峰』を脱退。

19歳……迷宮消失が発生した後【奈落獄】の独房へ収監される。

29歳……仮釈放後、学院教師になる。


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